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2012年ハロウィン

[アッキー]


この男とは、毎日が戦いのようなものです。

朝食夕食毎に出される野菜。
弁当に入れられる野菜。
はては、おやつまで野菜ジュース。

毎日毎日繰り出される攻撃も、ハッと気付けば甘んじてその身に受けておりました。
しかし、アキはそれを恥とは思わない。
平常時ならばそれも許すと、豪放に構えることができるからです。

だけど、今日だけは別。

なんといってもハロウィンなのです。
菓子を寄越さない相手には、いたずらしても問題のない日なのです。

時は熟した、いざ出陣。

「とりっ、ああ、とりっ、なのよっ」

「……」

予想はついておりました。
いえ、毎日がほぼ同じリアクションの相手に、予想もなにもないかもしれません。

「とりっ、ああ、とりっ、なのよっ」

まだ脅しの言葉はかけません。

「おやつは基本小遣い制にしたはずだが」

そうです。
この間まで、おやつ代はカードから好きなだけ支払っておりました。
それが、今ではお小遣い(月3000円)を貰い、その中から遣り繰りする生活になっているのです。
おかげで、めっきりと食べる量が減ってしまいまいした。

それでも成長期にあることから、おやつを買えない日は、アッキーがちゃんと用意してくれます。
野菜ジュースと共に……。
もちろんとても美味しく頂戴しています。
野菜のキッシュに、トマトゼリー、ほうれんそうのケーキにごぼうのドーナツ。

それはそれで確かに美味しい、だが違う、己の求める物とは、なにかが微妙に違う。
それが、アキの考えでした。

じゃあ、ハロウィンのパンプキン菓子だって、かぼちゃという野菜を使った菓子だなどと言われるかもしれないが、パンプキンはあくまでパンプキン、かぼちゃとは違うというのが、アキの意見だ。

「きょ、きょーないのよ、ないの、はろなのよ!」

小遣いで勝手に菓子を買えと抜かした男に、アキは今日という日を強調します。
つまり、自分で用意するのではなく、他者から無理矢理菓子を強奪する日だと。

相手は軽く溜息を吐きました。
むむ、やる気か。

手をにじにじと動かすも、正直、自分の攻撃が相手に通じないことなど、アキは分かっております。

そして、

「あまり食べ過ぎるな」

とても優しい男だという事も、最強の戦士はちゃんと知っているのです。

アッキーから渡されたのは、かぼちゃの意匠で彩られた大きな袋、口は黒のリボンで結ばれて、ちゃんとハロウィン仕様になっています。
どこから見ても手作りのパンプキンクッキーに、アキはほこほこと胸が暖かくなってきました。

「あい、ありがと、なの、のよ」

アッキーはムスッとした表情のまま、黒猫にクッキーを持たせてくれました。
最強の戦士であるアキですら敵わない相手との戦いは、こうして無事回避することができた。

また来年も、彼が戦いを回避してくるのを祈りながら、アキは次の戦場に向かうのだった。


誰の所に行く?

アッくん

アーちゃん

ぱぱさん

ちゃらさん

凱旋
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