アーちゃん■キャンパス日記-2015秋の特別編-
[アーちゃん■キャンパス日記-2015秋の特別編-1]
大学生は、とかく忙しいものだ。
コンパにコンパにコンパに、バイト……いや、違う。
講義講義講義バイトだ。俺の場合は。
新歓くらいなら顔を出すが、女子とよろしくする場に参加する謂れはない。
だというのに、しつこくお誘いがくるのは、いかがなものか。
天下のT大生が、そこまで暇でいいものか?
「時間は、作るもんだろ」
ご尤もなご意見は、同じ理三(理科三類)生の坂本(さかもと)君のもの。
彼は、さらなるご高説を披露してくれた。
「三年になったら、寝る暇もなくなるんだぜ。楽しむなら今のうちだろ」
「おっしゃるとおり。だからこそ、時間は有効に使わないとな」
「でしょでしょー。で、場所と時間だけど、」
「だが断る」
「今日のはレベル高いんだって。タダでいいからさ、参加しろよ」
「井上誘えよ」
「もう誘った」
「で?」
「T大生ってだけで、簡単に飛びつく女に興味ないって」
「相変わらず、はっきりしてんなぁ」
「これで高橋にまで断られたら、俺の立場がなくなる」
「はは、知るかっ」
「高橋君、高橋様ー」
女にもてたいがために、必死でT大目指した坂本にとって、合コンは死活問題なのだろう。
確かに、T大の肩書きは強い。
しかも理科三類ともなれば、相手の目も眩むだろう。
顔面偏差値低めの坂本君でも、遊ぶ相手には不自由しないってことだ。
「ヘタに参加して、お前の恨み買いたくないもん」
「う……あ、アレに関しては、水に流す。いや、全面的に俺が悪かった」
どうしてもと言われ参加したとき、途中抜けした俺を追ってきた女がいた。
まぁ、せっかくだからとその後いろいろ励んだけれど、坂本がその女狙いだったなんて、俺が知る由もなかったのだ。
しかも一回寝ただけで彼女面され、その後少々揉めたのよね。
「何度も言ってるけど、俺は、」
「分かってる、みなまで言うな。高橋が女に興味ないってのは、重々承知してるんだ」
「その言い方だとヘンな誤解されそうだから、止めてね」
「高橋が女に不自由してないのは、知ってる。有名だもんな」
「いやいや、有名にしたのはお前らだからね。俺の悪評言い触らしてくれたよね」
「ひょっとして、あのこと言ってんのか? アレは、お前の自業自得じゃねーか」
はいはい、その通りですね。
調子ぶっこいてたのは、自覚してんだよ。
あのときは入学したばかりで、気が抜けてたとしか言いようがないんだ。
俺がT大に入学した頃、アキラは奥院に引き篭もり、東峰の戻りをひたすら待ち続けていた。
俺はといば都内のマンションで一人暮らしを始め、久しぶりに訪れた一人の時間に思いっきり気が緩んでいたんだ。
そのせいで、前年度のミスキャンパスなる女と、その後今年度のミスキャンパスとなる女を、同時期に食うというミスを犯してしまった。
結局、女どもにばれて、どっちが本命の彼女なのと責められた。
どっちも遊びだし興味はないしで、適当に言い逃れしてたら、勝手に喧嘩をはじめて騒動になったというわけ。
もちろん坂本君を筆頭に、目撃してた奴らが、おもしろおかしく周囲に喋ってくれましたよ。
おかげでさまで、俺はクズ男の称号をいただいて、女どもは弄ばれた悲劇のヒロインだ。
だが俺は知ってるぞ。
その後女たちが、さらなる悲劇に見舞われたことを……。
「とにかく、俺は参加しないから。同年代は、もうこりごり」
やっぱ女は、割り切ってる年上がいい。
「この前のは失敗でさー。イケメン連れて来ないと、次はないって言われたんだよ。なぁ、頼むよー」
「ははは、俺がイケメンか。かなりのフシアナだな」
「ミスキャンパス二人も食ってて、何言ってんだか」
「それについては反省してます。あれから、生徒さんには手を出しておりません」
英国から帰国して、既に一年以上経過していた。
今の俺は、T大理科三類の二年生だが、まだ医学生でもなんでもない。
