★キラキラ 仕舞章番外★
[水野レミ■独り]
切っ掛けは、本当につまらないことだった。
二人同時に産まれた僕たち。
最初にママと呼んだのは僕の方だったらしい。
父も母もとても喜び、どんな場所でも誰が相手でも、いつでもその話をしていた。
幼稚園では、たまに先生が僕のことを褒めてくれた。
理由なんていろいろあるだろうし、ソラのことだって褒めていたと思う。
学校に通うようになると、たまたま成績の良かった僕を、これまた偶然家に居合わせた両親が褒めてくれた。
そんな、つまらないことの積み重ねだった。
ある日、羨ましそうに僕を見るソラに気がついた。
最初はなぜか分からなかった。
だけど、年負うごとにその意味を理解し、僕の中にはソラへの罪悪感が芽生えていた。
「僕たちは双子なんだから、ソラは、レミなんだよ」
子供の単純な思考で、口にした。
「じゃあ、レミが褒められたら、僕も褒められてるってことだね。僕たちは二人で一人なんだ」
ソラが滅多に見せない笑みを浮かべたことが、素直に嬉しかった。
だから、深く考えることをせずに、頷いた。
そうして、僕たちの人生は、ただお互いだけを見詰めるためのものと化したんだ。
ソラはレミだと、二人は一人だと、そう信じて生きていくだけなら良かった。
きっと、誰にも迷惑はかからない。
だけど、そんな変化の無い世界は退屈で、だから、いろんな遊びに興じるようになった、もちろん二人一緒に。
最初は、僕たちの容姿に惑わされた人間を、からかったりする程度。
どっちが好きなの? なんて、そっくりな姿にそっくりな声で訊いてやる。
同一人物の僕たちを見分けることなど、当然できずに相手はたじろぐ、それが愉しかった。
人は一度覚えた悦びをなかなか忘れない、次はもっととねだってしまう。
そうして僕たちの愉しみはどんどんとエスカレートした。
瑠希愛に初めて会ったとき、愉快なことが起こるかも、と期待した。
僕たちを見分けた瑠希愛。
だけどそれは、単なる野生の勘のようなものだと、すぐに僕たちは気がついた。
ソラがソラに見えたわけじゃない。
二人が二人だと区別できたわけじゃない。
まったく同じものに、別の呼び名を付与しただけにすぎないんだ。
瑠希愛は、ソラとレミと呼びながら、二人から同時に齎される返事を待つ。
レミとソラと呼びながら、二人がまったく同じ行動をとるものと、信じ込んでいる。
それは、二人が同一人物だと分かっていての反応に、他ならない。
瑠希愛が平凡を連れてきたとき、また愉しみを見つけたと、純粋に喜んだ。
次は、あれを壊してみようと、笑い合った。
副会長に藤村、野添や明石に、そして一条までもがそれに参加したときは、自分たちの行為が正当化された気がした。
やっぱり皆も退屈していたらしい。
そして、気がついたら二人だけ、いや、一人ぼっちになっていた。
あの暗闇で、僕は真実ひとりになった。
生まれたときから孤独だったのだと、思い知らされた。
そんなことに気付かせた、あのモノたちを憎んだ。
そうして憎む行為に飽いたとき、周囲を視る冷静さを手に入れた。
二人だけでは破綻を来す、僕たちの小さな世界。
他者から同一人物だと認められねば、すぐに壊れる二人の関係。
お互い以外はいらないと、そうして生きてきたくせに、そこに他人がいなければままならない僕たちは、なんと愚かで滑稽な存在なのだろう。
ソラと二人、どこかに閉じこもっていれば良かったんだ。
誰にも関心などみせず、二人の世界に籠っていれば良かったのだ。
そうすれば、天も僕たちを赦してくれていただろう。
そう、これは天罰。
普段は存在すら曖昧な、だけどひとたび激昂すれば、災いを齎すモノたち。
それをなんと呼ぶのか、僕はもう知っている。
だから、憎むなど、また愚かなことだ。
与えられた罰を、粛々とこの身に受けるだけ。
そうして、前に進むのだ。
塞いでいた眼をしっかと開けて、僕は僕のためだけに、これから先を生きていく。
水野レミという、たったひとつの存在として――
切っ掛けは、本当につまらないことだった。
