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2013年お正月

[そうしてどうなった3]


畳に払い落とされた駒とサイコロは、それ専用の箱に丁寧に収められた。
アキラの大人気ない行動には驚いたけど、それを責めたのはアキだけだった。

「あなたには言われたくありません」

暗に百人一首と福笑いのことを引き合いに出し、アキラはしらんぷりを決め込んだ。

「まぁまぁ、たかが遊びじゃーん」

アーちゃん、福笑いでもその言葉が聞きたかったよ。

「うう、うう」

アキの気持ちはわかるけど、ここで何かを言うのは憚られる。

「アキ」

いつの間にか座敷から縁側に出ていたアッキーが、アキを呼んだ。

「あう?」

「懐かしい物があるぞ」

そう言ってアッキーが手にしていたのは、

「凧だ。懐かしい」

「あ、ああ、なのよ、なの、するのよ」

「お、和凧とは、珍しいねー」

「ふふ、角凧というのですよ」

長方形の和紙に武者や龍が描かれた昔ながらの凧は、洋凧に慣れた昨今、逆にとても斬新に見えた。

「あ、う、いいのよ、するの、なのよ、するのよ」

太い眉の勇ましい武者凧を手に、アキがアーちゃんの袖を引っ張った。
気持ちが逸るのか、すでに足は庭に下りようとしている。

「ふっふーん、凧揚げあっちゃんと呼ばれたのは伊達じゃねーぞー」

たくさん用意された凧の竹ひごの節、糸目、とひとつひとつ調べながら、アーちゃんが余裕の発言。

「どうせ、ゲイラだろ」

同じ作業をしていたアッキーがポソリと呟いた一言に、アーちゃんの眉がきっと上がった。
ゲイラって、ゲイラカイトのことかな。
確かアメリカの凧で、誰でも簡単に揚げられるっていうのが売りだったはず。

「かっちーん、ゲイラも和凧も得意ですー。おめぇと違って」

あ、あれ?
流れ的には、皆でのんびり凧揚げって雰囲気じゃなかったっけ?

アッキーはムッと眉をしかめて、そのままアーちゃんを睨みつけた。

「その自信がどこからくるのか、甚だ疑問だな」

アッキーの言葉に、アーちゃんはグッと睨み返し、そうして不敵に笑んだ。
とてつもなく嫌な予感がこみ上げて、このまま皆で暖でもとろうよ、なんて提案したくなりました。
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