その肩書きがもらえるのは、三年生になってから。
だからこそ、この時期はかなり時間が取れるといえる。
俺なんか、バイトもしてるくらいだしね。
無難に家庭教師を始めたけど、まぁいろいろ問題が起きまして、今は小中学生相手の塾講師をしています。
結構時給がいいのよ。
三年になれば各学部で学ぶため、さすがに今ほどの時間は取れない。
だから今の内にと遊びたがる学生は多い。
俺も忙しくなるのが目に見えてるから、来年はバイトを辞める予定にしていた。
「もっかい、井上に頼んでみろよ」
「えええ、一回断られてんだぞ」
「文句なくイケメンさんでしょ。井上連れてったら、坂本君のお株もアップよー」
「あいつ、なんか怖いんだよなぁ……」
「知るかよ。頼み込めよ」
「んー……伝家の宝刀に頼るかぁ……」
「いいねー、練習だと思ってがんばってこい」
俺にとっては、完全に他人事。
だが坂本にとっては、いろんな意味で泣きたいくらいの現実だ。
T大には、進振りなる制度がある。
詳細は省くが、二年から三年に進学できるかどうかは、これにかかっているわけだ。
各学部の各学科には定数なるものがあり、志望した学科で無事三年を迎えられる生徒は限られる。
当然、医学部医学科は一番人気で、そこに進めるか否かが、今後の人生を左右するといっても過言ではなかった。
ちなみに、第一段階の進学内定者は、9月半ばに発表された。
俺? 俺は医学部医学科に内定されましたよ。
このあとの秋休みは、のんびり過ごさせていただきます。
しかし、坂本はそうはいかなかった。
この後第二段階、再志望と進んで行き、それでも内定がもらえなかったら降年決定。
だがまぁ、我が理三には、伝家の宝刀と呼ばれる『土下座』があることから、定員オーバーした科に入れる可能性があったりする。
つまり、あれだ。
理三で入った時点で、医学部医学科行きの切符は手中に収めたも同然てこと。
だからこそ、余裕ぶっこいての合コン三昧なんだろうけどね。
大学生は、とかく忙しいものだ。
コンパにコンパにコンパに、バイト……いや、違う。
講義講義講義バイトだ。俺の場合は。
新歓くらいなら顔を出すが、女子とよろしくする場に参加する謂れはない。
だというのに、しつこくお誘いがくるのは、いかがなものか。
天下のT大生が、そこまで暇でいいものか?
「時間は、作るもんだろ」
ご尤もなご意見は、同じ理三(理科三類)生の坂本(さかもと)君のもの。
彼は、さらなるご高説を披露してくれた。
「三年になったら、寝る暇もなくなるんだぜ。楽しむなら今のうちだろ」
「おっしゃるとおり。だからこそ、時間は有効に使わないとな」
「でしょでしょー。で、場所と時間だけど、」
「だが断る」
「今日のはレベル高いんだって。タダでいいからさ、参加しろよ」
「井上誘えよ」
「もう誘った」
「で?」
「T大生ってだけで、簡単に飛びつく女に興味ないって」
「相変わらず、はっきりしてんなぁ」
「これで高橋にまで断られたら、俺の立場がなくなる」
「はは、知るかっ」
「高橋君、高橋様ー」
女にもてたいがために、必死でT大目指した坂本にとって、合コンは死活問題なのだろう。
確かに、T大の肩書きは強い。
しかも理科三類ともなれば、相手の目も眩むだろう。
顔面偏差値低めの坂本君でも、遊ぶ相手には不自由しないってことだ。
「ヘタに参加して、お前の恨み買いたくないもん」
「う……あ、アレに関しては、水に流す。いや、全面的に俺が悪かった」
どうしてもと言われ参加したとき、途中抜けした俺を追ってきた女がいた。
まぁ、せっかくだからとその後いろいろ励んだけれど、坂本がその女狙いだったなんて、俺が知る由もなかったのだ。
しかも一回寝ただけで彼女面され、その後少々揉めたのよね。
「何度も言ってるけど、俺は、」
「分かってる、みなまで言うな。高橋が女に興味ないってのは、重々承知してるんだ」
