★キラキラ 第二仕舞章★
[アッくん■悲劇]
「守人、貪塊の説明を渡辺彬にしてやれ」
「御意。渡辺彬、俺がお前の疑問に答えてやる。貪塊とは何か、それがお前の疑問だろ」
僕は守人の言うとおりだと、うんうんと首を大きく縦に振った。
「貪塊とはむさぼる、かたまり、と書く。字の如く、正に貪るモノだ。かつて我らが同胞に鷲杜(わしもり)という家があった。雪客に全てを奉げる継埜とはある意味真逆の家。その鷲杜のモノは鷺視の血に惹かれ、己が手にと強く望む。鷲が鷺を狙うように、その身を常に狙っているモノだ。そしてその鷲の血が色濃く出たモノから稀に貪塊が生じた。この貪塊、必ず雪客に恋焦がれる習性があった。つまり、鷲杜の穢れた血の結集が貪塊」
正直、よく、わからなかった。
「渡辺彬、発言を許す、好きに問うがよい」
雪客の許しがでたら、いきなり体が軽くなった。
あれほど僕を苦しめた圧迫感も警鐘も全てが消えている。
なんとも、あっけない。
「あ、あー、あー、あ、声出る」
嬉しくて、ちょっと発生練習をしたら、かつてのキラキラ会の仲間たちが僕に微笑みかけてくれた。
すごく、嬉しい・・・
「えっと、姫宮くんがその貪塊なの、ですか?」
「ああ、そうだ」
あ、答えるのは守人なんだ。
「貪塊は絶対に雪客を好きになるってことだよね」
「そうだ」
「えっと、だったら、えっと・・・」
どういうことなんだろ、そもそもどうしてそんな話しになったんだっけ?
「ふふ、アーちゃん、あなたは説明が下手すぎるのです。アッくんが混乱してますよ」
「え、俺? 俺のせいにすんなっ」
「あなた以外の誰の責任だとおっしゃるのですか」
「違うでしょ、俺はちゃんと説明したの、理解できないアッくんの頭が悪いんでしょ」
いきなり高座で揉め出した2人――今、アッくんって、アーちゃんって言った!
「いいいい、今っ、今、言ったよね」
ひどいこともサラッと言われた気がしたけど。
「奈落ごっこは一旦お終いです。ここからは当事者であるアッくんにキチンと説明しなければ」
「だよねー、でないとまた変な顔してボーっとするからねー」
「へ、変な顔・・・失礼だよっ!」
ボーってなんだよ、考えてるんだよ。
「長老方もそなたらも、落ち着きなさい」
未だ貪塊に動揺していた人たちは、アキラに静かに諭されて、一気に静まり返った。
「なぜ、瀬緒咲夜は己が雪客だと思い込んだか、今はこの話しをしているんですよ」
「あ、そうだったね、うん、わかった」
「貪塊が欲するは雪客、まずいつから姫宮は貪塊たり得たのか、から話します。これはほぼ僕の推測なので、間違っていれば、瀬緒さんあなたが訂正してください」
「え、ああ、わかった」
アキラたちの変貌に、自分の立場も忘れて、呆気にとられた表情で答える瀬緒。
「まず、貪塊、これは今後姫宮と称します。この姫宮、幼いときに両親を亡くし、伯父に引き取られました。瀬緒家とは元々親戚同士で、かなり深い付き合いもあり、姫宮はほとんどを瀬緒家で過していた。そして従兄にあたる瀬緒咲夜に随分懐いていました。そんなある年の正月、瀬緒家は咲夜と姫宮を連れ、鷺視本家に訪れた、そして姫宮にとっての悲劇が起きます」
「ひ、姫宮くんが悲劇なのっ!?」
「ええ、ある意味そうです。なぜなら僕はその日、奥院と呼ばれる場所から抜け出して、親族たちが集っていた屋敷へと遊びに行ってしまったからです。しかし僕は大勢の人間の声に驚き、奥の部屋に隠れてしまいました。隠れて、縁側に座り庭を見ていたのです。そして同じとき姫宮も大人たちの付き合いに飽き、屋敷内を散策していた。体の小ささをいかして、本来なら許されない場所まで入ってきた。そして、縁側にいる僕を見た、のでしょう。僕は姫宮が忍んでいたことも知らず、姿も見ていません。しかし、僕が抜け出したことはすぐに知れ、紅というモノが僕を探しにきました。ここでアッくんにとっての悲劇が起こります」
「え、次、僕っ!?」
