アーちゃん■MMO日記
[アーちゃん■MMO日記17-1]
それは、高等部に上がってすぐの文化祭が近づいた頃のことだった。
高橋昭さんですか? なんて丁寧に聞かれたから、素直にうんって答えた俺が馬鹿でした。
相手は書記様親衛隊の隊長、つまり一条静の猛烈ファンだったというわけ。
一条静親衛隊は、他の親衛隊とは趣旨が異なる。
言葉少なく、病的なまでに隠棲的な男のファンは、一種独特な観念を持ってたってこと。
静の孤独を知っていながら、敢えて何もしない集団。
その孤独さをも孤高という美に変換し、静を飾る一つと捉えるなんて、俺からすればキモイだけだった。
静を筆頭に、みなが皆ペシミズムってやつだよね。
しかも、それを愉しんでいやがるし。
もちろん、それについては否定するだろうけども、俺にはそうとしか見えなかったのだ。
孤独な書記様。嗚呼、なんとおいたわしくも美しいお姿。
孤独である貴方に何もしてあげられない僕たち。嗚呼、なんという悲劇か。
一時が万事この調子なもんだから、愉しんでるとしか思えまい。
だがしかし、根っこは悪い奴らじゃない。
悪意がなければいいってもんじゃないが、静が孤独を愛してるわけじゃないってのは察していたのだから。
どうして孤独なのかまでは、思い至らないらしいが。
とにもかくにも、孤高の男を美しいと褒め称え、お可哀想と眺めていた集団に、一条静はあろうことかこの俺を"大切な人"と宣った。
最初はびびった。
この俺が制裁されるとか、なんの罰ゲームだよと静を恨んだりもした。
だがしかし、もともと親衛隊との仲を拗らせきってなかった静は、着々と関係修復に励み、どうにかこうにかそこそこ意思疎通ができるまでになっていたのだ。
そうして準備された網に見事に引っかかった俺は、孤独な王を崇める奴らからすれば、救世主にも等しかったらしい。
「高橋くんのことは、書記さまから聞いています」
可愛らしい顔でやけに丁寧に話すチワワ隊長に、嫌な予感しかしなかった。
「書記様の心を開いてくださり、ありがとうございます。高橋君は、僕たちをも救ってくださったのです」
引いたね、マジドン引きだったね。
俺は世紀末に生きる男かっつの!
言っときますが、七つの傷なんかありませんからね!
北斗七星とは無関係に生きてますからね!
一子相伝の技とか、出ませんよ!
つか、言葉よりも形で示せよ!
救世主だって、飯も食えばゲームもするんだ!
とまぁ、そんなことは口にしなかったが、この後俺は、静の望みを少しだけ叶えると約束した。
決して静のためじゃない。
能天気に悲観的な集団を、僅かばかり受け入れたってだけだ。
どっから見ても脳が病気の人たちだが、彼らは、静が他人と親しくできたことを純粋に喜んでいた。
そのときその場にいたやつの誰もが、俺を嫉妬の対象にしていなかったんだぜ。
驚いたね。
しかもそれだけじゃなく、静が恋心ゆえに俺に懐いたわけじゃないってことも、どこかで気付いてもいたんだ。
彼らにとっては、俺は猛獣を手懐けた調教師みたいなもんで、あながち間違ってない判断を下すチワワたちを、ほんのちょっと見直したってわけ。
こうして文化祭は無事終了したわけだが、あれから俺の生活が一変するでなく、静とはほどよい友人関係を維持していた。
親衛隊は、最初こそ押し付けがましかったが、躾けていくうちにそれもなくなり、今では完璧な赤の他人になりおおせている。
そんなこんなで二年目に突入した春。
「高橋先輩!?」
「はい、高橋先輩ですよ、なにかご用ですか?」
土曜早朝、鬼嫁、もといアキラに追い出された俺は、一人寂しく朝の図書室を利用していた。
東峰のところに行く前に、掃除機かけまくりたいんだってよ。
ついでに、拭き掃除もするんだって。
暇なときにちょこまかやってるけど、月に何度か盛大に掃除しまくりたい日があるみたいですよ。
だからって、寝てる俺を叩き起こすってどーよ。
邪魔ってなんだよ、意味分かんねーよ。
そんなことを言おうものなら、倍以上の文句が返ってくるのは明白。
仕方なく朝もはよから制服に着替え、教科書ノート参考書持参で図書室にやって来たわけですが。
「こんな朝早くに図書室なんて……あ、書記様は、まだ寝てるんですか?」
「知るかっ」
早朝と言っても、平日ならばHRをやってる時間帯だ。
とはいえ、本日は休日の土曜日で、早朝起床するメリットなどほぼ皆無の日だった。
そんな日に、朝もはよから図書室に来るやつなんて、いないと断言できるね。
現に、利用者は俺一人だもん。
そんなガランとした図書室内で、利用者がいようがいまいが、休日だろうがなんだろうが、図書室を管理しなければならない図書委員が、なんで俺の隣りにお座りになるんでしょうね?
