2013年お正月
[そうしてどうなった2]
箱のように見えた物は、双六盤だった。
部屋の中央に運ばれた、その一見箱のような木製の台は、側面には蒔絵が施されていて、どっからどうみても高級品で年代物だとわかる。
表面には漢数字の書かれたマスがあり、なんとも色鮮やかな風景や着物を着た女性たちが描かれていた。
「すごく綺麗…」
おそらく螺鈿で描かれたであろうそれに、素直に感動した。
「これは、うちで作らせたものなのですよ」
え、双六って作って貰うものなの?
「なんだか、僕の知ってるものとかなり違うね。これ、指示とかはないの?」
僕の知ってる双六は、マスに色んな指示が書かれているのに、これは漢数字が書いてあるだけだもの。
「止まったマスの数字にある札を引くんですよ」
「札?」
その言葉を待っていたかのように、ずっと静かに佇んでいた女性たちが、さささっと10個の小箱を用意した。
やはり蒔絵が施された小箱の一面に、マスと同じく数字が書かれている。
続いて女性たちは、最初にやった百人一首のような札を大量に畳に出し、クスクス微笑みながらそれらを裏向きに混ぜ合わせた。
適当に10個の山にわけ、小箱の中に入れていく。
なるほど、マスの数字と同じ箱から札を取り出して、そこに書かれた指示に従うってことなんだ。
なんだか、面白そう。
「はい、これがアッくんの駒です」
「あ、ありがとう……すごっく綺麗な桃色だね」
僕に手渡されたのはほのかなピンク色をした、なんとも美しい色合いの馬を模した駒だった。
よく見ると、馬の表情までちゃんと刻まれている。
「それは桃色珊瑚です。はいアッキーは紫檀です。アキは翡翠、あなたは瑠璃でいいですね。僕は象牙を使います」
駒を順々に配るアキラの口から、なんだかとんでもない単語が。
「えええ、ちょ、ちょっと待って。こ、駒だよね」
「そうですよ、駒です」
「サ、サンゴとか、すごく貴重じゃなかったっけ、いいの!?」
「アッくん、これはかなり昔に作られたものです。その当時のことを僕に言われても困ります」
「あ、う、うん、そうだよね」
用意された二つのサイコロは、とても光沢のある純白色をしていた。
怖いから、材質を聞くのは止めておこう。
「う、うう、う、あうう」
「え?」
なにやら怪しげな呻き声の正体はアキだった。
口元をもぞもぞと動かして、僕の駒をジッと見詰めている。
「あ、だ、駄目だよっ、これは食べ物じゃないからねっ」
「あ、あい、なの…」
どこかふんわりとした甘さを連想させるサンゴの淡桃に、アキの食欲中枢が刺激されたようです。
咄嗟に背後に隠す僕を残念そうに眺めながら、アキはあんこだけが盛られた器を手に持った。
箱のように見えた物は、双六盤だった。
部屋の中央に運ばれた、その一見箱のような木製の台は、側面には蒔絵が施されていて、どっからどうみても高級品で年代物だとわかる。
表面には漢数字の書かれたマスがあり、なんとも色鮮やかな風景や着物を着た女性たちが描かれていた。
「すごく綺麗…」
おそらく螺鈿で描かれたであろうそれに、素直に感動した。
「これは、うちで作らせたものなのですよ」
え、双六って作って貰うものなの?
「なんだか、僕の知ってるものとかなり違うね。これ、指示とかはないの?」
僕の知ってる双六は、マスに色んな指示が書かれているのに、これは漢数字が書いてあるだけだもの。
「止まったマスの数字にある札を引くんですよ」
「札?」
その言葉を待っていたかのように、ずっと静かに佇んでいた女性たちが、さささっと10個の小箱を用意した。
やはり蒔絵が施された小箱の一面に、マスと同じく数字が書かれている。
続いて女性たちは、最初にやった百人一首のような札を大量に畳に出し、クスクス微笑みながらそれらを裏向きに混ぜ合わせた。
適当に10個の山にわけ、小箱の中に入れていく。
なるほど、マスの数字と同じ箱から札を取り出して、そこに書かれた指示に従うってことなんだ。
なんだか、面白そう。
「はい、これがアッくんの駒です」
「あ、ありがとう……すごっく綺麗な桃色だね」
僕に手渡されたのはほのかなピンク色をした、なんとも美しい色合いの馬を模した駒だった。
よく見ると、馬の表情までちゃんと刻まれている。
「それは桃色珊瑚です。はいアッキーは紫檀です。アキは翡翠、あなたは瑠璃でいいですね。僕は象牙を使います」
駒を順々に配るアキラの口から、なんだかとんでもない単語が。
「えええ、ちょ、ちょっと待って。こ、駒だよね」
「そうですよ、駒です」
「サ、サンゴとか、すごく貴重じゃなかったっけ、いいの!?」
「アッくん、これはかなり昔に作られたものです。その当時のことを僕に言われても困ります」
「あ、う、うん、そうだよね」
用意された二つのサイコロは、とても光沢のある純白色をしていた。
怖いから、材質を聞くのは止めておこう。
「う、うう、う、あうう」
「え?」
なにやら怪しげな呻き声の正体はアキだった。
口元をもぞもぞと動かして、僕の駒をジッと見詰めている。
「あ、だ、駄目だよっ、これは食べ物じゃないからねっ」
「あ、あい、なの…」
どこかふんわりとした甘さを連想させるサンゴの淡桃に、アキの食欲中枢が刺激されたようです。
咄嗟に背後に隠す僕を残念そうに眺めながら、アキはあんこだけが盛られた器を手に持った。