「はい。その時、紅は僕にこう言ったのです。アキラさま、こんなところで何をしていらっしゃるのですか、と」
「えと、それがどうしたの?」
「ふふ、そしてその言葉は姫宮も聞いていた」
「あ、ま、まさか・・・」
「そうです、そのまさかです。ちなみに家の家法で僕は7歳まで女の子として育てられました。この事件のとき、僕は6歳です。正月ということで、なんとも派手な真赤な振袖に、髪を結うのは嫌いなので、そのまま腰まである髪を垂らしていました」
「ぷっ――」
え、誰・・・キョロキョロとあたりを見回していたら、それが会長だとすぐにわかった。
だって、隠しもせず、堂々と笑ってるんだもん。
「雅人、失礼ですよっ!」
「まぁ、あんたが振袖着てたとか言われたらねー」
「む、僕は着たくて着てたわけではありません。紅、いえ、あなたのお母様が着せたのですよっ!」
「はは、すんませーん」
ええええ、そうなんだ・・・えっと、じゃぁ、アーちゃんのお母さんはアキラの家に仕えてたってことだよね。
「さて、ここまではいいですね。そしてこの時姫宮は、貪塊と成り雪客であった僕に恋焦がれてしまったのです。しかし彼にとって6歳の記憶など新たな記憶に紛れ薄れていくもの、その当時の記憶は彼から抜け落ちてしまいました。しかしその身を流れる鷲の血は、決して忘れることなく覚えていた。咲夜、お前はこの6歳のときの話しを姫宮から聞いたのですね」
「あ、ああ、そうだ、本家から戻ったら、縁側で見たという女の子の話しをずっとしていた。名前はアキラで、絶対に結婚すると語った。僕は奥院に最も血の濃い鷺視の直系が居ることを、大人たちの話しから知っていたんだ。だから、その直系が奥院から出てきたと思った」
「なるほど、そしてあなたは姫宮が鷲のモノではないかと考えた」
「そうだ、最も濃い鷺の血に強く引かれたのだと思った。だけど、それは勘違いだとすぐに気付いた。あいつの周りには他にも大勢の鷺がいるのに、特に追い求めもしなかったんだ。離れようとすれば追いすがってくるけど、側にいればさほど興味を示さない。だから僕は、あいつが鷲だという考えは、すぐに捨てた。・・・・・・だけど、あいつが学園に入った頃に、それも間違いだったのでは、と考え始めたんだ。あいつは最初の日から渡辺彬の話しばかりをしていた。アキラ、アキラとそればかりだった。その時に思い出したんだ、6歳の頃のあいつを・・・。普通なら覚えてもいない記憶に、そこまで執着するはずはないんだ」
「そして、夏季休暇を迎える前に、姫宮を一旦回収した」
「ああ、一度あいつの話しをじっくり聞かなければと思った。電話では聞いていたけど、常に彬、彬と渡辺彬のことばかりで、しかも彼が離れると落ち込み、彼が傷つけられていたと知ったら激怒し、気付かなかった己を責めたてた。そんなの今までのあいつには一度もなかったから・・・・・・」
「周囲から愛されるだけの存在でしたからね、自分から側に居たがった相手などいなかったでしょう」
「ああ、しかもあいつはこう言ったんだ。彬は俺のだと、昔から決まっていると・・・覚えてもいないくせに、そう断言したんだ。だからこれはひょっとして、貪塊なんじゃないかと・・・」
「貪塊ならば、雪客のみを生涯求める。いくら鷺が居ようと興味もない」
「そうだ、だから僕は渡辺彬はあのとき縁側にいた子供で、ひょっとして雪客ではないのかと考えた。そしてそれを確かめるために僕も転校した。相変わらずあれは渡辺彬を求め、どうやれば自分の側にいてくれるかに思い悩んでいた。そして、渡辺彬の周囲には彼を守るかのような人物たち。だから僕は、僕は・・・」
「アッくん、こういうことだったのです。あなたは僕に間違われてしまっていた。消えた記憶で血に残った執着だけの姫宮はアキラという名前と、その面影、失礼とは存じますが、地味さも平凡さも似たり寄ったりですからね、僕たち、それらに惹かれてアッくんに歪んだ執着を見せてしまったのです。ここまでがアッくんの悲劇です」
「僕の悲劇・・・それは、アキラと思われた・・・こと・・・」
