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2012年ハロウィン

[アーちゃん]

アキにとっての、ある意味、宿敵。
見かけは単なる軽い男だが、とてつもなく強靭な意思を持った人物、それがアーちゃん!

しかし、アキだって最強の戦士なのです。
菓子のためならどんな非道な行いも厭わない、そんな鬼のような心の持ち主なのです。

さぁ、合戦の準備は整った。
今こそ開戦です。

「とりっ、ああ、とりっ、なのよっ」

「ああん?」

敵の間抜けた掛け声に、アキは勝利の予感をひしひしと感じ取りました。

「あ、うう、するのよ、なのっ」

指をめいっぱい動かして、相手が屈服するのを待ちます。

「アキ……」

「う、あ、」

なにやら目を見開きながら、アキをジッと見詰める宿敵アーちゃん。

「超萌えーーー。なにそれ、めっちゃ似合ってるじゃん。今年は猫耳とはさすがアキラさん、いい仕事するねー。あ、撮るから動いちゃダメよー」

「あ、うう、ああ」

「うんうん、マジいけてるー。いやー、男に萌えってどうよって感じだけど、アキなら許せるねー。つか、この尻尾、ちゃんと針金入ってんのかよ。いいね、このカーブ、うんうんサイコー」

携帯片手にパシャパシャとシャッターを切る敵。
それが済めば、アキの戦士としての誇りである猫耳尻尾をいじくり倒してくる始末。

「あああ、いやなのよ、アーちゃん、するの、のよっ」

一旦アーちゃんから距離を置き、仕切り直しです。
ある程度カメラに収めてすっきりしたのか、アーちゃんは携帯をポケットにしまい、不敵にも笑い出しました。

なんという命知らずな男なのか。
アキの心から"容赦"の二文字が、するりと消え去りました。

「毎年言ってるでしょー。俺は他人様にタダで物をやるのが、Gよりも嫌いなのー」

「う、あう、するのっ」

最後通達を聴く気がないなら、殲滅するまで。

「ふふふー、俺に勝てたことないくせにー」

「うっ、」

そうです。
悔しいことに、最強の戦士をもってしても、この男に勝てた試しがないのです。
しかし、今年の自分は、去年よりも成長しているはず。否、絶対にしている!
そう確信を込め、いざ滅びへの誘い手となるべき、修羅の道へ。

「"つれなき"顔なれど、女のおもふこといといみじきことなりけるを、文中の"つれなき"の口語訳は!?」

「あ、あうあーーー」

「次の文中の"しか"について、文法的に説明せよ! 昨日こそ早苗とり"しか"いつのまに稲葉そよぎて秋風ぞ吹く」

「う、ああ、うう」

「門よくさしてよ。雨もぞ降る。雨もぞ降るの口語訳は!?」

「あ、あああ」

アキは力尽きたように、ガクリと跪きました。
激しい戦いを物語るように、アキの顔色は真っ青になり、息も酷く上がっています。
悔しいですが、今年も完敗です。

「まだまだあるよー、」

まだ戦力に余裕があるせいか、不敵な笑みを湛えたままの敵は、次の攻撃準備を始めました。

アキは最強の戦士なのです。
そして真の強さとは、撤退を恐れぬ勇気を持つことだと、重々承知しています。

「あああ、ううう、いまはするのよ、つぎなのよーーー」

アキは、大急ぎでその場を離れました。戦略的撤退です。

長い目でみて、勝利するための有効な手段。
今年は敗れたが、己の息があるうちは、本当の敗北ではない。

次こそは、来年こそは勝利の歓声を高らかに謳い上げるのだ。
そう誓いを建て直し、最強の戦士は戦場を後にするのだった。


誰の所に行く?

アッくん

アッキー

ぱぱさん

ちゃらさん

凱旋
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