アーちゃん■MMO日記
[アーちゃん■MMO日記8-4]
今まで一度も訪ねたことのない部屋に、いきなり押しかけるのも気が引ける。
しかも、それほど親しいわけでもなんでもないんだからな。
駄菓子菓子! ここで諦めるわけには行かないのだ。
なんせ、ガチャは月曜10時からのメンテで販売終了、今日は土曜だからタイムリミットまで今日を入れて3日しかないんだからな。
一旦特別棟に入り、そのまま一階の渡り廊下を進んでいく。
え? どこに向かってるかって? そんなの決まってるでしょ、役員用の棟以外どこに行くっての。
暫く行けば、見えてきました、おおげさなパネル。
目的の部屋番号を入力して、と。
『はいはーい』
うわ、軽っ!
「えっとー、アキラ、アッキー、アキ、アッくんの大親友の高橋君でーす」
『は?』
は? じゃねーっつの、さっさと開けろ!
「だからー、アキラ、アッキー、アキ、アッくんの大親友の高橋君ですよー。イケメン会計様、開けてくんない?」
『え、なんで?』
なんで? じゃねーよ!
「いいか、よく聞け。今4人は最大の危機に直面してるんだ。それを解決できるのはおめーしかいねーの。だから、開・け・ろ」
『き、危機!? マジで!?』
「マジマジ、だからとっとと開けろっての」
ほんの少しトーンを落とせば会計の奴は勝手に焦りだし、すぐに扉を開いてくれた。
よしよし、第一段階完了だ。
「危機って何!? 伊藤に何があったの!?」
「わわわ」
うわっ、うぜぇっ!
会計のアホめ、部屋に到着した瞬間、すんごい勢いで俺に迫ってきやがった。
「ちょちょ、落ち着けって」
「晃は!? チビちゃんは!? ナベちゃんは!?」
ったく、アッくんのこと平凡なんて言ってたやつが、今じゃこれだもんね。
人って変われば変わるものなのね、の見本だ。
とりあえずは、真っ青な顔で俺に詰め寄る会計を引き剥がし、だだっ広いリビングにお邪魔する。
「ちょっと、高橋! 危機ってなによ、早く言えっての!」
なんだよ、茶も出ないのかよ、ここは。
学生寮に必要かどうか甚だ疑問の立派なソファに座ってみても、一向に水すら出てこないとは、サービス精神のない奴だなー。
「高橋! あ、チビちゃんにメールすればいいのか」
おっと、それはまずいぞ。
「おい会計、××屋って店知ってる?」
「は、え? ××屋? どっかで聞いたような……あぁ、和菓子の老舗か」
「そそ、それそれ!」
「じいちゃんが贔屓にしてるけど、それがなに?」
「うっそ! まじで!? さすが地元、俺の判断に間違いはなかった」
「へ?」
「いいか、あいつらを救うためには、お前の力が必要なんだ。だから今から俺が言うとおりのことをしろ」
「お、おう」
普段とは違う俺の雰囲気に、会計は些か緊張気味だ。
ごくりと唾を飲み込んで、俺の言葉を待っている。
「まず、そのじいちゃんとこに連絡して、××屋の○○プリン2個セットをすぐに手配させろ」
「は?」
「それを、秘書でもなんでもいいから、誰かに持たせて、すぐに新幹線に乗せるんだ。いいか、ここで大事なのは、決して宅配にしないってことだ。キチンとクーラーボックスに入れて、のぞみに乗せろ」
「ちょちょちょ、待て待て」
「必要なのはとにかくスピードだ。期限は明日の昼まで、分かった?」
「ちょっと待てっつの! さっぱり意味がわかんねーんだけど」
「なんで分かんないのよ? おめー頭良いんだろーが」
「あのなー、伊藤たちの危機とプリンに、なんの関係があるわけ?」
「関係なんてめっちゃあるっつの! いいか、そのプリンが手に入らなかったら、まずはアキラが栄養失調で倒れるんだ」
「えっ、嘘、マジで!?」
「うんうん、マジマジ。で、アキの血管がブチギレて、おそらくぶっ倒れる」
「なんで、チビちゃんが!?」
「んで、そんな二人を見たアッくんが、心労のあまり睡眠不足に陥り、これまたぶっ倒れるわけだ」
「げっ!」
「だから、おめーは必ずプリンを手に入れないとなんないわけ。それこそ藤村の名前ガンガン使ってでもね。分かったー?」
「わ、かった……あ、でも伊藤は?」
「へ、アッキー?」
「伊藤には何も起こらないってこと?」
しまった、何も考えてなかったぞ。
アッキーが心労で倒れる? ナイナイ。
栄養失調? ムリムリ。
「ア、アッキーは……」
「うんうん、伊藤は?」
「アッキーは……さらに無表情になって、もっと無口になるんだ!」
「げっ、駄目。それ絶対駄目!」
「でしょー。だからね、××屋の○○プリン絶対ゲットするよう、じいちゃんに頼んでね」
「よっしゃ了解した! 俺に任せろ!」
「おっ、頼りになるねー。さすが我が学園の会計様だ」
「それ、明日の昼までにチビちゃんとこ持ってけばいいの?」
「あ、駄目。メルアド教えるから、まずは俺に連絡してちょーだい。それと、このことは絶対に誰にも言わないように」
「なんでよー。俺が用意して持ってけば、チビちゃんたち喜んでくれるっしょ」
馬鹿野郎! てめーを利用したことがアキラたちにばれたら、何言われる分かったもんじゃねーぞ!
