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『依頼』
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「咲衣は、大学受験するそうです」
福沢の前に湯呑みが置かれる。
「教育学科のある大学…みたい。
姉弟で、教師を目指すんだとか」
「――そうか」
彼女の殺人については、
国家安寧のための非合法組織の殲滅。
超法規的措置の対象となった。
「『留める』異能の方は、特務課に入ったみたいです」
「それは、何よりだ」
「それで、貴殿はどうする」
「私ですか?――私は、特に…
今までと変わりない、かと」
解けて、残されてしまった異能がいたら、
或るべきところへ還す。
「だが、特務課とも色々あったのだろう」
「そう、ですね。
異能の継承と国力の維持については、これからも話し合っていくしかないです」
それに、祖父の『留め』の異能…
この先、自分に顕現する可能性を捨てることはできない。
特高課も危惧しなければならないだろう。
「軍警による護衛、任が解かれたようだが…」
「福地さんは、私が独り占めしていい立場の方ではないですから」
笑顔が少し曇る。
福沢が袖から名刺を取り出し、机上に置いた。
「要人警護。所謂、用心棒のようなことをしている」
「……?名刺なら以前にも」
「これは、国家の警護の任としてではなく、
福沢諭吉、個人としての名刺だ」
「困っていることがあるなら、頼って構わん」
その顔は穏やかで、
少しだけ口元が綻んでいた。
彼女は少し驚き、
そして、小さく笑った。
「では福沢諭吉さん。――依頼、します」
この先も、
隣に―――。
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