★キラキラ 蘖(ひこばえ)の章★
[東峰■会長様]
わざとらしく、俺と佐藤の間に割って入った御船に、無性に腹が立つ。
あいつは俺を崇拝するあまり、つまらないことに拘るきらいがあるからな。
FCにも在籍しているから、佐藤に余計な手出しをしないか、少々心配だ。
ま、俺がこれ以上関わらなければそれでいいだろう。
そして、講堂を出た俺は、途中売店により、そのままあの裏山へと向かった。
手には猫缶。
俺は昨日の猫に餌をやりにいくだけなんだ。
ほぼ駆け足で裏山へと辿りついた俺の目が真先に捉えたもの、それは猫から離れた場所で、地面に直接座りこんでいる佐藤の背中。
やはり、ここに来ていたか。
餌を食べる猫に集中しているのか、俺にまったく気付かないようだ。
そして俺は、足音を立てないよう、背後からそのままゆっくりと近づいた。
「佐藤・・・」
鈍感なのか、ほぼ背中に張り付くようにして立つ俺にまったく気付かない佐藤に、とうとう焦れて声をかけた。
「わひゃ、会長・・・様・・・」
講堂で御船たちがそう呼んでいたからか、いつのまにか佐藤まで敬称をつけるようになってしまった。
これは慣習のようなものだからな。
他の生徒の手前もあるし、このまま敬称をつけて呼ばれるほうがいいだろう。
「佐藤・・・お前、俺の名前を忘れたんじゃねぇだろうな?」
おっと、なぜ俺はこんな質問をしてるんだ?
しかし、生徒会室で逢った日に、俺は「生徒会長、東峰雅人」としっかりと名乗っている。
よく考えたら、会長とは言われたが、一度も名を呼ばれてはいない。
だから、確認をとりたくなっただけだっ!
「は? あの、ちゃんと覚えておりますが・・・」
いきなり切り出され驚いたのだろう、少し目を見開き答えた。
そんな佐藤の横に、俺も腰を下ろす。
「本当に覚えてんのか?」
「はぁ、東峰雅人会長・・・様、ですよね」
佐藤の口から俺の名が出た瞬間、ドクッと心臓が脈打った。
健康には自信があるが、まさか、不整脈か・・・?
思わず、自分の胸に手を当ててみる。
「会長様、どうかしましたか?」
「いや、なにも・・・なんでいきなり様なんてつけてんだ?」
「先輩方がそう呼ばれていたので、僕もそうしたほうが良いかと」
さも当然とばかりに、返されてしまった。
確かにその通りだ、俺も皆の手前その方が良いと、ついさっき考えていたところじゃないか。
しかし、しかしだ、なんか納得いかねぇぞ。
だいたい、こいつと逢ってから、こんなことばかりじゃねぇか?
思考と行動がまったく噛み合っていない・・・ような気がする。
「会長様、ご気分でも悪いのですか?」
あまりにも俺の様子がおかしいのか、案じるように顔を覗きこませた佐藤。
ああ、まただ・・・また、心臓がおかしな動きをしている。
やはり、不整脈か?
「だい、じょうぶだ」
「なら、よろしいのですが・・・あ・・・」
いきなり立ち上がって、走り出してしまった。
見ると、あの子猫は既に消えていて、残されたのは食い散らかされた缶のみ。
佐藤はそれを満足気に見下ろすと、袋へと回収した。
「では、僕は戻ります」
その場で俺に向かって挨拶をし、くるりと背中を向け去っていってしまった。
「まったく、興味がねぇってことだな・・・・・・」
残された俺は座り込んだまま、肺にたまった空気を一気に吐き出した。
これは断じて溜息なんかじゃねぇ。
わざとらしく、俺と佐藤の間に割って入った御船に、無性に腹が立つ。
あいつは俺を崇拝するあまり、つまらないことに拘るきらいがあるからな。
FCにも在籍しているから、佐藤に余計な手出しをしないか、少々心配だ。
ま、俺がこれ以上関わらなければそれでいいだろう。
そして、講堂を出た俺は、途中売店により、そのままあの裏山へと向かった。
手には猫缶。
俺は昨日の猫に餌をやりにいくだけなんだ。
ほぼ駆け足で裏山へと辿りついた俺の目が真先に捉えたもの、それは猫から離れた場所で、地面に直接座りこんでいる佐藤の背中。
やはり、ここに来ていたか。
餌を食べる猫に集中しているのか、俺にまったく気付かないようだ。
そして俺は、足音を立てないよう、背後からそのままゆっくりと近づいた。
「佐藤・・・」
鈍感なのか、ほぼ背中に張り付くようにして立つ俺にまったく気付かない佐藤に、とうとう焦れて声をかけた。
「わひゃ、会長・・・様・・・」
講堂で御船たちがそう呼んでいたからか、いつのまにか佐藤まで敬称をつけるようになってしまった。
これは慣習のようなものだからな。
他の生徒の手前もあるし、このまま敬称をつけて呼ばれるほうがいいだろう。
「佐藤・・・お前、俺の名前を忘れたんじゃねぇだろうな?」
おっと、なぜ俺はこんな質問をしてるんだ?
しかし、生徒会室で逢った日に、俺は「生徒会長、東峰雅人」としっかりと名乗っている。
よく考えたら、会長とは言われたが、一度も名を呼ばれてはいない。
だから、確認をとりたくなっただけだっ!
「は? あの、ちゃんと覚えておりますが・・・」
いきなり切り出され驚いたのだろう、少し目を見開き答えた。
そんな佐藤の横に、俺も腰を下ろす。
「本当に覚えてんのか?」
「はぁ、東峰雅人会長・・・様、ですよね」
佐藤の口から俺の名が出た瞬間、ドクッと心臓が脈打った。
健康には自信があるが、まさか、不整脈か・・・?
思わず、自分の胸に手を当ててみる。
「会長様、どうかしましたか?」
「いや、なにも・・・なんでいきなり様なんてつけてんだ?」
「先輩方がそう呼ばれていたので、僕もそうしたほうが良いかと」
さも当然とばかりに、返されてしまった。
確かにその通りだ、俺も皆の手前その方が良いと、ついさっき考えていたところじゃないか。
しかし、しかしだ、なんか納得いかねぇぞ。
だいたい、こいつと逢ってから、こんなことばかりじゃねぇか?
思考と行動がまったく噛み合っていない・・・ような気がする。
「会長様、ご気分でも悪いのですか?」
あまりにも俺の様子がおかしいのか、案じるように顔を覗きこませた佐藤。
ああ、まただ・・・また、心臓がおかしな動きをしている。
やはり、不整脈か?
「だい、じょうぶだ」
「なら、よろしいのですが・・・あ・・・」
いきなり立ち上がって、走り出してしまった。
見ると、あの子猫は既に消えていて、残されたのは食い散らかされた缶のみ。
佐藤はそれを満足気に見下ろすと、袋へと回収した。
「では、僕は戻ります」
その場で俺に向かって挨拶をし、くるりと背中を向け去っていってしまった。
「まったく、興味がねぇってことだな・・・・・・」
残された俺は座り込んだまま、肺にたまった空気を一気に吐き出した。
これは断じて溜息なんかじゃねぇ。