「あ、と、これは言いたくなかったんだけどー」
考えろ考えろ、こいつに秘密を守らせる方法を考えるんだ、俺!
「実はさー、アッキーのためなのよねー」
「え、伊藤のため?」
「そそ、まぁ色々あって、アッキーがアキのプリン駄目にしちゃったからさー、なんとかしたいって泣き付いてきたのよねー」
「嘘!? マジで!?」
「うん、マジマジ。でもさー、あのアッキーが俺に泣きついた、なんてことが他にばれたら、あいつ切腹しそうでしょー」
バ会計は、なにやら深く考え込んでいる様子。
頼むから、正気に戻ったりするなよー。
「うん、絶対しそう……」
よっしゃ、キターーーー!www
「だからー、人知れず片付けたいのよね。アッキーは俺の大切な友人だからさ」
「そっかー、お前いいとこあるじゃん」
「でしょー。だから、到着したら絶対俺んとこに連絡するよーに。ほんで、このことは絶対に秘密な」
「うんうん、了解ー。んじゃ、じいちゃんとこ連絡するわ」
「うんうん、お願いねー。あ、絶対に手に入れてくれよ、明日の昼までに」
ちゃんと念を押しとかないとな。
「任せろっての、うちは超お得意様よー。茶会のたびに大量に注文してるしねー」
「そかそか、後は任せた!」
既に携帯を取り出したバ会計をよそに、俺は早々に退室することにした。
結局水すら出なかったが、まぁ目的は達成したことだし、それはそれでいいだろう。
「あれ、でも、なんで晃が栄養失調になんの?」
「じゃー、(バ)会計様! アッキーのためによろしくねー」
「お、おう、任せろ!」
ミッションコンプリート!!
今まで一度も訪ねたことのない部屋に、いきなり押しかけるのも気が引ける。
しかも、それほど親しいわけでもなんでもないんだからな。
駄菓子菓子! ここで諦めるわけには行かないのだ。
なんせ、ガチャは月曜10時からのメンテで販売終了、今日は土曜だからタイムリミットまで今日を入れて3日しかないんだからな。
一旦特別棟に入り、そのまま一階の渡り廊下を進んでいく。
え? どこに向かってるかって? そんなの決まってるでしょ、役員用の棟以外どこに行くっての。
暫く行けば、見えてきました、おおげさなパネル。
目的の部屋番号を入力して、と。
『はいはーい』
うわ、軽っ!
「えっとー、アキラ、アッキー、アキ、アッくんの大親友の高橋君でーす」
『は?』
は? じゃねーっつの、さっさと開けろ!
「だからー、アキラ、アッキー、アキ、アッくんの大親友の高橋君ですよー。イケメン会計様、開けてくんない?」
『え、なんで?』
なんで? じゃねーよ!
「いいか、よく聞け。今4人は最大の危機に直面してるんだ。それを解決できるのはおめーしかいねーの。だから、開・け・ろ」
『き、危機!? マジで!?』
「マジマジ、だからとっとと開けろっての」
ほんの少しトーンを落とせば会計の奴は勝手に焦りだし、すぐに扉を開いてくれた。
よしよし、第一段階完了だ。
「危機って何!? 伊藤に何があったの!?」
「わわわ」
うわっ、うぜぇっ!
