アーちゃん■MMO日記
[アーちゃん■MMO日記10]
真夜中はだいたいひとりでボス狩りをしている。
もちろん目当てはレア物。
できるだけ休日前を心掛けてるおかげで、最近の保健室利用率は大幅ダウンだ。
今夜も当然の如く作業に勤しみ、気が付いたら空が明るくなりはじめていた。
しょぼついた目を擦りながらPCの電源をおとし、寝室のドアをそっと開ける。
相も変わらず寝相のよろしい誰かさんが、しっかりとベッドの半分を空けてくれてるから、そのまま倒れるようにして潜り込んだ。
布団の中は程よく暖まっていて、その温もりに触れた途端、急激に意識が遠のくのを感じた。
どうせ明日……いや、今日は休日だ。
好きなだけ寝て、適当に起きればいい。
昼間近に目を覚ました。
隣りはすでにもぬけの殻で、何気に触れたシーツはとうに冷たくなっていた。
平日ならば自分が起きたと同時に、俺までも叩き起こしてくれるが、休日にはそんなことをしてこない。
俺が一度文句を言ったから、それ以来、緊急時以外は起こさないと決めたらしい。
こちらとしては、大助かりだ。
だいたい休日だってのに、いつもと変わらない時間に起床する意味がわからない。
この学園に入る前に、生活態度の乱れ云々ってのを爺さんに注意されたらしいけど、あの野郎と付き合うまでは平気で惰眠を貪ってやがったんだ。
それが……ま、仕方ねぇか。
俺を起こさないだけ、ましだな。
二度寝するかどうか暫し逡巡し、結局パジャマのままリビングに向かった。
無駄に広い学生寮のリビングに人気はなく、ガランと静まり返っている。
いつも通りだから心配はしない。
テーブルには、ラップをかけた朝食が置かれていて、これもいつものこと。
それらをレンジで暖めてる間に、携帯からメールを打っておいた。
食事を終わらせシャワーを浴びたところで、メールの返信が届いていた。
残念、今日は無理だってさ。
即座にメールを削除して、さてさて今日は何をしてすごすかと考える。
アッくんは葛西のところだし、アッキーとアキは買物に行くと言っていた。
それに便乗しようかと思ったところで、時計を見て断念。
とっくに出掛けてしまっている。
暫くPCをボンヤリと眺めてから、なんとなく携帯に指をかけた。
滅多に使用しないメルアドを呼び出して、そのまま素っ気無いメールを送る。
肌身離さず携帯を持ち歩いてでもいるのか、驚くほど短時間で返事がきた。
自分から言い出したことなのに、メールに目を通しているうちに、なんとなくムカついてきた。
こいつに広い部屋ってのは、どうも無意味な気がして仕方ない。
浅く狭い交友範囲で、部屋に招待するほど親しい友人なんていやしないんだから、こんなだだっ広いリビングは必要ないだろ。
とはいえ、一般的な日本人からかなりかけ離れた外見と、それに見合うほどに巨大な体躯の持ち主には、この部屋ですらなんとなく狭く感じられるから、これはこれで正解なのか。
「昭」
「んあ? ああ、飲む飲む」
でっかいソファを後ろにおいやり、床にクッションを置いて座り込んだ。
目の前のテーブルに、自室から持ってきたノートPC3台を並べていく。
すべての電源を入れ、いつものゲームにログインしたとき、静がコーヒーを持ってやってきた。
当たり前の顔をして俺の背後に座り込む静に、特に説教してやろうとは思わなかった。
どうも今日は、そんな気分にならない。
ま、背中の冷えを防ぐには、ちょうどいいしな。
「言っとくけど、邪魔すんなよ」
「うん」
休日でイン人口が多いせいか、PT募集の掲示板はかなり賑わっていた。
いつもなら中レベあたりで参加してるとこだが、今日はメインキャラで最強ボスを狙いにいくことにする。
そんなこと、昨夜もしてたんだけどね……。
ひたすらひとりで城を駆け抜け、昨夜と同じようにボスを倒してから、ゆっくりと戦利品を確認する。
「ちぇっ、なんも出てないでやんの……」
いくら最強キャラとはいえ、ここまで来るのは一苦労だ。
今までの作業が水泡に帰したことで、胸の内は相当の失望感で溢れかえった。
つまり、かなりショックを受けてるってこと。
「辛い…?」
「そりゃー、ハズレばっかなんだから、泣けそうだわな」
腰に回っていた静の右手が、不意に俺の頭に乗せられた。
そのままゆっくりと下におりてきた掌が、俺の両目を覆い隠す。
「昨日もレアは一個だったし、ゴールド(ゲーム内通貨)不足でマジ泣けてくるねー」
ついこの間、つまらないことでアキを怒らせ、大量のガチャを自分で回すはめに陥った。
当然それらは現金だけじゃなく、ゴールドも使って入手したから、おかげで今はスカンピン。
全部、すべてがカラッぽの状態だ。
やる気が著しく低下したから、そのまま後ろに凭れかかって休憩することにした。
離れることなく付いてきた掌に、心の中でヨシヨシと褒めてやる。
