ひねもすのたりのたり
[ひねもすのたりのたり4-2]
アキにはいろんな顔がある。
ときには戦士、ときには冒険家、そして、某0*7(ダ○ルオーセ○ン)以上に優秀な、
「すっぱい、なのよ!」
キャップを深く被り、アーちゃんの部屋から拝借したPersolのサングラスをかければ、完璧なスパイの出来上がりだ。
明石め、貴様の行動すべてを監視し、いずれ白日のもとに晒してやろう。
興奮気味に寮の正門に向かえば、似合っていない爽やかシャツを身に着けた明石を発見した。
なんとも目に付く色合いは、好都合としかいえまい。
「うきゃ、うきゃ、なのよ」
グヒヒヒ、と人の悪い笑みを浮かべたら、さあ尾行開始だ。
壁にピタリと体を押し付け、壁から壁に移動しながら、明石の後をつけていく。
ターゲットは、優秀なスパイであるアキの存在に気付くことなく、なんとものんびりとした足取りでバス停を目指していた。
その行動に、ゼロゼロアキは秘かに安堵の息を吐いた。
バイクを使われたら、さすがに失敗する可能性があったのだ。
バス停には、明石の他にも三人の生徒がいた。
みなバラバラにでかけるようで、特に言葉を交わすでもない。
つまり、明石が今日会う予定の人物は、このなかにはいないということだ。
バスはすぐにやってきた。
順々に乗る人に紛れ、アキもバスに乗車する。
無関係な三人の生徒は、適当にばらけながら座った。
明石はと見れば、一番後ろでふんぞり返っている。
つまりは、一番広い座席を確保したということ。
なんという男だ。そこは、アキのお気に入りの場所ではないか!
ぐぬぬと歯を食いしばり、一番後ろの席の一番端っこに座ることにした。
反対側の端っこには、明石が座っている。
だが大丈夫だ。アキの正体がばれることはない。
キャップにサングラスという完璧な変装を施しているアキに気付くほど、明石は目聡い男ではないはずだ。
「今度はなんだ?」
横から、地を這うほどに低い声が聞こえた、ような気がした。
気がしただけで、実際は聞こえてないのだろう、たぶん。
「なにごっこだ?」
またもや、幻聴か?
いや違う。これは、明石の独り言だ。
なぜなら、明石は真正面を向いたままだし、アキに気付いてるようには見えないから。
こんな場所で一人呟きを漏らすとは、もしかしたらいろいろと悩みがあるのかもしれない。
少し気の毒な気はしたが、だからといってゼロゼロアキは任務遂行の手を緩めたりはしないのだ。
バスがゆっくりと発車する。
街までは30分。正直言って退屈ではあるが、眠るわけにいかなかった。
ふと見れば、明石はそうそうに目を閉じている。
この男はいつもそうだ。
腕を組み、足を組み、全体的に偉そうな雰囲気を出しながら、街までの道のりを寝て過ごす。
そのくせ「どうぞ」の一言がいえないからと、混みそうなときは前もって席を立つ気弱な男なのだ。
つまり何が言いたいかというと、この男の寝てるフリに騙されてはいけないということだ。
安心して気を抜けば、明石の降りる停車場がわからなくなってしまうだろう。
そうだ。ゼロゼロアキは、決して眠ってはならないのだ。
「ぬあ?」
心地良いGに揺すられて、意識が軽く浮上する。
つづいてプシューという異音にたくさんの足音が聞こえてきて、たまにチャリンという金属的な音までがして、とうとう覚醒してしまった。
「……、あ、ああっ」
なんということだ。このゼロゼロアキが、まさかの居眠りだと!?
大急ぎで席を立ち、明石がいるはずの場所を探る。
しかし、そこはもぬけの空になっていた。
というよりも、残ってる乗客はアキ一人ではないか!!
走ってバスを降りれば、よく見る運転手さんがいつもと変わらぬ笑顔で「いってらっしゃい」と送り出してくれた。
まさかアキとわかってのことではないだろうが、
「あい、いくのよ、なの」
と、いつもの返事を返しておく。
目が覚めて慌てて降りた場所は、街で一番賑わっている駅前であり、たくさんのバスが発着する、いわゆるバスターミナルだった。
バスの終着駅ということで、ここですべての乗客が入れ替わる。
明石は、果たしてどこで降りたのだろうか、などと不安になることはない。
サングラスを外して周囲を見渡せば、前方の人ごみの中に青いシャツを発見できたから。
よし、ターゲット補足。
おにょれ明石め、なぜ起こさない!
