★キラキラ 蘖(ひこばえ)の章★
[東峰■良い子]
小規模な行事のときに使用する、小講堂。
そこの演壇側に位置する出入口前で、俺と佐藤は落ち合った。
当然のことながら、本日の佐藤はあの着ぐるみではない。
その細い身体に見合うように作られた、俺の贈った真新しい制服だ。
その制服を身に纏う佐藤に、俺の――欲はかなり満たされた。
ん、待て若干おかしくないか? ――欲とはいったいなんのことだ・・・? 贈ったという表現も変じゃないか?
まぁいい、とにかくやっとまともな姿を拝見できて、俺は大変満足したのだ。
「ふわぁぁぁ、まるで劇場のようです・・・」
そして2人並んで中に入っての開口一番の佐藤のセリフ。
なかなか可愛いことを言うやつだ。
講堂内をきょろきょろと眺める瞳も、若干輝きが増してるようだ。
講堂内では明日壇上に上がる予定の者たちが待っていた。
俺たち役員や各委員は事前に打合せ済みだが、2年の代表や祝辞を述べるやつらは、これから説明をしなければならない。
「会長様っ!?」
俺が入ってきたのを目敏く見つけ、2年代表として挨拶をする御船大紀が近寄ってきた。
同時に他の奴らも、俺たちの周りに集まり始める。
「だいたいの流れは分かってると思うが」
「はい、会長様。去年とそう変わりないので、大丈夫です」
御船がそう言うと、全員プログラム片手に頷いた。
御船の家は東峰家との関わりが深く、こいつの父親は俺の親父の右腕として、その辣腕を振るってくれている。
昔から少女のような面立ちをしていたが、中等部に入って更に磨かれ、今では美少女と言っても過言ではない。
その愛らしい顔に少しの困惑が見え隠れしていた。
ま、当然だな、こんなことで、わざわざ俺が来るなんて思ってもみなかったのだろう。
本来なら、藤村か右京、もしくは別の委員に頼むレベルの用件だからな。
暫く御船たちに簡単な説明を行う。
そんな俺を見る彼らの表情は恍惚としていた。
自慢じゃないが、この学園でかなりの美形にランクされている俺は、そんな視線には慣れている。
しかし、彼らの様子が、少し変わってきた。
所在なげに、俺の隣りでジッとしている佐藤を訝しげに見ているのだ。
こいつらへの説明を終えたら、ゆっくりと段取りを教えようと思っていたが、紹介するのを忘れていた。
「すまない、佐藤の紹介を忘れていたな。こいつは新入生代表で挨拶をする佐藤晃だ」
佐藤の肩に手をあて、そう皆に紹介してやる。
「佐藤晃です。どうかよろしくお願いいたします」
ペこっと、その場で頭を下げ自己紹介をする佐藤に、御船たちもよろしくと声をかけていった。
「会長様、先に佐藤君に説明してあげてください。僕たちは後で構いませんので」
「え・・・あぁ、いや、先にお前らの説明を終わらす。まだ荷物の整理ができてない者もいるだろうしな」
御船の発言に、俺の心臓が一瞬大きく鼓動した。
そしてやけに動悸が早まった・・・気がする。
「皆、荷物の整理はできてるそうです。佐藤君はまだ1年ですし、上級生ばかりの中で待たせるのは可哀想ですよ」
御船の言うことは、正しい。
先輩ばかりの中でただ待たせるだけなど、佐藤にとってはあまり良い気分はしないだろう。
後輩を思うなら、御船の進言どおりにするべきだな。
「佐藤には、入場から説明していくから、かなり時間がかかる。慣れてるお前らを先に終わらすほうが、俺には楽だ」
「そ、うですか・・・では、先にお願いします」
だが、俺の口から出たのは、そんな進言など完全無視した、なんとも思いやりのない言葉。
やや納得いかない感の御船は、少々苦しい俺の言い分に、素直に従った。
「あの、もうだいたい分か、はぅっ」
記憶力の良い佐藤は、彼らに大まかな流れを説明してるうちに、自分の位置関係も覚えたのだろう。
だが、余計なことは言わせないよう、咄嗟に睨んでやった。
大人しくその口を噤んだ佐藤は、俺の隣りで身を縮こませるようにしている。
よしよし、そこで良い子にして待っていろ。
小規模な行事のときに使用する、小講堂。
そこの演壇側に位置する出入口前で、俺と佐藤は落ち合った。
当然のことながら、本日の佐藤はあの着ぐるみではない。
その細い身体に見合うように作られた、俺の贈った真新しい制服だ。
その制服を身に纏う佐藤に、俺の――欲はかなり満たされた。
ん、待て若干おかしくないか? ――欲とはいったいなんのことだ・・・? 贈ったという表現も変じゃないか?
