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ひねもすのたりのたり

[ひねもすのたりのたり5-2]


それは、高校一年になって初めて迎えた長期休暇でのこと。
今年の夏休みは、少し違う。
そう、キラキラ会に、アッくんという新たな会員が加わったのだ。
暑い暑い夏ではあるが、山の空気はとても涼しく、アッくんもきっと気に入ってくれるはずだ。



アキラ、アーちゃんに遅れること数日、とうとうアッくんがアキの家に遊びに来てくれた。
もちろん駅までのお出迎えは、アキがした。
早くアッくんに会いたくて、運転手のハルくんを急かしたりもした。
いくら早く到着しても電車の時間は変わりませんよ、と言われたけど。

なんだかんだで無事アッくんと出会い、家に到着。
屋敷を見た途端、アッくんは驚愕の声を上げていた。
屋敷の佇まいに驚いたらしい。
大袈裟な。
ちょっと広くてちょっと大きくてちょっと部屋数が多くて、露天風呂なんかもあるけど、お家であることに変わりはないのだ。

夜は大広間に布団を敷いて、皆で雑魚寝をするのが慣わしになっている。
アッくんがいるから、今年のお布団は五組だ。

アキラとアーちゃんは、いつも隣同士で寝る。
二組の布団をぴったりとくっつけて、まるで大きな一組の布団のようにして、ひっついて寝ているのだ。
めったに一人で寝ないアキラのためだが、これにアッくんは少しだけびっくりしていた。

残り三組のお布団は、アキラたちの頭の上に敷かれる。
頭の上といっても、二段ベッドというわけではない。
頭を向かい合わせにして、対面に敷くのだ。
こちらはアキを真ん中にして、縁側に近いお布団がアッくん、廊下側がアッキーと決まった。

そうやって過ごした数日間。
海も川もバーベキューも、とても楽しかった。
毎日はしゃぎまわったおかげで、夜はそうそうに眠り朝までぐっすり。

だが、今宵は違った。
真面目なアッくんが発端になり、ほぼ宿題を片付けることで一日が終了したからだ。
そんな日もキライじゃない。
宿題の後はのんびりお昼寝なんかして、起きたらアッキーお手製のアイスクリームが待っていたから。

夕食が済んだ後は、庭を眺めながら皆でスイカを食べた。
アキは、夏の定番スイカが大好きだ。
綺麗にスライスされたものでは間に合わないから、いつも四分の一に切ったものをむしゃむしゃしている。
種は庭に向って、ププッとすればいいから、楽チン楽チン。

「アキ、あまり食べすぎてはいけませんよ」

半分に切ったスイカをスプーンですくって食べてる人に、言われたくない。

「食いすぎて、おねしょしても知らねーぞ」

アーちゃんが、たった二切れしか食べなかった理由は、それだったのか。
アキはアーちゃんとは違うぞ。
おねしょなぞ、絶対にしない。



夜も深まり、それぞれが布団の中に入っていく。
いつもならここでグッスリ寝入るのだが、どうも眠れない。

アキの眼はパッチリしている。
ついでに、アッくんの眼もパッチリだった。
アキラもアーちゃんもアッキーも、皆がみんなパッチリ。
だから、なんとなく暗闇の中で話し込んだ。

これが、いけなかったのだ……。

「こういうときは、定番のアレじゃね?」

言いだしっぺは、アーちゃんだった。

「アレって?」

余計なことを聞いたのは、アッくん。

「怪談ですか?」

トドメはアキラで、成り行き上怪談なるものが開始されることになった。

戦士たるアキに、怖いものなどない。
だがアッくんの表情が強張ったのは、見過ごせない。
ここはアッくんのためにも、彼らを止めるべきなのだ。

「あうう、だめなの、いやなのよっ」

「アキが怖がってるし、やめとくか」

「うが!?」

なんたること!
アッくんのためを思えばこその言動が、とんでもない誤解を招いてしまった。

「うっ、アキ、いいの、へっちゃっちゃっ、なのよっ」

「では、やりましょうか。夏の定番ですしね」

「あうっ……」

アキラに言われたら、これはもう決定ではないか。
せめて電気を点けようとの提案は、

「何事も、雰囲気雰囲気」

アーちゃんの戯言により、あっさりと却下された。
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