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★キラキラ 第一章★

[アッくん■僕は自分で打ち勝ったんだ]


怖かった。
彼から直接暴力は受けていないけど、あの切れ長の目で睨みつけられながら脅されたことは、僕の記憶にはっきりと残っているから。



今日、風紀委員室で、会計さま・・・ううん、藤村先輩の謝罪を受けた。
そばには葛西先輩やアキが居てくれたけど、やっぱり少し怖かった。
だけど、葛西先輩が追って処分を言い渡すって言ったあと、アキが藤村先輩の足をぎゅって踏んだんだ。

「チビちゃーん、ないすー♪」

「ぎゅなのよ、なの」

それから僕は藤村先輩と最後には笑って会話をしてた。
不思議。アキ、君は不思議なこだね。



今もまったく同じ展開になっている。
食事が無事終わったのに、またもやアキは、

「ぎゅよ、なのよ、ぎゅ」

なんて言いながら明石くんの足を踏みつけた。でも、明石くんは何も言わない。
さっきからずっと困ったような表情で、戸惑っている。

「いいぞ、鈴木、俺もそれに参加しよう」

葛西先輩まで・・・

「な、風紀、なんでお前にまで」

「明石、お前はそんなこと言える立場なのか?」

先輩思いっきり顔が笑ってる。

「まぁいいんじゃないですか、たまには人に足蹴にされてみなさい」

「って、なんで俺がっ・・・くそっ」

結局床に這いつくばった明石くんを、アーちゃん、アキ、葛西先輩がぐりぐり踏んで

「あああ、ばか、そこやめろ、てめぇ、おぼえてろ」

という展開になっちゃった。
明石くんってすごく怖いイメージがあったけど、アキと戯れてる姿はお父さんみたい・・・
なんか複雑、2人とも同じ学年なのに・・・



「今日はおつかれー」

「はい、おつかれさまです」

「ん」

「あ、えっと、おつかれ・・・」

「なの、なのよ」

明石くんは寝不足だからと、あのあと早めにアキラの部屋に連れてかれた。
葛西先輩は自分の部屋へ。
僕たちはオレンジジュースで乾杯中です。

「なんか、僕、ほんと、いっぱいいっぱい・・・」

「あはは、だよねー」

「なのよー」

「明日は日曜ですから、ゆっくり休めますよ」

「あ、そっか・・・でも、」

「ふふ、もじゃの明日の予定は、きっと明石くん探しになりますよ」

「えっ!?」

「うんうん、今まで自分と一緒に夜を過してた奴が消えるんだからねー」

「あ、でも明石くんだって、今まで外泊とかあっただろうし・・・」

「なんかねー、どこに行くにも、聞かれるんだって」

「ですから、本日は無断外泊というわけです。今頃彼の携帯はメールの嵐でしょうね。電源は落としておくようにいっておきましたが」

「なんか、アキラたちって、ほんとすごいね、あ、変な意味じゃないから・・・」

「はぁ、それは否定も肯定もいたしませんが、アッくんも十分すごいと思います」

「えっ、僕が?」

「会計と笑って話してたってー?」

「あ、それは、だって、普通に話してくれたし」

「怖くはありませんでしたか?」

「ん、と、最初は怖かった。先輩たちもいたから何もされないってわかってても怖かったよ・・・」

「恐怖を感じて当然なのです。あなたは現実に彼らから、その身と精神(こころ)に苦痛を与えられたのですから。人は与えられた痛みを早々忘れません。それは恐怖の記憶となり己を苦しめます。当然です。恐怖とは己を守る防衛手段の1つなのですから」

「防衛・・・?」

「はい、その苦痛を次は避けないといけません。ですから記憶し、あなたに恐怖を与えます。自ずからそれを避けるために。会計が来ると聞いて、あなたの記憶は恐怖の信号を送った。その場からあなたが逃げるように、それが身を守るため必要なことだと“覚えて”いるからです。しかし、あなたはそこに留まった。なぜでしょう?」

「それは、アキがいてくれたから、アキが会えって言ってくれないと、きっと・・・」

きっと、僕は・・・逃げ出した。

「あなたの精神(こころ)は常に模索していました。膨大な記憶から恐怖に打ち勝つ方法を探していたのです。そして、あなたの精神(こころ)は記憶を視、判断しました。今ならこの恐怖に勝てると、だからアキの言葉を聴けと」

ああ、僕は今、唐突に思い至った。
どうして僕は何度もアキを見ていたの?
どうして僕はアキに尋ねたの?
そこにアキがいたから? 違うそんなことじゃないんだ、きっと。

アキなら、会えって言うことを、僕はわかっていたんだ。

僕は、僕が勝つ方法を、自分で見つけていた。
恐怖を克服できるのは、今、だと知っていた。
そして、精神(こころ)は判断する、ここにとどまり闘えと。

だけど、記憶は2つのサインを僕に送る。

――恐怖と、打ち勝つ手段。

この2つに縛られて動けなくった精神(こころ)、だったら、どうすればいい?

それが、アキ、アキなら僕に闘えと言ってくれる。
恐怖に勝つことはもうできる、だからアキに尋ねろ、と・・・恐怖に逆らえと、僕の精神(こころ)は判断し、僕に訴えかけていたんだ。

そして、僕は精神(こころ)の命じるままに、その場に留まった。
己はもう恐怖に勝てる方法を、記憶に持っているのだから・・・と。

「僕は、僕自身で、打ち勝った・・・?」

「そうです、打ち勝ったのはアッくん自身の力です。アキがいたから? 風紀がいたから? 違います。それは打ち勝つ手段の1つにすぎない。恐怖に打ち勝つものを手に入れたのは記憶、見つけたのは、アッくんの精神(こころ)です」

「アッくん、ごいのよ、のよ」

「僕は、す、ごい?」

「アッくんはー、勝てたんだから、すごいっしょ」

「僕は、でも・・・」

「恐怖の記憶が消えることはありません。それは、防衛のためのものですからね。ですが、その記憶を取り出す必要のないアッくんを、僕たちはいつか見てみたいのです」

ああ、今日こそ泣きたくないのに、どうしてまた、こんなに涙が出てくるんだろう。
また、アッキーに頭を撫でられた。
アキにも撫でられた。

恥ずかしいな・・・恥ずかしい・・・だけど、この恥ずかしさは、きっと本当には恥ずかしくないことなんだと、僕の精神(こころ)は知っている。

なぜ、僕はあんなにアキを求めたのか・・・うん、良くわかるよ。
このたった2日の記憶から、精神(こころ)が見つけ、判断をくだした。
僕の精神(こころ)は、勝つために記憶の中からアキを見つけたんだ。
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