★キラキラ 仕舞章番外★
[瀬緒■鏡の間1]
僕の一番古い記憶は、母の胎内。
暖かくて、フワフワしていて、その中に浮かびながら、夢見るようにすごしていた。
だけど、たまに激しく、揺り起こされる。
柔らかい壁の向こうから響く声――悲鳴のように嘆き叫ぶ女、あれは、誰だったのだろう。
ある日のこと、頭を押し潰される痛みに襲われ、苦しみ悶え・・・・・・そして眩いほどの光の洪水に襲われた。
目を開けることはできなかった。
だから、誰がいたのかは分からない。
それは、きっと、己の誕生のときであったのだろう。
7歳になった頃、初めて鷺視本家に連れて行ってもらえた。
従弟の瑠希愛は年の割りに幼すぎて、置いていくべきと言われたが、僕から離れないので仕方なく伴った。
そして、瑠希愛の初恋話を聞かされることになった。
「アキラって子がいたんだっ! 俺、あの子と結婚するんだっ!」
最初は、おませなやつだ、などと思っていた。
そして、少し戸惑った。
6歳の子供が語るには、あまりに生々しく感じたからだ。
「絶対にアキラと結婚するんだっ! だからアキラは俺のモノなんだっ!」
次第に興奮し、語る姿に、怖気が走ったのを覚えている。
止まらぬ語りに、僕は唐突に思い至った。
瑠希愛は、彼は鷲杜の血を引いているのではないかと。
彼が見たのは、最も血の濃い、鷺視の直系ではないかと。
瀬緒家の長子、そして、鷺視を支えるべきモノとして、僕はそのことを知っている。
表も裏も、そしてかのモノたちのことも、全部。
だから、気がついた。
瑠希愛は鷲の血を引いている――
僕の中学受験の日が近づいた頃、瑠希愛はやはり瀬緒家ですごしていた。
姫宮の伯父の家ではなく、瀬緒家にばかり入り浸る瑠希愛。
それは、僕の側を離れたくないからなのだと、僕は知っている。
この頃には、瑠希愛への疑いは消えていた。
彼は鷲ではないと、確信していた。
なぜなら、誰にも関心など向けないからだ。
父初め、弟妹や親戚筋の者たち、とにかく大勢の鷺視の血族がいるというのに、誰にも興味を示さない。
ただ、僕にだけは、いつまでも寄り添ってはくるが。
そんなある日、大人たちの噂話で、直系の少女が亡くなっていたことを知った。
僅か7歳。
瑠希愛の初恋は無残にも散ってしまった。
幼い記憶――彼はもうそれを覚えてはいないだろうことを、少し哀れに思った。
そして、僅か7歳で亡くなった少女への哀悼の意を、心の中で表した。
瑠希愛に昔の話を聞いてみた。
少しでも覚えていれば、なんらかの慰めになるかもしれないと、思ったから。
彼は、6歳の頃、本家へ行ったことすら覚えていなかった。
例しに、瑠希愛には好きな人はいるのかと、聞いてみた。
驚愕した。
彼は事も無げに言い切ったのだ。
「俺は、あの子と結婚するんだっ!」
あの子って、誰なんだ?
「知らないっ!」
どこで会ったんだ?
「知らないっ!」
幼い記憶を失って、それでもそうだと断言する瑠希愛に、僕は恐怖に似た感情を抱いた。
虚ろになった初恋の面影を追ってるだけにしては、瑠希愛の様子はあまりにも狂気じみて見えたから。
僕の一番古い記憶は、母の胎内。
暖かくて、フワフワしていて、その中に浮かびながら、夢見るようにすごしていた。
だけど、たまに激しく、揺り起こされる。
柔らかい壁の向こうから響く声――悲鳴のように嘆き叫ぶ女、あれは、誰だったのだろう。
ある日のこと、頭を押し潰される痛みに襲われ、苦しみ悶え・・・・・・そして眩いほどの光の洪水に襲われた。
目を開けることはできなかった。
だから、誰がいたのかは分からない。
それは、きっと、己の誕生のときであったのだろう。
7歳になった頃、初めて鷺視本家に連れて行ってもらえた。
従弟の瑠希愛は年の割りに幼すぎて、置いていくべきと言われたが、僕から離れないので仕方なく伴った。
そして、瑠希愛の初恋話を聞かされることになった。
「アキラって子がいたんだっ! 俺、あの子と結婚するんだっ!」
最初は、おませなやつだ、などと思っていた。
そして、少し戸惑った。
6歳の子供が語るには、あまりに生々しく感じたからだ。
「絶対にアキラと結婚するんだっ! だからアキラは俺のモノなんだっ!」
次第に興奮し、語る姿に、怖気が走ったのを覚えている。
止まらぬ語りに、僕は唐突に思い至った。
瑠希愛は、彼は鷲杜の血を引いているのではないかと。
彼が見たのは、最も血の濃い、鷺視の直系ではないかと。
瀬緒家の長子、そして、鷺視を支えるべきモノとして、僕はそのことを知っている。
表も裏も、そしてかのモノたちのことも、全部。
だから、気がついた。
瑠希愛は鷲の血を引いている――
僕の中学受験の日が近づいた頃、瑠希愛はやはり瀬緒家ですごしていた。
姫宮の伯父の家ではなく、瀬緒家にばかり入り浸る瑠希愛。
それは、僕の側を離れたくないからなのだと、僕は知っている。
この頃には、瑠希愛への疑いは消えていた。
彼は鷲ではないと、確信していた。
なぜなら、誰にも関心など向けないからだ。
父初め、弟妹や親戚筋の者たち、とにかく大勢の鷺視の血族がいるというのに、誰にも興味を示さない。
ただ、僕にだけは、いつまでも寄り添ってはくるが。
そんなある日、大人たちの噂話で、直系の少女が亡くなっていたことを知った。
僅か7歳。
瑠希愛の初恋は無残にも散ってしまった。
幼い記憶――彼はもうそれを覚えてはいないだろうことを、少し哀れに思った。
そして、僅か7歳で亡くなった少女への哀悼の意を、心の中で表した。
瑠希愛に昔の話を聞いてみた。
少しでも覚えていれば、なんらかの慰めになるかもしれないと、思ったから。
彼は、6歳の頃、本家へ行ったことすら覚えていなかった。
例しに、瑠希愛には好きな人はいるのかと、聞いてみた。
驚愕した。
彼は事も無げに言い切ったのだ。
「俺は、あの子と結婚するんだっ!」
あの子って、誰なんだ?
「知らないっ!」
どこで会ったんだ?
「知らないっ!」
幼い記憶を失って、それでもそうだと断言する瑠希愛に、僕は恐怖に似た感情を抱いた。
虚ろになった初恋の面影を追ってるだけにしては、瑠希愛の様子はあまりにも狂気じみて見えたから。
