★キラキラ 第一章★
[アキラ■王子様のご帰還です]
「村上くん、どうぞこちらへ」
この庭園へと続く小道で、どうしたらいいのかと右往左往している少年。
村上くんをこちらへと手招きしてあげます。
「村上・・・?」
「ささ、どうぞ、三井先輩、こちらは村上浩太くん。あなたのお嫌いな副会長親衛隊の隊員です」
かなり逡巡してから、こちらへやってきた彼を副会長に紹介します。
さ、昨日約束しましたね、勇気を持って。
「親衛隊・・・」
「彼がなぜ親衛隊に入ったかご存知ですか?」
「そんなこと・・・知りません」
「当然ですね。さ、村上くん、昨日僕にしてくれた話しを副会長さまにも聞かせてあげてください」
「あ、でも・・・」
やはり、かなり気後れしています。
ですが、僕は肩に手を置いて、そっと彼の言葉を促しました。
「・・・僕が、僕が・・・先生に呼ばれて、廊下を走ってるとき、副会長さまに・・・注意されたんです」
「それが・・・それが、どうしたと言うのです?」
「そ、その時、5分や10分遅れても気にしなくていいって、君が転んで怪我をするほうが皆悲しむって、優しく、微笑んで言ってくれたんです。だから・・・」
「そのとき、もし副会長さまが無表情だったらどう思いましたか?」
「あ、きっと怒られてると思って、怖かったと、思います・・・」
「そうですか、ところで他の親衛隊の方は、副会長さまのことをどう見てらっしゃるのでしょう?」
「えっと、誰にでも優しく笑顔で接せられる、素晴らしい方だ・・・と」
「それは、副会長さまが嘘の笑みを浮かべてるからですか?」
「あ、あの嘘って・・・えっと、愛想笑いのことでしょうか?」
「ええ、愛想笑いです。副会長さまはその愛想笑いがお嫌いだそうですが」
「えっと、僕は良くわからないです。でも愛想笑いって当たり前じゃないんですか? それがわかってて皆安心するんじゃないでしょうか?」
「ですね、分かっていても、わざわざあなたは愛想笑いですか、などと聞きませんしね」
「はぁ、普通聞かないと思います」
副会長は疲れたように、テーブルへと向かわれました。
「・・・・・・そうですね、愛想笑いは普通です。それに対して文句を言うなど愚かな行為はしませんね。良く考えれば、私もそうでした・・・」
椅子に座り込む彼は、まるで悪夢から覚めた後のような、憔悴しきった表情をなさっておられます。
「ひょっとして、村上くん・・・君がここの管理をしてくれたのですか・・・」
「あ、はい」
「そうですか・・・ありがとうございます」
「い、いいえっ」
「ここは、私の大切な場所で・・・疲れたときは、ここに来ていました。もちろん役員たちを招待したこともあります。ですが・・・」
「姫宮くんを、ここに連れてきたことはなかった、ということですか」
「ええ、おっしゃる通りです・・・私は無意識にわかっていたのでしょう、無知な子供をここへ招待すれば、どうなってしまうのかを・・・きっと壊されることを・・・」
「あの、あの・・・」
「村上くん、三井先輩、僕とアキ、そしてあなたの分の紅茶を入れてもらっていいですか? 確か温室の棚にあるとおっしゃってましたよね」
「そうですね、ぜひお願いします」
「は、はいっ! 副会長さま」
王子様と言われる彼の、優雅な笑みが復活しました。
頬を真赤にして温室に向かう村上くんの足取りは、とても軽やかです。
「もう私は終わりですね・・・このようなことを仕出かして・・・」
「あなたは高みから滑落したようなもの。それを再び登るのはとても大変な作業だと思います。諦めるならその方が楽でしょう」
「・・・・・・」
「それはあなたのご自由になさればよろしい。ですが・・・」
「ええ、わかっています。渡辺くんにとてもひどい事をしてしまった・・・」
「それだけですか?」
「えっ・・・・・・?」
「あなたは親衛隊をいらない、邪魔だとおっしゃった。ですが、どうでしょう? あなたの笑顔に癒され、あなたを守りたいと思った彼らは、本当に邪魔な存在なのでしょうか? 今後のあなたに不必要なものでしょうか? もちろん、あなたを勝手に持て囃し、過激な行為に出る方もおられます。ですが、そんな方たちもあなたの接し方、扱い方で変わる可能性もあるのです。あなたは人を使う立場になる可能性があります。どうです、この方たちは今のあなたには御せませんか?」
「なるほど、東峰は上手く御していますね。彼にできて私にできないなど、許されません」
「そういうことです。もちろん今後のあなたの行先を決めるのは、あなたご自身ではありませんが・・・」
「ええ、良くわかっています。まずは渡辺くんに詫びなければ、そして罰してもらわないといけませんね」
「あ、あの・・・どうぞ・・・」
「ああ、ありがとうございます。こうやって紅茶を飲むのも久しぶりですよ」
「なの、なのよ」
アキがたっぷりと砂糖を紅茶に入れます。
「あのとき渡辺くんを助けたコですね」
「はい、1-A理の鈴木明といいます。アキと呼んであげてください」
「そうですか、アキくん、渋いのは苦手ですか?」
「なのよ、しろいの、いいのよ」
「アキはかなりの甘党ですから、許してあげてください」
「以前の私なら怒り狂ってましたね。ええ、構いません。好きに飲んでください」
「なの、うーさん、なのよ」
おや、もう名前を付けましたか、副会長はもう心配ないということですね。
それでは僕も、ゆっくり紅茶をいただくことにしましょう。