「その言い方だとヘンな誤解されそうだから、止めてね」
「高橋が女に不自由してないのは、知ってる。有名だもんな」
「いやいや、有名にしたのはお前らだからね。俺の悪評言い触らしてくれたよね」
「ひょっとして、あのこと言ってんのか? アレは、お前の自業自得じゃねーか」
はいはい、その通りですね。
調子ぶっこいてたのは、自覚してんだよ。
あのときは入学したばかりで、気が抜けてたとしか言いようがないんだ。
俺がT大に入学した頃、アキラは奥院に引き篭もり、東峰の戻りをひたすら待ち続けていた。
俺はといば都内のマンションで一人暮らしを始め、久しぶりに訪れた一人の時間に思いっきり気が緩んでいたんだ。
そのせいで、前年度のミスキャンパスなる女と、その後今年度のミスキャンパスとなる女を、同時期に食うというミスを犯してしまった。
結局、女どもにばれて、どっちが本命の彼女なのと責められた。
どっちも遊びだし興味はないしで、適当に言い逃れしてたら、勝手に喧嘩をはじめて騒動になったというわけ。
もちろん坂本君を筆頭に、目撃してた奴らが、おもしろおかしく周囲に喋ってくれましたよ。
おかげでさまで、俺はクズ男の称号をいただいて、女どもは弄ばれた悲劇のヒロインだ。
だが俺は知ってるぞ。
その後女たちが、さらなる悲劇に見舞われたことを……。
「とにかく、俺は参加しないから。同年代は、もうこりごり」
やっぱ女は、割り切ってる年上がいい。
「この前のは失敗でさー。イケメン連れて来ないと、次はないって言われたんだよ。なぁ、頼むよー」
「ははは、俺がイケメンか。かなりのフシアナだな」
「ミスキャンパス二人も食ってて、何言ってんだか」
「それについては反省してます。あれから、生徒さんには手を出しておりません」
英国から帰国して、既に一年以上経過していた。
今の俺は、T大理科三類の二年生だが、まだ医学生でもなんでもない。
その肩書きがもらえるのは、三年生になってから。
だからこそ、この時期はかなり時間が取れるといえる。
俺なんか、バイトもしてるくらいだしね。
無難に家庭教師を始めたけど、まぁいろいろ問題が起きまして、今は小中学生相手の塾講師をしています。
結構時給がいいのよ。
三年になれば各学部で学ぶため、さすがに今ほどの時間は取れない。
だから今の内にと遊びたがる学生は多い。
俺も忙しくなるのが目に見えてるから、来年はバイトを辞める予定にしていた。
「もっかい、井上に頼んでみろよ」
「えええ、一回断られてんだぞ」
「文句なくイケメンさんでしょ。井上連れてったら、坂本君のお株もアップよー」
「あいつ、なんか怖いんだよなぁ……」
「知るかよ。頼み込めよ」
「んー……伝家の宝刀に頼るかぁ……」
「いいねー、練習だと思ってがんばってこい」
俺にとっては、完全に他人事。
だが坂本にとっては、いろんな意味で泣きたいくらいの現実だ。
T大には、進振りなる制度がある。
詳細は省くが、二年から三年に進学できるかどうかは、これにかかっているわけだ。
各学部の各学科には定数なるものがあり、志望した学科で無事三年を迎えられる生徒は限られる。
当然、医学部医学科は一番人気で、そこに進めるか否かが、今後の人生を左右するといっても過言ではなかった。
ちなみに、第一段階の進学内定者は、9月半ばに発表された。
俺? 俺は医学部医学科に内定されましたよ。
このあとの秋休みは、のんびり過ごさせていただきます。
しかし、坂本はそうはいかなかった。
この後第二段階、再志望と進んで行き、それでも内定がもらえなかったら降年決定。
だがまぁ、我が理三には、伝家の宝刀と呼ばれる『土下座』があることから、定員オーバーした科に入れる可能性があったりする。
つまり、あれだ。
理三で入った時点で、医学部医学科行きの切符は手中に収めたも同然てこと。
だからこそ、余裕ぶっこいての合コン三昧なんだろうけどね。