お仕事しなさいよ。
「し、知るかって、そんな、書記様を起こしましょうよ」
「なんで?」
朝から、イラッときた。
静が起きてようが死んでようが、俺の人生にはまったく関りない話だってのに。
なのにこの図書委員は、俺に静を起こせとか意味不明な言い掛かりをつけてきやがる。
「なんでって、だって書記様は先輩に会いたいだろうし、そのためだったら早起きも平気だろうし」
「タキくんだっけ?」
「谷です」
「そうそう、タマくん」
「だから、谷です」
「さっきからそう言ってんじゃん」
「どこがですか」
「いいか、タマ」
「谷です」
「俺は今さっき起きたの」
「寝起きって感じですよね。目がトロンとしてますよ」
「だからな、タマ」
「谷です」
「今の俺ではお前の相手は務まらない。どうしてもってんなら、コーヒーでも買ってきなさい」
「図書室での飲食は、他の利用者の迷惑になるので……」
「そういうことは、他の利用者がいるときに言って。いいから、買って来い。話はそれからだ」
「あの、前もそんなこと言って……」
「なんだってぇぇっ?」
タマが、ダッシュで出口に向かう。
うるさいのが視界から消え、溜めていた息をおもっきし吐き出した。
「はぁぁぁ」
もう、なんなのアイツ。なんで今日に限って当番なわけ?
寝起きの俺をイラつかせてくれたのは、今年入学したてのピカピカの一年生、名をタマくんという。
初対面は去年の文化祭で、タマはうちの中等部の三年生だった。
既に何度か接触してるが、その都度静の話をされるのが、うざい。
そう、タマは一条静親衛隊に籍を置く、れっきとしたヒラ隊員なのだ。
隊員たちの間では、俺のことは暗黙の了解になってるらしい。
静の飼い主という妙な位置づけではあれど、それで納得いくなら構わない。
親衛隊は親衛隊の誇りやら利用価値やらがあるわけで、俺に迷惑かけないなら好きにすればいいってのが俺のスタンスだからね。
だがしかし、今年入学してきた一年の中に、奇妙な生徒が存在していた。
それが、例のタマだ。
静に傾倒してるのは見ての通りで、そのせいで、俺と静を露骨に取り持とうとするのが小賢しいというかなんというか。
当初は、かなり警戒した。
発言の微妙さが、非王道少年に重なったから。
だがまぁ、どことなく支離滅裂な会話ではあるものの、方向性はかなり異なってると受け取れなくもない。
「コーヒー買ってきましたっ」
参考書片手に予習復習に励む俺の前に、缶コーヒーが一つ置かれる。
「ご苦労さん」
タマを見もせずに缶を開け、一気に中身を煽った。
その瞬間訪れた壮絶な甘さに、咽そうになる。
多少の甘味ならOKだが、極悪なまでの甘さってのはいただけないな。
飲むけど。
「あの……」
「なに?」
まだ何かあるのかと、ノートから目を離さずに応じた。
俺の貴重な勉強時間を邪魔する奴に、丁寧に応じる必要はない。
こう見えて、俺は割りと努力家だ。
もともと天才肌じゃねーし、秀才でもないし。
つまり凡人の俺は、暇な時間帯に惜しみなく努力するしかないってわけ。
それで、どうにか次席をキープしてる。
「あの、その…150…えん」
「あんだってぇぇ?」
「なんでも…ないです……」
パシリのごとく使っといて、この扱いはひどい?
