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白儿の下っ端かく語りき

[白儿の下っ端かく語りき3]


唯一の年下が、門音様であったのはいたしかたないことでございます。
しかしながら、僕が万年下っ端なのは、それだけが理由ではございません。
なんとも情けない話、僕が最弱のオニとして生まれついたのも原因の一つなのでございます。

とはいえ、やはりヒトとは違います。
それでも兄さんたちと比べれば、いえ、比べるのもおこがましいほどに非力なのです。
だからといって莫迦にされたことはなく、虐げられてもおりません。
むしろ、あまりにも人離れした力ゆえ、苦しむモノたちを間近にしてたことで、もしかしたら恵まれているのかもしれないと考えるほどには、大切に育てられました。
しかしながら、最弱というのはやはり情けないものです。
ハッと気づけば、パシリのような真似事を自らしておりますしね。
もっとも、これは最年少だからというのが、大きいのでしょうが。

うう、弟が欲しい!
それはいつも願っていることです。
渡辺殿にお会いしたとき、その願いが叶えられたかのような喜びを受けました。
なんといえばいいのでしょうか、あの方は、それはそれは普通の少年でございまして。
あの威圧感のない様や、突飛なことをしでかさない安心感、自然と他人を気遣いながらも自身の楽しみをもキチンと見出すという、本当に普通のヒト。
なにより、僕が年上だと知ったときの彼の態度が、忘れられません。

夏休みに、渡辺殿を駅まで迎え出たのは、僕とアキ様にございます。
ええ、こういうときにも、下っ端根性が出たしだいです。
最初は、僕のことを同年代だと思っていたそうです。
ですが僕がハンドルを握ったことで、少なくとも18歳以上だと察せられたのか、彼の態度は忽然と変化いたしました。
もとから丁寧な言葉でございましたが、なんといいますか、まさに年上に向ける敬語という感じになったということです。
雪客様のお使いになるものとは、かなりの温度差のある敬語に本心から感動いたしました。
それからも、僕を年上扱いしてくださいましたね。あの夏休みは、まさに至福のときでございました。

ちなみに、守人様が守人様となる以前、彼がまだ何も知らない中学生だったとき、同じく夏休みに遊びにこられたことがございます。
一言で申しますと、彼は……くそ生意気でございましたね。
僕の名前を覚える気はさらさらないようで、毎日顔を合わせているというのに、その都度"誰だっけ?"という姿勢で接してくださいました。
当初は、僕の印象が薄すぎるのが原因かと、アロハで過ごしてみたのですが、守人様には関係ないようでした。
ええ、いまだきちんと覚えてもらっておりません。
それにしても、初対面のおりは僕のほうが大きかったというのに、あっという間に追いつかれ、今では見下ろされる立場にあるのは、少し物悲しい気がいたしますね。
ふふ、単なる愚痴です、どうぞお忘れください。

そうそう、渡辺殿といえば、僕は彼の先輩にあたるのですよ。
ええ、そうです。僕は、あの学園の卒業生なのです。
高校を外部受験で受けまして、三年間きちんとお勤めしたしだいです。
その後大学にも行きましたが、残念ながら中退いたしました。
高校は、なかなかに面白いところでしたよ。
同期に、あの土兒鏡呉もおりましたしね。

え、僕の学生時代を聞きたいのですか?
普通に、ごく普通に通っていただけで、特に語るほどのものではございませんが。
それでも構わない?
そうですか、では次回、語ってみたいと思います。

あの、本当にたいしたことはございませんからね。
なんといっても、普通のヒトとして通っておりましたしね。
詰まらなかったと、あとで怒らないでくださいね。
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