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「行き着くところ」

自分の為ではなく誰かの為にしか身を使うことのできないこの身体に少し嫌気がさしていた

珍しく一人ぼっちを満喫しつつ大学の小さな喫茶店で少し遅れたお昼を腹に収めながら
ガラス越しに晴れた空を見上げる

台風がまた近づいているようで雲の動きが早く感じる忙しく動く雲を見ているだけでまるで風に吹かれているかのような心地よさを感じた
先週の雨で少し靴の匂いが鼻を突く家に帰って洗濯機に放り込むか否かを考えながら今日の授業の内容を想像する

出席方法が中途半端にハイテク化してしまったのでとてもめんどくさいのだ
故授業は出るが出席は出さない
もっとも今日はその授業すらすっぽかし空を眺めているわけだが

「今日は…どうするかなぁ…」
サークルの学祭の為の書類を明日までに提出しなければならない、ぼんやりとそんなことを考えながらふと手もとに口紅がついているのに気づいた
無意識に口元に手をやっていたのか指先には可愛らしいピンクが所々ついていた

唇の色が薄くなってしまっている事を確認し、こそこそと紅を引き直した

最近ロクに眠れていないので顔色が化物のように悪いのだ
血色を良く見せるため少々厚化粧気味になっているかもしれない

いつまでも喫茶店に居座るわけにもいかないので他に行く場所を考え始めた 
(どこにいこう?)
近いところならパソコンルーム?
それとも、遅れて授業?
部室は…いや、ないな

静かなところで、
誰にも邪魔されないところ…

図書館下にあったカフェも今年の春に潰れてしまったし…
図書館に行くなら漫画用具がほしいところだ

ぼんやりとしていても仕方ない
私は荷物を纏め席を立つ
道具がないのが癪だが図書館へ行こうお金を下ろしてノートでも買えばネタぐらい作れる
そんなことを考えながら足を喫茶店の出口へと向けた

ガラスごしに太陽光を浴びながら廊下を進む
温かい光を肩に受けながら本屋に寄り道をした
こじんまりとしているが私と本屋の趣味が合うのか気になるものはだいたい揃っている
小説のコーナーをうろうろしていると父親が好きだった作者の名前が目に止まった
こんなところに…
私はすっと棚に手を伸ばし懐かしさを感じながら一冊手に取りパラパラとめくった
これ難しくて読めなかったんだよね

読んだのは昔小さい頃父親の好きなものを知りたくて読んでいたのだ
今ではなんとない文章だが昔はよくわからなかった

一冊では飽き足らず他の棚にも視線を飛ばすとこれまた気になる本が
チューホフのかもめとオスカー・ワイルドのサロメ
「さすが、芸術系に特化した大学…」

この2つは演劇でよく用いられる
中身はほぼ台本のような本だ
私は2つを見比べ購入の有無を悩んだ
「どうしよ、」
数分悩んだ末私はかもめを手に取り小説と共にレジに持ち運んだ

忙しい日々が続く中
私はついにオーバーヒートした
柔らかいベットに身を預ける
温度と体温の恐ろしいほどのすれ違いに少し笑いがこみ上げた
珍しくぐったりとしているのに気づいたのか
彼が私にのそのそと近づいてきた
ぴとぴとと腕や額を触り体温を確かめる

温度のあがったスマホみたいだ、と
彼はふざけながら言った
普段なら絶対しない空元気を使い私はにへらと笑った

頭ぽーっとする
彼はいつの間に作ったのかうどんを机の上にのせて早く食べろと促した
正直食欲なんてものは皆無だったが彼が随分と急き立てるので食べないわけにもいかず

うどんを口に運んだ


ツルンっ…

「おいしい」
よく考えたら今日は何も食べてなかった
うどんが身体にしみこむ

うどんを食べ終え私は薬を買いに行こうと決めた
明日は大きなイベントがある
正直熱だけでも下がってもらわないと
とてもじゃないがイベントは進められない

「私薬買いに行ってくる」
「えっ、俺も行こうか?」
「いいよ、ゆっくりしてて」

彼に無理やり防寒着を着せられ私は一人おぼつかない足取りでコンビニへと向かった

フラフラして視界が霞む
眼鏡をしてるのにまるで世界が揺れてるようだ
外してもつけてても変わらない眼鏡を取り私はコンビニへと近づいていく

青になった信号機
私はしっかりと確認し横断歩道に足をかけた
左から左折車が来たが
歩行者優先だ流石に轢いたりはしないだろう
そんなことを考えながらぽやーっとした頭で横断歩道を渡り切ると彼が見たことない速さで走ってきた

肩を上下させて私の前で息を整える
「轢かれるかと、思った」
どうやら私が思っていたより左折車はスピードが出ていたようで私に突っ込もうとしていたらしい
「怖かったぁあ…」
愛おしそうに私の手を握りしめポケットに入れた

「ごめん」
「なんでお前が謝るんだよ」

一人で受ける講義
あれから学祭も終わりなんとなく落ち着いた時期
何かしなくては行けないことがあるにはあるのだがそれとなく時間に任せている

あと10分ほどで講義が始まるが人はほぼ集まっていない
目の前の女の人のスマホを少し覗き込むと
某刀の漫画を読みあさっていた

後ろにドカドカと平均値以下の顔の女と呼べるのかも怪しい女が座りこんでゆく
メイクもしてないであろう顔アイロンを当てて真っ直ぐにすればマシになるはずの髪
コンタクトを入れずただつけただけの眼鏡 

正直私も少し前まで彼女達と変わらない生活をしていたのであまり言える立場ではないが
折角文字に興しているので訴えたい

(いや、これは典型的醜悪だ)

そんな中学生まででしか通用しない格好で、この学校に来る?普通?!?!いや、似合うと思っているのか???

私も今日はなかなかにふわふわして似合うのか心配な服を着ているが

あれはやばい
私でもわかる
服に着せられてるとかじゃなくて
服を着ることを諦めてるファッションセンス

頭を抱える、、、
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