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『出会い』
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「今日は、福地さんではないのですね」
「源一郎…福地は別の案件でしばらく外れる」
渡された名刺
「福沢、諭吉さん。
分かりました。よろしくお願いします」
――――――
目に見えぬ何かが、市街地を破壊しているとの通報が入ったのが数時間前。
その目に見えぬモノの制圧、及び討伐の任。
軍警は包囲網を。
情報統率は特務課が。
張り詰める空気の中で、
彼女だけは静寂に包まれていた。
黒い靄が建物の壁面を裂く。
咆哮。
硝子の砕ける音。
あれが、異能、だったもの。
剥き出しの殺気が福沢の肌を刺す。
黒い靄はもはや“能力“ですらなかった。
重く、黒い、耐え難い圧。
――これは、感情の塊だ。
「……もう、大丈夫だから」
福沢が無意識に足を引いた、
その瞬間だった。
荒れ狂っていた靄が、動きを止める。
それは、まるで、
声を理解したようだった。
「還りなさい。或るべき所に」
靄は黒い獣だった。
そっと、撫でられたところから輪郭が消える。
それは、
光の粒子となって崩れ、
次々と空へと昇っていく。
全てが空に消えると、
彼女はそっと目を伏せた。
――弔うように。
討伐ではない。
制圧でもない。
これは――。
「葬送、か」
誰に聞かせるでもなく落ちた言葉。
「還しただけです。
置いていかれてしまったものを」
穏やかな声
その笑みは、
資料の、熱のない顔とは違っていた。