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★キラキラ 蘖(ひこばえ)の章★

[アーちゃん■怒鳴りたい]


人気のない図書室で、人の気配のない奥の本棚……の更に奥。
書記は囁くほどの小声で、

<……話、せ……る>

どうやらこいつは話せないわけではないらしい。

<んじゃ、少しくらいは話そうぜ>

<……>

<……ごるぁ、返事くらいしろ>

ちょっと凄んでみましたよ。
果たして効果があったかはわかんねーけど、書記は二度頷いた。

<んじゃ、さっきの質問の続きねー、あんたハーフ? 外人? どっち?>

<……あ、祖母>

祖母があっちのお人ってことかな?
なるほど、孫にその血が色濃く出たってことだろね。

とりあえず、言葉を話すことができる書記に、俺はどんどんと質問をしてみた。
しかし、やつは黙り込むばかり、俺が促がしてもまともに返事が返ってこない。

<あのさぁ、あんたは人と話したいの? 話したくないの? それはっきりしてくんない?>

<……話すの、怖い>

<んじゃ、もっと話せとか言わなきゃいいじゃん。そう言われたら普通会話しようと思うっしょ? それとも、一人でペラペラ話せってか? 俺は芸人じゃねーっての!>

<……>

はぁぁぁ!? また黙るのかよ、ざけんなよ!
ゆっくりと、祖母のお国の言語を搾り出す、どう見ても外人の一応日本人。
なんか糞ムカツク野郎だな。
だいたい怖いってなんだよ、怖いって。

「怒鳴りてー」

<え……?>

静かにしなきゃならない図書室だと、ストレス溜まりそう。

「よし、どうでもいい、帰る」

本を片手に、書記なぞ無視して立ち上がった。

「Подожди(待って)」

慌てて視線を上げた書記は、情けない表情で俺を見ちゃいるが、そんなの知ったこっちゃねーよ。

「はぁ? ざけんなよ、怖がる相手を、ホイホイ宥めて話しろってか? てめぇ何様だっつーの」

はいはい、もうさようなら。
傷ついた顔をしてはいたが、俺はそのままカウンターに向かう。
正直、追いかけられたりしたら、困るよな、人目もあるし。
しかし、奴は追ってきたりはしてこなかったので、なんだかホッとしました。
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