んなことはない、これくらいでちょうどいいんだよ。
「あの、あの…書記様の…」
「タマ、ハウスッ」
「谷です。あのハウスって?」
「サボってんじゃないよ。さっさとカウンターに戻りなさい」
「あの、人、いませんけど……」
「いようがいまいが、仕事中は仕事するのがルールでしょ」
「でも、あの、先輩、コーヒー飲んだらお話してくれるって」
「30分5000円な」
「弁護士ですかっ?」
「払わないなら散れ散れ、ほら、シッシッ」
まんま犬を追い払うマネをしたら、タマはすごすごとカウンターに退散した。
なんだかんだで適当にあしらえるってのは、非王道少年にはないスキルだ。
タマが言葉の通じないタイプなら全力で潰すのも有りだけど、ご覧のとおり会話は成立するしパシリになるわで、そこそこ便利に使っている。
タマは極端に地味でもなければ平凡でもなく、人によっては可愛いと称されるかもしれない容姿をしていた。
背格好はいたって普通。だいたいアキラくらいかな、さすがにあそこまで細くないけど。
頭のできに関しては、よく知らない。
とりあえず、すっげー倍率の中学入試を突破できる頭。
親しくしてるつもりはないが、たまに会うと纏わり付いてくるから、ある意味怖いもの知らずなんだろう。
静への愛が強すぎるせいだが、タマは静に愛されたいってわけじゃなかった。
ただ幸せになって欲しいと願っている、そっち方面の愛し方。
実に静の親衛隊らしい発想だし、場合によっては健気だとも思う。
その矛先が、俺に向いてなければね!
それは、高等部に上がってすぐの文化祭が近づいた頃のことだった。
高橋昭さんですか? なんて丁寧に聞かれたから、素直にうんって答えた俺が馬鹿でした。
相手は書記様親衛隊の隊長、つまり一条静の猛烈ファンだったというわけ。
一条静親衛隊は、他の親衛隊とは趣旨が異なる。
言葉少なく、病的なまでに隠棲的な男のファンは、一種独特な観念を持ってたってこと。
静の孤独を知っていながら、敢えて何もしない集団。
その孤独さをも孤高という美に変換し、静を飾る一つと捉えるなんて、俺からすればキモイだけだった。
静を筆頭に、みなが皆ペシミズムってやつだよね。
しかも、それを愉しんでいやがるし。
もちろん、それについては否定するだろうけども、俺にはそうとしか見えなかったのだ。
孤独な書記様。嗚呼、なんとおいたわしくも美しいお姿。
孤独である貴方に何もしてあげられない僕たち。嗚呼、なんという悲劇か。
一時が万事この調子なもんだから、愉しんでるとしか思えまい。
だがしかし、根っこは悪い奴らじゃない。
悪意がなければいいってもんじゃないが、静が孤独を愛してるわけじゃないってのは察していたのだから。
どうして孤独なのかまでは、思い至らないらしいが。
とにもかくにも、孤高の男を美しいと褒め称え、お可哀想と眺めていた集団に、一条静はあろうことかこの俺を"大切な人"と宣った。
最初はびびった。
この俺が制裁されるとか、なんの罰ゲームだよと静を恨んだりもした。
だがしかし、もともと親衛隊との仲を拗らせきってなかった静は、着々と関係修復に励み、どうにかこうにかそこそこ意思疎通ができるまでになっていたのだ。
そうして準備された網に見事に引っかかった俺は、孤独な王を崇める奴らからすれば、救世主にも等しかったらしい。
「高橋くんのことは、書記さまから聞いています」
可愛らしい顔でやけに丁寧に話すチワワ隊長に、嫌な予感しかしなかった。
「書記様の心を開いてくださり、ありがとうございます。高橋君は、僕たちをも救ってくださったのです」
引いたね、マジドン引きだったね。
俺は世紀末に生きる男かっつの!
