★キラキラ 第二章番外★
[藤村■満足男]
体育祭が無事に終了したことで、生徒会会計である藤村の肩の荷は、幾分軽くなった。
この後待っている大きな行事は、卒業式くらいだろう。
もちろん小さな仕事は山ほどある。
それでも折をみては、空き地へ行ける程の余裕ができた。
たまに足を運んでいるこの空き地。
これといって目的があるわけではない。
昔ならセフレとムフフをしていた時間を、健康的で有意義にすごしているだけだ。
「ねー、いっつもここでなにやってんのー?」
晃に潔く振られた翌日、落ち込む藤村がたまたま見つけたこの空き地。
椅子もなにもない場所。
地面に直に座りこみ、独り言のように繰り出し続ける言葉に、返事が返ってくることはほとんどない。
「晃の怪我、大丈夫かなー?」
体育祭を見事な転倒で盛り上げてくれたかつての想い人は、その後姿が見えなくなった。
応援団長である会長が席を外したせいで、副団長の藤村はかなり忙しく、晃が消えたことに気付いたのは、かなり後になってから。
同じ組に属していた軽い男に、サボって寮に戻ったのだと教えられた。
一応メール――やっと教えてもらえた――はしてみたが、やはり心配は心配である。
「問題ない」
珍しく返事をしてくれた伊藤は、藤村の横で胡坐をかきまだ瞑目したまま。
文化祭の翌日に、偶然辿りついたこの空き地で彼を見つけた。
それから何度か、この場所で顔を合わせている。
いつも同じ姿勢で座っている男は、毎回不機嫌そうな表情をして、会話などほとんどしてくれない。
しかし、邪険にされることもなく、こうやって横にいることを、許してくれてはいる。
(案外追い払うのが面倒くさいだけ・・・かも・・・)
その想像はほぼ当たっているのだろう。
しかし、場所を変えることもせず、常に同じ空き地に居る伊藤。
藤村がやって来ても、鬱陶しそうにするだけで、文句を言われたこともない。
ならば、拒絶されてはいないのだと思うことにした。
「T-110はー、やっぱ武道とかしてる人なわけー?」
体1つ分をあけ隣に座る相手に視線を送ってみた。
これ以上近づくと、危険だということを身をもって知っている。
この男はなんとも不思議な技を使い、藤村の手に傷を残さず痛みだけを与えたのだから。
その正体は、おそらく気というものだろう。
漫画で蓄えた豊富な知識によると、武を極めた人間ならそれも可能なはずだ。
だから、こいつは武道家。
それが藤村の結論であった。
「・・・・・・」
「あ、今溜息吐いたー」
伊藤はいまだ瞳を閉じたままだが、その眉間にはかなり皺が寄っている。
これはいつものこと、だから藤村は一向に気にしない。
「でも、伊藤の拳って、潰れてないよなー」
膝に置かれた両手をしげしげ眺めてみるが、その手は普通。
本当に、普通なのだ。
指が太いわけでもなく、骨ばってもいない。
手の甲をじっくり見ても、やはり目立つ凹凸はなく、筋張っているわけでもない。
全体の大きさは、藤村よりもかなり小さめ。
つまり、彼の身の丈にあった極々普通の拳にしか見えない。
だいたい体つきからして、藤村の持つ武道家のイメージとは異なる。
「・・・・・・」
(あ、笑った・・・)
微かにしか聞こえないそれ。
彼の表情を確認すれば、既にその瞳は開いていた。
そして、藤村を見て愉快げに口角を上げている。
会話とは言えない会話を何度かしてきたが、伊藤の笑いのツボがどこなのか、さっぱり分からない。
普段は無表情に近い伊藤。
それが崩れるのは、概ね不快感を表すとき。
だけど稀にこうやって笑うこともある。
今回はなぜか拳でウケてくれたようだ。
笑顔とまではいかないが、その表情を引き出したのが己なのだと、そう思うだけで十分満足感を得ることができた。