胸中でだけ怒鳴りつけ、サングラスをかけ再び尾行開始だ。
「すっぱい、なの、のよ」
アキにはいろんな顔がある。
ときには戦士、ときには冒険家、そして、某0*7(ダ○ルオーセ○ン)以上に優秀な、
「すっぱい、なのよ!」
キャップを深く被り、アーちゃんの部屋から拝借したPersolのサングラスをかければ、完璧なスパイの出来上がりだ。
明石め、貴様の行動すべてを監視し、いずれ白日のもとに晒してやろう。
興奮気味に寮の正門に向かえば、似合っていない爽やかシャツを身に着けた明石を発見した。
なんとも目に付く色合いは、好都合としかいえまい。
「うきゃ、うきゃ、なのよ」
グヒヒヒ、と人の悪い笑みを浮かべたら、さあ尾行開始だ。
壁にピタリと体を押し付け、壁から壁に移動しながら、明石の後をつけていく。
ターゲットは、優秀なスパイであるアキの存在に気付くことなく、なんとものんびりとした足取りでバス停を目指していた。
その行動に、ゼロゼロアキは秘かに安堵の息を吐いた。
バイクを使われたら、さすがに失敗する可能性があったのだ。
バス停には、明石の他にも三人の生徒がいた。
みなバラバラにでかけるようで、特に言葉を交わすでもない。
つまり、明石が今日会う予定の人物は、このなかにはいないということだ。
バスはすぐにやってきた。
順々に乗る人に紛れ、アキもバスに乗車する。
無関係な三人の生徒は、適当にばらけながら座った。
明石はと見れば、一番後ろでふんぞり返っている。
つまりは、一番広い座席を確保したということ。
なんという男だ。そこは、アキのお気に入りの場所ではないか!
ぐぬぬと歯を食いしばり、一番後ろの席の一番端っこに座ることにした。
反対側の端っこには、明石が座っている。
だが大丈夫だ。アキの正体がばれることはない。
キャップにサングラスという完璧な変装を施しているアキに気付くほど、明石は目聡い男ではないはずだ。
「今度はなんだ?」
横から、地を這うほどに低い声が聞こえた、ような気がした。
気がしただけで、実際は聞こえてないのだろう、たぶん。
「なにごっこだ?」
またもや、幻聴か?
いや違う。これは、明石の独り言だ。
なぜなら、明石は真正面を向いたままだし、アキに気付いてるようには見えないから。
こんな場所で一人呟きを漏らすとは、もしかしたらいろいろと悩みがあるのかもしれない。
少し気の毒な気はしたが、だからといってゼロゼロアキは任務遂行の手を緩めたりはしないのだ。
バスがゆっくりと発車する。
街までは30分。正直言って退屈ではあるが、眠るわけにいかなかった。
ふと見れば、明石はそうそうに目を閉じている。
この男はいつもそうだ。
腕を組み、足を組み、全体的に偉そうな雰囲気を出しながら、街までの道のりを寝て過ごす。
そのくせ「どうぞ」の一言がいえないからと、混みそうなときは前もって席を立つ気弱な男なのだ。
つまり何が言いたいかというと、この男の寝てるフリに騙されてはいけないということだ。
安心して気を抜けば、明石の降りる停車場がわからなくなってしまうだろう。
そうだ。ゼロゼロアキは、決して眠ってはならないのだ。
「ぬあ?」
心地良いGに揺すられて、意識が軽く浮上する。
つづいてプシューという異音にたくさんの足音が聞こえてきて、たまにチャリンという金属的な音までがして、とうとう覚醒してしまった。
「……、あ、ああっ」
なんということだ。このゼロゼロアキが、まさかの居眠りだと!?
大急ぎで席を立ち、明石がいるはずの場所を探る。
しかし、そこはもぬけの空になっていた。
というよりも、残ってる乗客はアキ一人ではないか!!
走ってバスを降りれば、よく見る運転手さんがいつもと変わらぬ笑顔で「いってらっしゃい」と送り出してくれた。
まさかアキとわかってのことではないだろうが、
「あい、いくのよ、なの」
と、いつもの返事を返しておく。
目が覚めて慌てて降りた場所は、街で一番賑わっている駅前であり、たくさんのバスが発着する、いわゆるバスターミナルだった。
バスの終着駅ということで、ここですべての乗客が入れ替わる。
明石は、果たしてどこで降りたのだろうか、などと不安になることはない。
サングラスを外して周囲を見渡せば、前方の人ごみの中に青いシャツを発見できたから。
よし、ターゲット補足。
おにょれ明石め、なぜ起こさない!
胸中でだけ怒鳴りつけ、サングラスをかけ再び尾行開始だ。
「すっぱい、なの、のよ」