「守人、貪塊の説明を渡辺彬にしてやれ」
「御意。渡辺彬、俺がお前の疑問に答えてやる。貪塊とは何か、それがお前の疑問だろ」
僕は守人の言うとおりだと、うんうんと首を大きく縦に振った。
「貪塊とはむさぼる、かたまり、と書く。字の如く、正に貪るモノだ。かつて我らが同胞に鷲杜(わしもり)という家があった。雪客に全てを奉げる継埜とはある意味真逆の家。その鷲杜のモノは鷺視の血に惹かれ、己が手にと強く望む。鷲が鷺を狙うように、その身を常に狙っているモノだ。そしてその鷲の血が色濃く出たモノから稀に貪塊が生じた。この貪塊、必ず雪客に恋焦がれる習性があった。つまり、鷲杜の穢れた血の結集が貪塊」
正直、よく、わからなかった。
「渡辺彬、発言を許す、好きに問うがよい」
雪客の許しがでたら、いきなり体が軽くなった。
あれほど僕を苦しめた圧迫感も警鐘も全てが消えている。
なんとも、あっけない。
「あ、あー、あー、あ、声出る」
嬉しくて、ちょっと発生練習をしたら、かつてのキラキラ会の仲間たちが僕に微笑みかけてくれた。
すごく、嬉しい・・・
「えっと、姫宮くんがその貪塊なの、ですか?」
「ああ、そうだ」
あ、答えるのは守人なんだ。
「貪塊は絶対に雪客を好きになるってことだよね」
「そうだ」
「えっと、だったら、えっと・・・」
どういうことなんだろ、そもそもどうしてそんな話しになったんだっけ?
「ふふ、アーちゃん、あなたは説明が下手すぎるのです。アッくんが混乱してますよ」
「え、俺? 俺のせいにすんなっ」
「あなた以外の誰の責任だとおっしゃるのですか」
「違うでしょ、俺はちゃんと説明したの、理解できないアッくんの頭が悪いんでしょ」
いきなり高座で揉め出した2人――今、アッくんって、アーちゃんって言った!
「いいいい、今っ、今、言ったよね」
ひどいこともサラッと言われた気がしたけど。
「奈落ごっこは一旦お終いです。ここからは当事者であるアッくんにキチンと説明しなければ」
「だよねー、でないとまた変な顔してボーっとするからねー」
「へ、変な顔・・・失礼だよっ!」
ボーってなんだよ、考えてるんだよ。
「長老方もそなたらも、落ち着きなさい」
未だ貪塊に動揺していた人たちは、アキラに静かに諭されて、一気に静まり返った。
「なぜ、瀬緒咲夜は己が雪客だと思い込んだか、今はこの話しをしているんですよ」
「あ、そうだったね、うん、わかった」
「貪塊が欲するは雪客、まずいつから姫宮は貪塊たり得たのか、から話します。これはほぼ僕の推測なので、間違っていれば、瀬緒さんあなたが訂正してください」
「え、ああ、わかった」
アキラたちの変貌に、自分の立場も忘れて、呆気にとられた表情で答える瀬緒。
「まず、貪塊、これは今後姫宮と称します。この姫宮、幼いときに両親を亡くし、伯父に引き取られました。瀬緒家とは元々親戚同士で、かなり深い付き合いもあり、姫宮はほとんどを瀬緒家で過していた。そして従兄にあたる瀬緒咲夜に随分懐いていました。そんなある年の正月、瀬緒家は咲夜と姫宮を連れ、鷺視本家に訪れた、そして姫宮にとっての悲劇が起きます」
「ひ、姫宮くんが悲劇なのっ!?」
「ええ、ある意味そうです。なぜなら僕はその日、奥院と呼ばれる場所から抜け出して、親族たちが集っていた屋敷へと遊びに行ってしまったからです。しかし僕は大勢の人間の声に驚き、奥の部屋に隠れてしまいました。隠れて、縁側に座り庭を見ていたのです。そして同じとき姫宮も大人たちの付き合いに飽き、屋敷内を散策していた。体の小ささをいかして、本来なら許されない場所まで入ってきた。そして、縁側にいる僕を見た、のでしょう。僕は姫宮が忍んでいたことも知らず、姿も見ていません。しかし、僕が抜け出したことはすぐに知れ、紅というモノが僕を探しにきました。ここでアッくんにとっての悲劇が起こります」
「え、次、僕っ!?」
「はい。その時、紅は僕にこう言ったのです。アキラさま、こんなところで何をしていらっしゃるのですか、と」