まぁいい、とにかくやっとまともな姿を拝見できて、俺は大変満足したのだ。
「ふわぁぁぁ、まるで劇場のようです・・・」
そして2人並んで中に入っての開口一番の佐藤のセリフ。
なかなか可愛いことを言うやつだ。
講堂内をきょろきょろと眺める瞳も、若干輝きが増してるようだ。
講堂内では明日壇上に上がる予定の者たちが待っていた。
俺たち役員や各委員は事前に打合せ済みだが、2年の代表や祝辞を述べるやつらは、これから説明をしなければならない。
「会長様っ!?」
俺が入ってきたのを目敏く見つけ、2年代表として挨拶をする御船大紀が近寄ってきた。
同時に他の奴らも、俺たちの周りに集まり始める。
「だいたいの流れは分かってると思うが」
「はい、会長様。去年とそう変わりないので、大丈夫です」
御船がそう言うと、全員プログラム片手に頷いた。
御船の家は東峰家との関わりが深く、こいつの父親は俺の親父の右腕として、その辣腕を振るってくれている。
昔から少女のような面立ちをしていたが、中等部に入って更に磨かれ、今では美少女と言っても過言ではない。
その愛らしい顔に少しの困惑が見え隠れしていた。
ま、当然だな、こんなことで、わざわざ俺が来るなんて思ってもみなかったのだろう。
本来なら、藤村か右京、もしくは別の委員に頼むレベルの用件だからな。
暫く御船たちに簡単な説明を行う。
そんな俺を見る彼らの表情は恍惚としていた。
自慢じゃないが、この学園でかなりの美形にランクされている俺は、そんな視線には慣れている。
しかし、彼らの様子が、少し変わってきた。
所在なげに、俺の隣りでジッとしている佐藤を訝しげに見ているのだ。
こいつらへの説明を終えたら、ゆっくりと段取りを教えようと思っていたが、紹介するのを忘れていた。
「すまない、佐藤の紹介を忘れていたな。こいつは新入生代表で挨拶をする佐藤晃だ」
佐藤の肩に手をあて、そう皆に紹介してやる。
「佐藤晃です。どうかよろしくお願いいたします」
ペこっと、その場で頭を下げ自己紹介をする佐藤に、御船たちもよろしくと声をかけていった。
「会長様、先に佐藤君に説明してあげてください。僕たちは後で構いませんので」
「え・・・あぁ、いや、先にお前らの説明を終わらす。まだ荷物の整理ができてない者もいるだろうしな」
御船の発言に、俺の心臓が一瞬大きく鼓動した。
そしてやけに動悸が早まった・・・気がする。
「皆、荷物の整理はできてるそうです。佐藤君はまだ1年ですし、上級生ばかりの中で待たせるのは可哀想ですよ」
御船の言うことは、正しい。
先輩ばかりの中でただ待たせるだけなど、佐藤にとってはあまり良い気分はしないだろう。
後輩を思うなら、御船の進言どおりにするべきだな。
「佐藤には、入場から説明していくから、かなり時間がかかる。慣れてるお前らを先に終わらすほうが、俺には楽だ」
「そ、うですか・・・では、先にお願いします」
だが、俺の口から出たのは、そんな進言など完全無視した、なんとも思いやりのない言葉。
やや納得いかない感の御船は、少々苦しい俺の言い分に、素直に従った。
「あの、もうだいたい分か、はぅっ」
記憶力の良い佐藤は、彼らに大まかな流れを説明してるうちに、自分の位置関係も覚えたのだろう。
だが、余計なことは言わせないよう、咄嗟に睨んでやった。
大人しくその口を噤んだ佐藤は、俺の隣りで身を縮こませるようにしている。
よしよし、そこで良い子にして待っていろ。