★キラキラ 仕舞章番外★
[白儿門音■最後]
「眠るが如き往生を」
「心得た」
守人が去った室内に残されたのは、安らかな寝息をたてる貪塊と俺のみ。
疲れて眠る身体には、はっきりそれと分かるほどの痕跡が残っている。
それを見ても、不思議と汚れているとは感じなかった。
さすがに、裸のままでは寒そうだと、用意されていた白い寝衣を、その裸体にかける。
その瞬間、貪塊の呼吸が乱れた。
あぁ、どうやら目覚めるようだ。
「死、神……」
うっすらと開いた青瞳が、正面から俺を捉えた。
「俺、死ぬの? アキラ抱いたから……死ぬ、の?」
まともな言葉を発したことに、さすがの俺も些か驚いた。
どうやら、望みのモノを手にしたことで、少し理性が戻ってきたようだ。
すぐにまた、狂気に支配されるだろうが……。
「アキラ、俺のモノになった? なったよな? 俺のこと視てなかったけど、俺、ちゃんとアキラのこと抱いてたよなっ!?」
やや興奮気味ではあるが、身体は寝台に沈んだままで、飛び掛ってくるような気配はない。
だから、少しだけ、ほんの少しだけ、様子をみることにした。
「アキラずっと目隠しして、全然違う名前呼んでた! だけど、俺のモノだったよな!? ちゃんと俺のモノになったよな!」
これは、俺に対しての問いかけなのだろうか。
だとしても、残念ながら、その答えは持ち合わせてはいない。
「それは……貴様が好きに判断しろ」
返事などする気はなかったが、答えを待ち望むかのようにこちらを見詰める貪塊、いや姫宮に、思わずそう返してしまった。
「だったら俺のモノだ! 俺のなんだ!」
「貴様がそう思っているなら、そうだ」
再度口を開けば、姫宮は安心したように、笑顔を見せた。
それは、一片の邪気も感じさせない、幼い子供のような笑み。
「だったら、いいぞ。……死んでやってもいいぞ!」
その物言いに、少し口元が緩む。
どうやらこの性格は、死んでも治らないという類のものらしい。
「30分」
「え?」
「30分ほど寝ていろ。その間、夢でも見てるがいい」
「夢……おう! さっきの続きを見る! その間に終わるか!?」
場の雰囲気とはまったくそぐわない姫宮の明るい声に、できるだけ無表情を心掛け、ゆっくりと頷いてやる。
寝室に置かれた棚から、常備されている香を取り出す。
奈落や比良坂で焚いている物と同じく、これも同胞の手によって調香されている特別な香だ。
火を点し、香炉の中に置けば、あっという間に甘い香りが寝室内に拡がった。
「すんげぇ、良い匂い」
姫宮はすぐにウトウトとしだした。
普通の状態であれば、俺たちのようなモノには効果はないが、同胞とはいえ、その概念が希薄な姫宮には効いてくれたらしい。
ならば、すぐに眠りに誘われ、夢を見ることになるだろう。
「なぁ、死神、俺、アキラの記憶に残るかな? ちゃんと、覚えてて……くれるかな……」
姫宮の青瞳は閉じられ、意識は既に朦朧としているようだ。
「アキラ……最後、呼んで、くれた。……瑠希愛って、呼んで…くれ……た……」
完全に眠りに落ちた姫宮の身体に、掛けていただけの寝衣を着付けていく。
そういえば、雪客は、一度たりとて姫宮の名を口にしたことはない。
ならば姫宮が最後に言っていたのは、渡辺彬のことなのだろうか、それとも、記憶が混在していただけなのか。
今となってはもう分からない。
帯を結び終え、穏やかな寝息をたてる姫宮の傍に立ち、時間が過ぎるのをただ待つことにする。
今現在視ているであろう夢が、やつの望んだものであればいいのだが。
「眠るが如き往生を」
「心得た」
守人が去った室内に残されたのは、安らかな寝息をたてる貪塊と俺のみ。
疲れて眠る身体には、はっきりそれと分かるほどの痕跡が残っている。
それを見ても、不思議と汚れているとは感じなかった。
さすがに、裸のままでは寒そうだと、用意されていた白い寝衣を、その裸体にかける。
その瞬間、貪塊の呼吸が乱れた。
あぁ、どうやら目覚めるようだ。
「死、神……」
うっすらと開いた青瞳が、正面から俺を捉えた。
「俺、死ぬの? アキラ抱いたから……死ぬ、の?」
まともな言葉を発したことに、さすがの俺も些か驚いた。
どうやら、望みのモノを手にしたことで、少し理性が戻ってきたようだ。
すぐにまた、狂気に支配されるだろうが……。
「アキラ、俺のモノになった? なったよな? 俺のこと視てなかったけど、俺、ちゃんとアキラのこと抱いてたよなっ!?」
やや興奮気味ではあるが、身体は寝台に沈んだままで、飛び掛ってくるような気配はない。
だから、少しだけ、ほんの少しだけ、様子をみることにした。
「アキラずっと目隠しして、全然違う名前呼んでた! だけど、俺のモノだったよな!? ちゃんと俺のモノになったよな!」
これは、俺に対しての問いかけなのだろうか。
だとしても、残念ながら、その答えは持ち合わせてはいない。
「それは……貴様が好きに判断しろ」
返事などする気はなかったが、答えを待ち望むかのようにこちらを見詰める貪塊、いや姫宮に、思わずそう返してしまった。
「だったら俺のモノだ! 俺のなんだ!」
「貴様がそう思っているなら、そうだ」
再度口を開けば、姫宮は安心したように、笑顔を見せた。
それは、一片の邪気も感じさせない、幼い子供のような笑み。
「だったら、いいぞ。……死んでやってもいいぞ!」
その物言いに、少し口元が緩む。
どうやらこの性格は、死んでも治らないという類のものらしい。
「30分」
「え?」
「30分ほど寝ていろ。その間、夢でも見てるがいい」
「夢……おう! さっきの続きを見る! その間に終わるか!?」
場の雰囲気とはまったくそぐわない姫宮の明るい声に、できるだけ無表情を心掛け、ゆっくりと頷いてやる。
寝室に置かれた棚から、常備されている香を取り出す。
奈落や比良坂で焚いている物と同じく、これも同胞の手によって調香されている特別な香だ。
火を点し、香炉の中に置けば、あっという間に甘い香りが寝室内に拡がった。
「すんげぇ、良い匂い」
姫宮はすぐにウトウトとしだした。
普通の状態であれば、俺たちのようなモノには効果はないが、同胞とはいえ、その概念が希薄な姫宮には効いてくれたらしい。
ならば、すぐに眠りに誘われ、夢を見ることになるだろう。
「なぁ、死神、俺、アキラの記憶に残るかな? ちゃんと、覚えてて……くれるかな……」
姫宮の青瞳は閉じられ、意識は既に朦朧としているようだ。
「アキラ……最後、呼んで、くれた。……瑠希愛って、呼んで…くれ……た……」
完全に眠りに落ちた姫宮の身体に、掛けていただけの寝衣を着付けていく。
そういえば、雪客は、一度たりとて姫宮の名を口にしたことはない。
ならば姫宮が最後に言っていたのは、渡辺彬のことなのだろうか、それとも、記憶が混在していただけなのか。
今となってはもう分からない。
帯を結び終え、穏やかな寝息をたてる姫宮の傍に立ち、時間が過ぎるのをただ待つことにする。
今現在視ているであろう夢が、やつの望んだものであればいいのだが。