最強ゲーマーとはいえ、こんな日もあらぁな。
真夜中はだいたいひとりでボス狩りをしている。
もちろん目当てはレア物。
できるだけ休日前を心掛けてるおかげで、最近の保健室利用率は大幅ダウンだ。
今夜も当然の如く作業に勤しみ、気が付いたら空が明るくなりはじめていた。
しょぼついた目を擦りながらPCの電源をおとし、寝室のドアをそっと開ける。
相も変わらず寝相のよろしい誰かさんが、しっかりとベッドの半分を空けてくれてるから、そのまま倒れるようにして潜り込んだ。
布団の中は程よく暖まっていて、その温もりに触れた途端、急激に意識が遠のくのを感じた。
どうせ明日……いや、今日は休日だ。
好きなだけ寝て、適当に起きればいい。
昼間近に目を覚ました。
隣りはすでにもぬけの殻で、何気に触れたシーツはとうに冷たくなっていた。
平日ならば自分が起きたと同時に、俺までも叩き起こしてくれるが、休日にはそんなことをしてこない。
俺が一度文句を言ったから、それ以来、緊急時以外は起こさないと決めたらしい。
こちらとしては、大助かりだ。
だいたい休日だってのに、いつもと変わらない時間に起床する意味がわからない。
この学園に入る前に、生活態度の乱れ云々ってのを爺さんに注意されたらしいけど、あの野郎と付き合うまでは平気で惰眠を貪ってやがったんだ。
それが……ま、仕方ねぇか。
俺を起こさないだけ、ましだな。
二度寝するかどうか暫し逡巡し、結局パジャマのままリビングに向かった。
無駄に広い学生寮のリビングに人気はなく、ガランと静まり返っている。
いつも通りだから心配はしない。
テーブルには、ラップをかけた朝食が置かれていて、これもいつものこと。
それらをレンジで暖めてる間に、携帯からメールを打っておいた。
食事を終わらせシャワーを浴びたところで、メールの返信が届いていた。
残念、今日は無理だってさ。
即座にメールを削除して、さてさて今日は何をしてすごすかと考える。
アッくんは葛西のところだし、アッキーとアキは買物に行くと言っていた。
それに便乗しようかと思ったところで、時計を見て断念。
とっくに出掛けてしまっている。
暫くPCをボンヤリと眺めてから、なんとなく携帯に指をかけた。
滅多に使用しないメルアドを呼び出して、そのまま素っ気無いメールを送る。
肌身離さず携帯を持ち歩いてでもいるのか、驚くほど短時間で返事がきた。
自分から言い出したことなのに、メールに目を通しているうちに、なんとなくムカついてきた。
こいつに広い部屋ってのは、どうも無意味な気がして仕方ない。
浅く狭い交友範囲で、部屋に招待するほど親しい友人なんていやしないんだから、こんなだだっ広いリビングは必要ないだろ。
とはいえ、一般的な日本人からかなりかけ離れた外見と、それに見合うほどに巨大な体躯の持ち主には、この部屋ですらなんとなく狭く感じられるから、これはこれで正解なのか。
「昭」
「んあ? ああ、飲む飲む」
でっかいソファを後ろにおいやり、床にクッションを置いて座り込んだ。
目の前のテーブルに、自室から持ってきたノートPC3台を並べていく。
すべての電源を入れ、いつものゲームにログインしたとき、静がコーヒーを持ってやってきた。
当たり前の顔をして俺の背後に座り込む静に、特に説教してやろうとは思わなかった。
どうも今日は、そんな気分にならない。
ま、背中の冷えを防ぐには、ちょうどいいしな。
「言っとくけど、邪魔すんなよ」
「うん」
休日でイン人口が多いせいか、PT募集の掲示板はかなり賑わっていた。
いつもなら中レベあたりで参加してるとこだが、今日はメインキャラで最強ボスを狙いにいくことにする。
そんなこと、昨夜もしてたんだけどね……。
ひたすらひとりで城を駆け抜け、昨夜と同じようにボスを倒してから、ゆっくりと戦利品を確認する。
「ちぇっ、なんも出てないでやんの……」
いくら最強キャラとはいえ、ここまで来るのは一苦労だ。
今までの作業が水泡に帰したことで、胸の内は相当の失望感で溢れかえった。
つまり、かなりショックを受けてるってこと。
「辛い…?」
「そりゃー、ハズレばっかなんだから、泣けそうだわな」
腰に回っていた静の右手が、不意に俺の頭に乗せられた。
そのままゆっくりと下におりてきた掌が、俺の両目を覆い隠す。
「昨日もレアは一個だったし、ゴールド(ゲーム内通貨)不足でマジ泣けてくるねー」
ついこの間、つまらないことでアキを怒らせ、大量のガチャを自分で回すはめに陥った。
当然それらは現金だけじゃなく、ゴールドも使って入手したから、おかげで今はスカンピン。
全部、すべてがカラッぽの状態だ。
やる気が著しく低下したから、そのまま後ろに凭れかかって休憩することにした。
離れることなく付いてきた掌に、心の中でヨシヨシと褒めてやる。
最強ゲーマーとはいえ、こんな日もあらぁな。
