★キラキラ 蘖(ひこばえ)の章★
[東峰■許せん]
『かいちょー、押し付けてごめんねー、明日には戻るしー』
「ああ、分かってる。戻ったらこき使ってやるから、楽しみにしていろ」
『うひゃ、こえー、んじゃ明日ねー』
「ああ」
藤村との電話を終えて、残りの仕事を片付ける。
あいつは軽いやつだが意外にも責任感があるらしく、一人で準備に追われる俺にわざわざ激励の電話を寄越してきた。
右京からも毎日様子を伺う電話があるし、一条からもメールで連絡が来ている。
俺と右京は1年の秋から、補佐という形で生徒会に関わっていたが、他2名とはそれほど接点はなかった。
この学園の風習で、所詮顔で選ばれる役員。
正直右京以外は期待してはいなかったんだが、初顔合わせで知った奴らに、なかなか聡いという印象を持った。
どうやら俺の生徒会は、それなりに使えそうな奴らが揃ったようだ・・・私生活は忙しそうだがな。
「ちっ、葛西もこっちに入れりゃ良かったか・・・」
会長席でPCを繰りながら、思わず出た独り言。
葛西裕輔、家同士が親しいということで、子供の頃から知っている同い年の男だ。
真面目で切れ者、たまに融通は利かないが、仕事が恐ろしくできる奴、そして俺に張り合うほどの男前。
ま、少し落ちるがな。
ランキングも堂々2位のその男は、生徒会へ入ると期待した俺を、「誰がお前の部下になんかなるか」の一言であっさり裏切り、我が生徒会と対極をなす風紀への道を選んだのだ。
結果、誰もが認める風紀委員長になりやがった。
「合ってるといえば、合ってるな・・・ぷっ、ははは」
イカンイカン、あの生真面目な男の趣味を思い出したら、思わず笑ってしまった。
「さて、と・・・葛西に会いにいくか」
出来上がった書類を手に、風紀室へ向かうとしよう。
「東峰、たった一人で準備とは、ご苦労なことだな」
「だったらお前が手伝えってんだ」
風紀室に入った途端に、葛西に声を掛けられた。
「何を言ってるんだ。風紀は風紀で忙しいんだぞ。明日には新2.3年生が続々入寮するんだからな」
入学式は明後日だが、新学期はその次の日だ。
2.3年のほとんどが入学式には列席しないので、下手すると新学期ギリギリに戻ってくる。
人が増えると忙しくなるのが風紀だからな。
もちろん入学式には風紀も関わる、忙しさだけで言えば、風紀のほうが大変だろう。
コーヒーでもどうかと葛西に誘われたがそれは遠慮し、書類だけを渡して俺は風紀室を後にした。
馴れ合ってるところを見せるのは、お互いの立場的に良くないからな。
生徒会室への戻りは少し遠回りをして、広い校庭が見渡せる渡り廊下を通ることにした。
まだ授業の始まっていない校内は静かで、春の陽気に暖められた窓辺で少し休憩をする。
ふと、何気なく下を覗き見た俺の目に・・・飛び込んできた着ぐるみ!
「あいつ・・・なんで校内に・・・」
なにやら袋を抱き締めるように持って、歩いてるのか早足なのか分からない速度で俺の眼下を横切るやつ。
いやいや、俺には全く関係ねぇこった。
春休みではあるが、退屈している者が校内を散歩するなどよくある話だしな。
ましてや新入生だから色々見学したいだろう・・・って俺っ! なぜ、階段を降りているっ!? そして、なぜ走っているっ!?
「・・・あんな格好でうろつくのは許せん」
誰が見ている訳でもないのに訳の分からない言い訳をして、俺は校庭へと飛び出していた。
『かいちょー、押し付けてごめんねー、明日には戻るしー』
「ああ、分かってる。戻ったらこき使ってやるから、楽しみにしていろ」
『うひゃ、こえー、んじゃ明日ねー』
「ああ」
藤村との電話を終えて、残りの仕事を片付ける。
あいつは軽いやつだが意外にも責任感があるらしく、一人で準備に追われる俺にわざわざ激励の電話を寄越してきた。
右京からも毎日様子を伺う電話があるし、一条からもメールで連絡が来ている。
俺と右京は1年の秋から、補佐という形で生徒会に関わっていたが、他2名とはそれほど接点はなかった。
この学園の風習で、所詮顔で選ばれる役員。
正直右京以外は期待してはいなかったんだが、初顔合わせで知った奴らに、なかなか聡いという印象を持った。
どうやら俺の生徒会は、それなりに使えそうな奴らが揃ったようだ・・・私生活は忙しそうだがな。
「ちっ、葛西もこっちに入れりゃ良かったか・・・」
会長席でPCを繰りながら、思わず出た独り言。
葛西裕輔、家同士が親しいということで、子供の頃から知っている同い年の男だ。
真面目で切れ者、たまに融通は利かないが、仕事が恐ろしくできる奴、そして俺に張り合うほどの男前。
ま、少し落ちるがな。
ランキングも堂々2位のその男は、生徒会へ入ると期待した俺を、「誰がお前の部下になんかなるか」の一言であっさり裏切り、我が生徒会と対極をなす風紀への道を選んだのだ。
結果、誰もが認める風紀委員長になりやがった。
「合ってるといえば、合ってるな・・・ぷっ、ははは」
イカンイカン、あの生真面目な男の趣味を思い出したら、思わず笑ってしまった。
「さて、と・・・葛西に会いにいくか」
出来上がった書類を手に、風紀室へ向かうとしよう。
「東峰、たった一人で準備とは、ご苦労なことだな」
「だったらお前が手伝えってんだ」
風紀室に入った途端に、葛西に声を掛けられた。
「何を言ってるんだ。風紀は風紀で忙しいんだぞ。明日には新2.3年生が続々入寮するんだからな」
入学式は明後日だが、新学期はその次の日だ。
2.3年のほとんどが入学式には列席しないので、下手すると新学期ギリギリに戻ってくる。
人が増えると忙しくなるのが風紀だからな。
もちろん入学式には風紀も関わる、忙しさだけで言えば、風紀のほうが大変だろう。
コーヒーでもどうかと葛西に誘われたがそれは遠慮し、書類だけを渡して俺は風紀室を後にした。
馴れ合ってるところを見せるのは、お互いの立場的に良くないからな。
生徒会室への戻りは少し遠回りをして、広い校庭が見渡せる渡り廊下を通ることにした。
まだ授業の始まっていない校内は静かで、春の陽気に暖められた窓辺で少し休憩をする。
ふと、何気なく下を覗き見た俺の目に・・・飛び込んできた着ぐるみ!
「あいつ・・・なんで校内に・・・」
なにやら袋を抱き締めるように持って、歩いてるのか早足なのか分からない速度で俺の眼下を横切るやつ。
いやいや、俺には全く関係ねぇこった。
春休みではあるが、退屈している者が校内を散歩するなどよくある話だしな。
ましてや新入生だから色々見学したいだろう・・・って俺っ! なぜ、階段を降りているっ!? そして、なぜ走っているっ!?
「・・・あんな格好でうろつくのは許せん」
誰が見ている訳でもないのに訳の分からない言い訳をして、俺は校庭へと飛び出していた。