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『出会い』
空欄は『如月』になります
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細かな雨粒が、石畳を鈍く濡らしている。
その中央に
白い靄。
“それ“は、主の墓へ伏せるように居た。
威嚇もしない。
吠えもしない。
ただ、そこにいる。
「……継承、を」
背後で男が声を震わせた。
「兄の異能なんです。
血縁なら、可能なんでしょう?!」
彼女の瞳が、ほんの少し見開かれる。
「兄は優秀な異能力者だった。
それに、この異能も失えば家は――」
「貴方は」
言葉を遮る。
「それを、“兄”として見ていますか?」
「――それとも、“力“として?」
男の顔が歪む。
怒りなのか、
羞恥なのか。
「……何が分かる」
戦慄く声。
「残された側の気持ちが、お前なんかに」
白い靄は動かない。
「この異能は……」
静かな声が雨へ溶ける。
「持ち主の元に、還ることを望んでいます」
「…っ、ふざけるな!!」
男の手が伸びる。
それを阻むように、福沢が身を挟んだ。
「邪魔をするな。退け!」
「――申し訳ないが、それはできない」
低く落ち着いた声。
その圧に、
男は手を降ろすしかなかった。
「もう、行きなさい」
その声音は命令ではない。
長い役目を終えた誰かへの
労わりにも似た声。
白い靄が犬の姿へと変わり、
墓石に身を寄せた。
――まるで、別れを告げるかのように。
崩れていく光。
残された男だけが、
声もなく立ち尽くしていた。