言っときますが、七つの傷なんかありませんからね!
北斗七星とは無関係に生きてますからね!
一子相伝の技とか、出ませんよ!
つか、言葉よりも形で示せよ!
救世主だって、飯も食えばゲームもするんだ!
とまぁ、そんなことは口にしなかったが、この後俺は、静の望みを少しだけ叶えると約束した。
決して静のためじゃない。
能天気に悲観的な集団を、僅かばかり受け入れたってだけだ。
どっから見ても脳が病気の人たちだが、彼らは、静が他人と親しくできたことを純粋に喜んでいた。
そのときその場にいたやつの誰もが、俺を嫉妬の対象にしていなかったんだぜ。
驚いたね。
しかもそれだけじゃなく、静が恋心ゆえに俺に懐いたわけじゃないってことも、どこかで気付いてもいたんだ。
彼らにとっては、俺は猛獣を手懐けた調教師みたいなもんで、あながち間違ってない判断を下すチワワたちを、ほんのちょっと見直したってわけ。
こうして文化祭は無事終了したわけだが、あれから俺の生活が一変するでなく、静とはほどよい友人関係を維持していた。
親衛隊は、最初こそ押し付けがましかったが、躾けていくうちにそれもなくなり、今では完璧な赤の他人になりおおせている。
そんなこんなで二年目に突入した春。
「高橋先輩!?」
「はい、高橋先輩ですよ、なにかご用ですか?」
土曜早朝、鬼嫁、もといアキラに追い出された俺は、一人寂しく朝の図書室を利用していた。
東峰のところに行く前に、掃除機かけまくりたいんだってよ。
ついでに、拭き掃除もするんだって。
暇なときにちょこまかやってるけど、月に何度か盛大に掃除しまくりたい日があるみたいですよ。
だからって、寝てる俺を叩き起こすってどーよ。
邪魔ってなんだよ、意味分かんねーよ。
そんなことを言おうものなら、倍以上の文句が返ってくるのは明白。
仕方なく朝もはよから制服に着替え、教科書ノート参考書持参で図書室にやって来たわけですが。
「こんな朝早くに図書室なんて……あ、書記様は、まだ寝てるんですか?」
「知るかっ」
早朝と言っても、平日ならばHRをやってる時間帯だ。
とはいえ、本日は休日の土曜日で、早朝起床するメリットなどほぼ皆無の日だった。
そんな日に、朝もはよから図書室に来るやつなんて、いないと断言できるね。
現に、利用者は俺一人だもん。
そんなガランとした図書室内で、利用者がいようがいまいが、休日だろうがなんだろうが、図書室を管理しなければならない図書委員が、なんで俺の隣りにお座りになるんでしょうね?
お仕事しなさいよ。
「し、知るかって、そんな、書記様を起こしましょうよ」
「なんで?」
朝から、イラッときた。
静が起きてようが死んでようが、俺の人生にはまったく関りない話だってのに。
なのにこの図書委員は、俺に静を起こせとか意味不明な言い掛かりをつけてきやがる。
「なんでって、だって書記様は先輩に会いたいだろうし、そのためだったら早起きも平気だろうし」
「タキくんだっけ?」
「谷です」
「そうそう、タマくん」
「だから、谷です」
「さっきからそう言ってんじゃん」
「どこがですか」
「いいか、タマ」
「谷です」
「俺は今さっき起きたの」
「寝起きって感じですよね。目がトロンとしてますよ」
「だからな、タマ」
「谷です」
「今の俺ではお前の相手は務まらない。どうしてもってんなら、コーヒーでも買ってきなさい」
「図書室での飲食は、他の利用者の迷惑になるので……」
「そういうことは、他の利用者がいるときに言って。いいから、買って来い。話はそれからだ」
「あの、前もそんなこと言って……」
「なんだってぇぇっ?」
タマが、ダッシュで出口に向かう。
うるさいのが視界から消え、溜めていた息をおもっきし吐き出した。
「はぁぁぁ」
もう、なんなのアイツ。なんで今日に限って当番なわけ?