会計のアホめ、部屋に到着した瞬間、すんごい勢いで俺に迫ってきやがった。
「ちょちょ、落ち着けって」
「晃は!? チビちゃんは!? ナベちゃんは!?」
ったく、アッくんのこと平凡なんて言ってたやつが、今じゃこれだもんね。
人って変われば変わるものなのね、の見本だ。
とりあえずは、真っ青な顔で俺に詰め寄る会計を引き剥がし、だだっ広いリビングにお邪魔する。
「ちょっと、高橋! 危機ってなによ、早く言えっての!」
なんだよ、茶も出ないのかよ、ここは。
学生寮に必要かどうか甚だ疑問の立派なソファに座ってみても、一向に水すら出てこないとは、サービス精神のない奴だなー。
「高橋! あ、チビちゃんにメールすればいいのか」
おっと、それはまずいぞ。
「おい会計、××屋って店知ってる?」
「は、え? ××屋? どっかで聞いたような……あぁ、和菓子の老舗か」
「そそ、それそれ!」
「じいちゃんが贔屓にしてるけど、それがなに?」
「うっそ! まじで!? さすが地元、俺の判断に間違いはなかった」
「へ?」
「いいか、あいつらを救うためには、お前の力が必要なんだ。だから今から俺が言うとおりのことをしろ」
「お、おう」
普段とは違う俺の雰囲気に、会計は些か緊張気味だ。
ごくりと唾を飲み込んで、俺の言葉を待っている。
「まず、そのじいちゃんとこに連絡して、××屋の○○プリン2個セットをすぐに手配させろ」
「は?」
「それを、秘書でもなんでもいいから、誰かに持たせて、すぐに新幹線に乗せるんだ。いいか、ここで大事なのは、決して宅配にしないってことだ。キチンとクーラーボックスに入れて、のぞみに乗せろ」
「ちょちょちょ、待て待て」
「必要なのはとにかくスピードだ。期限は明日の昼まで、分かった?」
「ちょっと待てっつの! さっぱり意味がわかんねーんだけど」
「なんで分かんないのよ? おめー頭良いんだろーが」
「あのなー、伊藤たちの危機とプリンに、なんの関係があるわけ?」
「関係なんてめっちゃあるっつの! いいか、そのプリンが手に入らなかったら、まずはアキラが栄養失調で倒れるんだ」
「えっ、嘘、マジで!?」
「うんうん、マジマジ。で、アキの血管がブチギレて、おそらくぶっ倒れる」
「なんで、チビちゃんが!?」
「んで、そんな二人を見たアッくんが、心労のあまり睡眠不足に陥り、これまたぶっ倒れるわけだ」
「げっ!」
「だから、おめーは必ずプリンを手に入れないとなんないわけ。それこそ藤村の名前ガンガン使ってでもね。分かったー?」
「わ、かった……あ、でも伊藤は?」
「へ、アッキー?」
「伊藤には何も起こらないってこと?」
しまった、何も考えてなかったぞ。
アッキーが心労で倒れる? ナイナイ。
栄養失調? ムリムリ。
「ア、アッキーは……」
「うんうん、伊藤は?」
「アッキーは……さらに無表情になって、もっと無口になるんだ!」
「げっ、駄目。それ絶対駄目!」
「でしょー。だからね、××屋の○○プリン絶対ゲットするよう、じいちゃんに頼んでね」
「よっしゃ了解した! 俺に任せろ!」
「おっ、頼りになるねー。さすが我が学園の会計様だ」
「それ、明日の昼までにチビちゃんとこ持ってけばいいの?」
「あ、駄目。メルアド教えるから、まずは俺に連絡してちょーだい。それと、このことは絶対に誰にも言わないように」
「なんでよー。俺が用意して持ってけば、チビちゃんたち喜んでくれるっしょ」
馬鹿野郎! てめーを利用したことがアキラたちにばれたら、何言われる分かったもんじゃねーぞ!
「あ、と、これは言いたくなかったんだけどー」
考えろ考えろ、こいつに秘密を守らせる方法を考えるんだ、俺!
「実はさー、アッキーのためなのよねー」
「え、伊藤のため?」
「そそ、まぁ色々あって、アッキーがアキのプリン駄目にしちゃったからさー、なんとかしたいって泣き付いてきたのよねー」
「嘘!? マジで!?」
「うん、マジマジ。でもさー、あのアッキーが俺に泣きついた、なんてことが他にばれたら、あいつ切腹しそうでしょー」
バ会計は、なにやら深く考え込んでいる様子。
頼むから、正気に戻ったりするなよー。
「うん、絶対しそう……」
よっしゃ、キターーーー!www
「だからー、人知れず片付けたいのよね。アッキーは俺の大切な友人だからさ」
「そっかー、お前いいとこあるじゃん」
「でしょー。だから、到着したら絶対俺んとこに連絡するよーに。ほんで、このことは絶対に秘密な」
「うんうん、了解ー。んじゃ、じいちゃんとこ連絡するわ」
「うんうん、お願いねー。あ、絶対に手に入れてくれよ、明日の昼までに」
ちゃんと念を押しとかないとな。
「任せろっての、うちは超お得意様よー。茶会のたびに大量に注文してるしねー」
「そかそか、後は任せた!」
既に携帯を取り出したバ会計をよそに、俺は早々に退室することにした。
結局水すら出なかったが、まぁ目的は達成したことだし、それはそれでいいだろう。
「あれ、でも、なんで晃が栄養失調になんの?」
「じゃー、(バ)会計様! アッキーのためによろしくねー」
「お、おう、任せろ!」
ミッションコンプリート!!