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『過去』
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——その日は、暴走した異能を鎮める依頼だった。
黒く、大蛇の様な形の靄。
「還りなさい。或るべきところへ」
大蛇が人型へと変わる。
黒から白へ、
そして光と共に空へ。
「蛇の異能ではなかったのだな」
「はい。元は人型の異能です。
我を忘れ、感情に引き摺られ、姿が変わってしまった」
いつもと同じ声
だが、いつもより呼吸が浅い。
「福沢さん。すみま…せ、」
崩れるように膝をつく彼女。
血の気の引いていく顔。
数回現場を共にしたが、ここまで疲弊した姿を目にしたことはなかった。
事後処理を行う軍警、
特務課の人間、
誰も彼女を見ない。
「…大丈夫、です」
福沢は短く息を吐く。
「手を貸そう。休んだ方がいい」
「——姿を変えてしまう程強い感情を持つ異能を鎮めるのは、少し…力を必要とします」
多少顔色が戻ったところで、彼女は話し始めた。
「今までに遭遇したことは」
「……何度か」
「あの様に動けなくなるのは、危険では」
「福地さんがいましたから」
なら問題なかったのだろう。
そう考え、ふと気付く。
異能の分離は稀だ。
面倒事がどれ程のものか諮りかねるが、
源一郎の能力は高い。
両立が困難になるとは思えない。
では、
問題は、きな臭さの方…?