「えと、それがどうしたの?」
「ふふ、そしてその言葉は姫宮も聞いていた」
「あ、ま、まさか・・・」
「そうです、そのまさかです。ちなみに家の家法で僕は7歳まで女の子として育てられました。この事件のとき、僕は6歳です。正月ということで、なんとも派手な真赤な振袖に、髪を結うのは嫌いなので、そのまま腰まである髪を垂らしていました」
「ぷっ――」
え、誰・・・キョロキョロとあたりを見回していたら、それが会長だとすぐにわかった。
だって、隠しもせず、堂々と笑ってるんだもん。
「雅人、失礼ですよっ!」
「まぁ、あんたが振袖着てたとか言われたらねー」
「む、僕は着たくて着てたわけではありません。紅、いえ、あなたのお母様が着せたのですよっ!」
「はは、すんませーん」
ええええ、そうなんだ・・・えっと、じゃぁ、アーちゃんのお母さんはアキラの家に仕えてたってことだよね。
「さて、ここまではいいですね。そしてこの時姫宮は、貪塊と成り雪客であった僕に恋焦がれてしまったのです。しかし彼にとって6歳の記憶など新たな記憶に紛れ薄れていくもの、その当時の記憶は彼から抜け落ちてしまいました。しかしその身を流れる鷲の血は、決して忘れることなく覚えていた。咲夜、お前はこの6歳のときの話しを姫宮から聞いたのですね」
「あ、ああ、そうだ、本家から戻ったら、縁側で見たという女の子の話しをずっとしていた。名前はアキラで、絶対に結婚すると語った。僕は奥院に最も血の濃い鷺視の直系が居ることを、大人たちの話しから知っていたんだ。だから、その直系が奥院から出てきたと思った」
「なるほど、そしてあなたは姫宮が鷲のモノではないかと考えた」
「そうだ、最も濃い鷺の血に強く引かれたのだと思った。だけど、それは勘違いだとすぐに気付いた。あいつの周りには他にも大勢の鷺がいるのに、特に追い求めもしなかったんだ。離れようとすれば追いすがってくるけど、側にいればさほど興味を示さない。だから僕は、あいつが鷲だという考えは、すぐに捨てた。・・・・・・だけど、あいつが学園に入った頃に、それも間違いだったのでは、と考え始めたんだ。あいつは最初の日から渡辺彬の話しばかりをしていた。アキラ、アキラとそればかりだった。その時に思い出したんだ、6歳の頃のあいつを・・・。普通なら覚えてもいない記憶に、そこまで執着するはずはないんだ」
「そして、夏季休暇を迎える前に、姫宮を一旦回収した」
「ああ、一度あいつの話しをじっくり聞かなければと思った。電話では聞いていたけど、常に彬、彬と渡辺彬のことばかりで、しかも彼が離れると落ち込み、彼が傷つけられていたと知ったら激怒し、気付かなかった己を責めたてた。そんなの今までのあいつには一度もなかったから・・・・・・」
「周囲から愛されるだけの存在でしたからね、自分から側に居たがった相手などいなかったでしょう」
「ああ、しかもあいつはこう言ったんだ。彬は俺のだと、昔から決まっていると・・・覚えてもいないくせに、そう断言したんだ。だからこれはひょっとして、貪塊なんじゃないかと・・・」
「貪塊ならば、雪客のみを生涯求める。いくら鷺が居ようと興味もない」
「そうだ、だから僕は渡辺彬はあのとき縁側にいた子供で、ひょっとして雪客ではないのかと考えた。そしてそれを確かめるために僕も転校した。相変わらずあれは渡辺彬を求め、どうやれば自分の側にいてくれるかに思い悩んでいた。そして、渡辺彬の周囲には彼を守るかのような人物たち。だから僕は、僕は・・・」
「アッくん、こういうことだったのです。あなたは僕に間違われてしまっていた。消えた記憶で血に残った執着だけの姫宮はアキラという名前と、その面影、失礼とは存じますが、地味さも平凡さも似たり寄ったりですからね、僕たち、それらに惹かれてアッくんに歪んだ執着を見せてしまったのです。ここまでがアッくんの悲劇です」
「僕の悲劇・・・それは、アキラと思われた・・・こと・・・」