「村上くん、どうぞこちらへ」
この庭園へと続く小道で、どうしたらいいのかと右往左往している少年。
村上くんをこちらへと手招きしてあげます。
「村上・・・?」
「ささ、どうぞ、三井先輩、こちらは村上浩太くん。あなたのお嫌いな副会長親衛隊の隊員です」
かなり逡巡してから、こちらへやってきた彼を副会長に紹介します。
さ、昨日約束しましたね、勇気を持って。
「親衛隊・・・」
「彼がなぜ親衛隊に入ったかご存知ですか?」
「そんなこと・・・知りません」
「当然ですね。さ、村上くん、昨日僕にしてくれた話しを副会長さまにも聞かせてあげてください」
「あ、でも・・・」
やはり、かなり気後れしています。
ですが、僕は肩に手を置いて、そっと彼の言葉を促しました。
「・・・僕が、僕が・・・先生に呼ばれて、廊下を走ってるとき、副会長さまに・・・注意されたんです」
「それが・・・それが、どうしたと言うのです?」
「そ、その時、5分や10分遅れても気にしなくていいって、君が転んで怪我をするほうが皆悲しむって、優しく、微笑んで言ってくれたんです。だから・・・」
「そのとき、もし副会長さまが無表情だったらどう思いましたか?」
「あ、きっと怒られてると思って、怖かったと、思います・・・」
「そうですか、ところで他の親衛隊の方は、副会長さまのことをどう見てらっしゃるのでしょう?」
「えっと、誰にでも優しく笑顔で接せられる、素晴らしい方だ・・・と」
「それは、副会長さまが嘘の笑みを浮かべてるからですか?」
「あ、あの嘘って・・・えっと、愛想笑いのことでしょうか?」
「ええ、愛想笑いです。副会長さまはその愛想笑いがお嫌いだそうですが」
「えっと、僕は良くわからないです。でも愛想笑いって当たり前じゃないんですか? それがわかってて皆安心するんじゃないでしょうか?」
「ですね、分かっていても、わざわざあなたは愛想笑いですか、などと聞きませんしね」
「はぁ、普通聞かないと思います」
副会長は疲れたように、テーブルへと向かわれました。
「・・・・・・そうですね、愛想笑いは普通です。それに対して文句を言うなど愚かな行為はしませんね。良く考えれば、私もそうでした・・・」
椅子に座り込む彼は、まるで悪夢から覚めた後のような、憔悴しきった表情をなさっておられます。
「ひょっとして、村上くん・・・君がここの管理をしてくれたのですか・・・」
「あ、はい」
「そうですか・・・ありがとうございます」
「い、いいえっ」
「ここは、私の大切な場所で・・・疲れたときは、ここに来ていました。もちろん役員たちを招待したこともあります。ですが・・・」
「姫宮くんを、ここに連れてきたことはなかった、ということですか」
「ええ、おっしゃる通りです・・・私は無意識にわかっていたのでしょう、無知な子供をここへ招待すれば、どうなってしまうのかを・・・きっと壊されることを・・・」
「あの、あの・・・」
「村上くん、三井先輩、僕とアキ、そしてあなたの分の紅茶を入れてもらっていいですか? 確か温室の棚にあるとおっしゃってましたよね」
「そうですね、ぜひお願いします」
「は、はいっ! 副会長さま」
王子様と言われる彼の、優雅な笑みが復活しました。
頬を真赤にして温室に向かう村上くんの足取りは、とても軽やかです。
「もう私は終わりですね・・・このようなことを仕出かして・・・」
「あなたは高みから滑落したようなもの。それを再び登るのはとても大変な作業だと思います。諦めるならその方が楽でしょう」
「・・・・・・」
「それはあなたのご自由になさればよろしい。ですが・・・」
「ええ、わかっています。渡辺くんにとてもひどい事をしてしまった・・・」
「それだけですか?」
「えっ・・・・・・?」
「あなたは親衛隊をいらない、邪魔だとおっしゃった。ですが、どうでしょう? あなたの笑顔に癒され、あなたを守りたいと思った彼らは、本当に邪魔な存在なのでしょうか? 今後のあなたに不必要なものでしょうか? もちろん、あなたを勝手に持て囃し、過激な行為に出る方もおられます。ですが、そんな方たちもあなたの接し方、扱い方で変わる可能性もあるのです。あなたは人を使う立場になる可能性があります。どうです、この方たちは今のあなたには御せませんか?」
「なるほど、東峰は上手く御していますね。彼にできて私にできないなど、許されません」
「そういうことです。もちろん今後のあなたの行先を決めるのは、あなたご自身ではありませんが・・・」
「ええ、良くわかっています。まずは渡辺くんに詫びなければ、そして罰してもらわないといけませんね」
「あ、あの・・・どうぞ・・・」
「ああ、ありがとうございます。こうやって紅茶を飲むのも久しぶりですよ」
「なの、なのよ」
アキがたっぷりと砂糖を紅茶に入れます。
「あのとき渡辺くんを助けたコですね」
「はい、1-A理の鈴木明といいます。アキと呼んであげてください」
「そうですか、アキくん、渋いのは苦手ですか?」
「なのよ、しろいの、いいのよ」
「アキはかなりの甘党ですから、許してあげてください」
「以前の私なら怒り狂ってましたね。ええ、構いません。好きに飲んでください」
「なの、うーさん、なのよ」
おや、もう名前を付けましたか、副会長はもう心配ないということですね。
それでは僕も、ゆっくり紅茶をいただくことにしましょう。