寝起きの俺をイラつかせてくれたのは、今年入学したてのピカピカの一年生、名をタマくんという。
初対面は去年の文化祭で、タマはうちの中等部の三年生だった。
既に何度か接触してるが、その都度静の話をされるのが、うざい。
そう、タマは一条静親衛隊に籍を置く、れっきとしたヒラ隊員なのだ。
隊員たちの間では、俺のことは暗黙の了解になってるらしい。
静の飼い主という妙な位置づけではあれど、それで納得いくなら構わない。
親衛隊は親衛隊の誇りやら利用価値やらがあるわけで、俺に迷惑かけないなら好きにすればいいってのが俺のスタンスだからね。
だがしかし、今年入学してきた一年の中に、奇妙な生徒が存在していた。
それが、例のタマだ。
静に傾倒してるのは見ての通りで、そのせいで、俺と静を露骨に取り持とうとするのが小賢しいというかなんというか。
当初は、かなり警戒した。
発言の微妙さが、非王道少年に重なったから。
だがまぁ、どことなく支離滅裂な会話ではあるものの、方向性はかなり異なってると受け取れなくもない。
「コーヒー買ってきましたっ」
参考書片手に予習復習に励む俺の前に、缶コーヒーが一つ置かれる。
「ご苦労さん」
タマを見もせずに缶を開け、一気に中身を煽った。
その瞬間訪れた壮絶な甘さに、咽そうになる。
多少の甘味ならOKだが、極悪なまでの甘さってのはいただけないな。
飲むけど。
「あの……」
「なに?」
まだ何かあるのかと、ノートから目を離さずに応じた。
俺の貴重な勉強時間を邪魔する奴に、丁寧に応じる必要はない。
こう見えて、俺は割りと努力家だ。
もともと天才肌じゃねーし、秀才でもないし。
つまり凡人の俺は、暇な時間帯に惜しみなく努力するしかないってわけ。
それで、どうにか次席をキープしてる。
「あの、その…150…えん」
「あんだってぇぇ?」
「なんでも…ないです……」
パシリのごとく使っといて、この扱いはひどい?
んなことはない、これくらいでちょうどいいんだよ。
「あの、あの…書記様の…」
「タマ、ハウスッ」
「谷です。あのハウスって?」
「サボってんじゃないよ。さっさとカウンターに戻りなさい」
「あの、人、いませんけど……」
「いようがいまいが、仕事中は仕事するのがルールでしょ」
「でも、あの、先輩、コーヒー飲んだらお話してくれるって」
「30分5000円な」
「弁護士ですかっ?」
「払わないなら散れ散れ、ほら、シッシッ」
まんま犬を追い払うマネをしたら、タマはすごすごとカウンターに退散した。
なんだかんだで適当にあしらえるってのは、非王道少年にはないスキルだ。
タマが言葉の通じないタイプなら全力で潰すのも有りだけど、ご覧のとおり会話は成立するしパシリになるわで、そこそこ便利に使っている。
タマは極端に地味でもなければ平凡でもなく、人によっては可愛いと称されるかもしれない容姿をしていた。
背格好はいたって普通。だいたいアキラくらいかな、さすがにあそこまで細くないけど。
頭のできに関しては、よく知らない。
とりあえず、すっげー倍率の中学入試を突破できる頭。
親しくしてるつもりはないが、たまに会うと纏わり付いてくるから、ある意味怖いもの知らずなんだろう。
静への愛が強すぎるせいだが、タマは静に愛されたいってわけじゃなかった。
ただ幸せになって欲しいと願っている、そっち方面の愛し方。
実に静の親衛隊らしい発想だし、場合によっては健気だとも思う。
その矛先が、俺に向いてなければね!