二人同時に産まれた僕たち。
最初にママと呼んだのは僕の方だったらしい。
父も母もとても喜び、どんな場所でも誰が相手でも、いつでもその話をしていた。
幼稚園では、たまに先生が僕のことを褒めてくれた。
理由なんていろいろあるだろうし、ソラのことだって褒めていたと思う。
学校に通うようになると、たまたま成績の良かった僕を、これまた偶然家に居合わせた両親が褒めてくれた。
そんな、つまらないことの積み重ねだった。
ある日、羨ましそうに僕を見るソラに気がついた。
最初はなぜか分からなかった。
だけど、年負うごとにその意味を理解し、僕の中にはソラへの罪悪感が芽生えていた。
「僕たちは双子なんだから、ソラは、レミなんだよ」
子供の単純な思考で、口にした。
「じゃあ、レミが褒められたら、僕も褒められてるってことだね。僕たちは二人で一人なんだ」
ソラが滅多に見せない笑みを浮かべたことが、素直に嬉しかった。
だから、深く考えることをせずに、頷いた。
そうして、僕たちの人生は、ただお互いだけを見詰めるためのものと化したんだ。
ソラはレミだと、二人は一人だと、そう信じて生きていくだけなら良かった。
きっと、誰にも迷惑はかからない。
だけど、そんな変化の無い世界は退屈で、だから、いろんな遊びに興じるようになった、もちろん二人一緒に。
最初は、僕たちの容姿に惑わされた人間を、からかったりする程度。
どっちが好きなの? なんて、そっくりな姿にそっくりな声で訊いてやる。
同一人物の僕たちを見分けることなど、当然できずに相手はたじろぐ、それが愉しかった。
人は一度覚えた悦びをなかなか忘れない、次はもっととねだってしまう。
そうして僕たちの愉しみはどんどんとエスカレートした。
瑠希愛に初めて会ったとき、愉快なことが起こるかも、と期待した。
僕たちを見分けた瑠希愛。
だけどそれは、単なる野生の勘のようなものだと、すぐに僕たちは気がついた。
ソラがソラに見えたわけじゃない。
二人が二人だと区別できたわけじゃない。
まったく同じものに、別の呼び名を付与しただけにすぎないんだ。
瑠希愛は、ソラとレミと呼びながら、二人から同時に齎される返事を待つ。
レミとソラと呼びながら、二人がまったく同じ行動をとるものと、信じ込んでいる。
それは、二人が同一人物だと分かっていての反応に、他ならない。
瑠希愛が平凡を連れてきたとき、また愉しみを見つけたと、純粋に喜んだ。
次は、あれを壊してみようと、笑い合った。
副会長に藤村、野添や明石に、そして一条までもがそれに参加したときは、自分たちの行為が正当化された気がした。
やっぱり皆も退屈していたらしい。
そして、気がついたら二人だけ、いや、一人ぼっちになっていた。
あの暗闇で、僕は真実ひとりになった。
生まれたときから孤独だったのだと、思い知らされた。
そんなことに気付かせた、あのモノたちを憎んだ。
そうして憎む行為に飽いたとき、周囲を視る冷静さを手に入れた。
二人だけでは破綻を来す、僕たちの小さな世界。
他者から同一人物だと認められねば、すぐに壊れる二人の関係。
お互い以外はいらないと、そうして生きてきたくせに、そこに他人がいなければままならない僕たちは、なんと愚かで滑稽な存在なのだろう。
ソラと二人、どこかに閉じこもっていれば良かったんだ。
誰にも関心などみせず、二人の世界に籠っていれば良かったのだ。
そうすれば、天も僕たちを赦してくれていただろう。
そう、これは天罰。
普段は存在すら曖昧な、だけどひとたび激昂すれば、災いを齎すモノたち。
それをなんと呼ぶのか、僕はもう知っている。
だから、憎むなど、また愚かなことだ。
与えられた罰を、粛々とこの身に受けるだけ。
そうして、前に進むのだ。
塞いでいた眼をしっかと開けて、僕は僕のためだけに、これから先を生きていく。
水野レミという、たったひとつの存在として――
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