体育祭が無事に終了したことで、生徒会会計である藤村の肩の荷は、幾分軽くなった。
この後待っている大きな行事は、卒業式くらいだろう。
もちろん小さな仕事は山ほどある。
それでも折をみては、空き地へ行ける程の余裕ができた。
たまに足を運んでいるこの空き地。
これといって目的があるわけではない。
昔ならセフレとムフフをしていた時間を、健康的で有意義にすごしているだけだ。
「ねー、いっつもここでなにやってんのー?」
晃に潔く振られた翌日、落ち込む藤村がたまたま見つけたこの空き地。
椅子もなにもない場所。
地面に直に座りこみ、独り言のように繰り出し続ける言葉に、返事が返ってくることはほとんどない。
「晃の怪我、大丈夫かなー?」
体育祭を見事な転倒で盛り上げてくれたかつての想い人は、その後姿が見えなくなった。
応援団長である会長が席を外したせいで、副団長の藤村はかなり忙しく、晃が消えたことに気付いたのは、かなり後になってから。
同じ組に属していた軽い男に、サボって寮に戻ったのだと教えられた。
一応メール――やっと教えてもらえた――はしてみたが、やはり心配は心配である。
「問題ない」
珍しく返事をしてくれた伊藤は、藤村の横で胡坐をかきまだ瞑目したまま。
文化祭の翌日に、偶然辿りついたこの空き地で彼を見つけた。
それから何度か、この場所で顔を合わせている。
いつも同じ姿勢で座っている男は、毎回不機嫌そうな表情をして、会話などほとんどしてくれない。
しかし、邪険にされることもなく、こうやって横にいることを、許してくれてはいる。
(案外追い払うのが面倒くさいだけ・・・かも・・・)
その想像はほぼ当たっているのだろう。
しかし、場所を変えることもせず、常に同じ空き地に居る伊藤。
藤村がやって来ても、鬱陶しそうにするだけで、文句を言われたこともない。
ならば、拒絶されてはいないのだと思うことにした。
「T-110はー、やっぱ武道とかしてる人なわけー?」
体1つ分をあけ隣に座る相手に視線を送ってみた。
これ以上近づくと、危険だということを身をもって知っている。
この男はなんとも不思議な技を使い、藤村の手に傷を残さず痛みだけを与えたのだから。
その正体は、おそらく気というものだろう。
漫画で蓄えた豊富な知識によると、武を極めた人間ならそれも可能なはずだ。
だから、こいつは武道家。
それが藤村の結論であった。
「・・・・・・」
「あ、今溜息吐いたー」
伊藤はいまだ瞳を閉じたままだが、その眉間にはかなり皺が寄っている。
これはいつものこと、だから藤村は一向に気にしない。
「でも、伊藤の拳って、潰れてないよなー」
膝に置かれた両手をしげしげ眺めてみるが、その手は普通。
本当に、普通なのだ。
指が太いわけでもなく、骨ばってもいない。
手の甲をじっくり見ても、やはり目立つ凹凸はなく、筋張っているわけでもない。
全体の大きさは、藤村よりもかなり小さめ。
つまり、彼の身の丈にあった極々普通の拳にしか見えない。
だいたい体つきからして、藤村の持つ武道家のイメージとは異なる。
「・・・・・・」
(あ、笑った・・・)
微かにしか聞こえないそれ。
彼の表情を確認すれば、既にその瞳は開いていた。
そして、藤村を見て愉快げに口角を上げている。
会話とは言えない会話を何度かしてきたが、伊藤の笑いのツボがどこなのか、さっぱり分からない。
普段は無表情に近い伊藤。
それが崩れるのは、概ね不快感を表すとき。
だけど稀にこうやって笑うこともある。
今回はなぜか拳でウケてくれたようだ。
笑顔とまではいかないが、その表情を引き出したのが己なのだと、そう思うだけで十分満足感を得ることができた。
