一年生を三回やりました
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リドル・ローズハートは苛立っていた。
主に自分の寮の生徒たちについてだ。
法律を破る者が多すぎる。まだ入学式からわずかな時間しか経っていないから、覚えられていない一年生は本当に、本当に少しだけ甘めに見ているものの、二年生以上の者たちすら、法律を破る生徒が多い。
崇高な女王の法律を破るだなんて、ハーツラビュルしての誇りも自覚も無いにもほどがある。
気持ちを落ち着けようと、リドルは図書館に入って課題をすることにした。
静かな図書館は学ぶときや心を落ち着かせたいときにとても最適な場所である。
人の少ない図書館に、一人の先客がいた。
リドルの見たことのない生徒だったので、恐らく一年生か三年生だろう。
その生徒はイグニハイド寮の生徒であったが、意外な本を読んでいるのが見えた。
「ハートの女王の法律に興味があるのかい?」
生徒が読んでいたのは、ハートの女王が定めた法律の全集であった。
図書館にもハートの女王の法律について書かれている本は沢山ある。
だが他寮の生徒がそれを読んでいるのを見るのはリドルも初めてである。
自分が尊敬するハートの女王について勉強をしている生徒に、リドルは興味を持った。
「うーん、まぁそんな感じ。魔法史の勉強していたら、今ちょうどハートの女王の時代をやっていてね。彼女が定めた法律を見れば、当時に国民の生活とかも想像しやすいかと思って読んでみてる」
「それはいい観点かもしれないね。それで、法律を調べてみて何かわかったかい?」
ただ法律を覚えるというわけでもなく、そこから時代背景を学ぶのだという生徒にリドルは好感を抱く。
「そうだなぁ、当時は歯医者がそんなに発達してなかったのかなって思った。」
「……歯医者かい?」
リドルはその生徒の言葉に疑問を抱いた。
何故法律を勉強して歯医者の、医療技術についての発見があるのだろうと。
リドルの疑問に答えるように、その生徒は言葉を続けた。
「うん。この『第二五六条:夜八時過ぎに蜂蜜入りのレモネードを飲んではならない』って法律あるでしょ。これ、虫歯にならないための法律だと思うんだよね。虫歯って昔からある病気だけど、なかなかに痛いし、本当に最悪の最悪なときは死ぬ。直すには歯医者に行くしかない。そう、今だったら歯医者に行けばいいんだよ。それに歯磨き粉を使ってしっかり歯を磨けば、そう簡単には虫歯にならないのが今の技術でしょ? でもこの頃はきっと違ったんだろうね。歯医者の技術も歯ブラシや歯磨き粉の品質も、まだ未熟なとき、もしくは治療にすごくお金をかけないと治せなかったんだ。だから虫歯になると大変だ。でも虫歯ってさ、予防できるんだよ。歯をしっかり磨くの他にも、甘い物を食べ過ぎないっていうね。だから定められたんじゃないかな。国民に歯の痛みと財布の打撃を与えないためにね……っていうのが、法律だけ見た俺の想像。あ、変なことペラペラしゃべってごめん……」
素直にリドルは感心した。彼は法律から国民の生活を考察すると言っていた。
法律一つから当時の生活の技術だけでなく、女王の国民を守るという気高い意志まで読み取るとは。
「いや、なかなか参考になったよ。君はイグニハイド生なのにしっかりとハートの女王の法律について考えて学んでいるね。うちの寮生にも見習ってほしいよ」
「法律は国民の為にあるものだよ。その法律が自分に影響があるとわかれば守るんだけど、意味が分からないと守る意味もわからない。だから俺の解釈通りなら、第二五六条の法律は少し変えた方がいいだろうね」
「変える? 女王の法律を変えると言ったのかい!?」
「うん? だって今は歯をしっかり磨けば虫歯にはなりにくいし、最悪歯医者にいけばいい。それに甘いものは蜂蜜入りのレモネード以外にもたくさんある。だからレモネードに限定しないで『夜に甘いものを食べたら歯を磨かなければならない』って感じに変えた方が、守ってくれそうな気がする」
「それでも! 女王の法律を変えるのはダメだ!」
「でもこれはハートの女王の時代の法律だよ? その当時の生活、国民柄、文化に寄り添ったものだろうし……今の時代には多分合わないものが多いよ」
「……ハーツラビュルは女王の厳格な精神に基づいた寮だ! その女王が定めた法律は守るべきなんだ…! 守らないのも駄目だが、変えるなんて以ての外だ!」
そう言い捨てるとリドルは生徒に背を向けて図書館から立ち去って行った。
立ち去るリドルの後ろ姿を、生徒は不安げな目で見ていた。
「……怒らせてしまった……差し出がましいことをしてしまった……」
リドルを怒らせてしまったと落ち込む生徒の耳に、図書館扉が再び開く音が聞こえる。
忘れ物もして戻ってきたのか思ったが、図書館に入ってきたのは別の人物だった。
「あ、〇〇氏~。探したござるよ~。今日も布教したいゲームがあってですな~」
「イデア先輩」
「あれ? どしたの〇〇氏」
「ちょっと久しぶりに土下座の練習したいから手伝ってほしい」
「………………はい?」
主に自分の寮の生徒たちについてだ。
法律を破る者が多すぎる。まだ入学式からわずかな時間しか経っていないから、覚えられていない一年生は本当に、本当に少しだけ甘めに見ているものの、二年生以上の者たちすら、法律を破る生徒が多い。
崇高な女王の法律を破るだなんて、ハーツラビュルしての誇りも自覚も無いにもほどがある。
気持ちを落ち着けようと、リドルは図書館に入って課題をすることにした。
静かな図書館は学ぶときや心を落ち着かせたいときにとても最適な場所である。
人の少ない図書館に、一人の先客がいた。
リドルの見たことのない生徒だったので、恐らく一年生か三年生だろう。
その生徒はイグニハイド寮の生徒であったが、意外な本を読んでいるのが見えた。
「ハートの女王の法律に興味があるのかい?」
生徒が読んでいたのは、ハートの女王が定めた法律の全集であった。
図書館にもハートの女王の法律について書かれている本は沢山ある。
だが他寮の生徒がそれを読んでいるのを見るのはリドルも初めてである。
自分が尊敬するハートの女王について勉強をしている生徒に、リドルは興味を持った。
「うーん、まぁそんな感じ。魔法史の勉強していたら、今ちょうどハートの女王の時代をやっていてね。彼女が定めた法律を見れば、当時に国民の生活とかも想像しやすいかと思って読んでみてる」
「それはいい観点かもしれないね。それで、法律を調べてみて何かわかったかい?」
ただ法律を覚えるというわけでもなく、そこから時代背景を学ぶのだという生徒にリドルは好感を抱く。
「そうだなぁ、当時は歯医者がそんなに発達してなかったのかなって思った。」
「……歯医者かい?」
リドルはその生徒の言葉に疑問を抱いた。
何故法律を勉強して歯医者の、医療技術についての発見があるのだろうと。
リドルの疑問に答えるように、その生徒は言葉を続けた。
「うん。この『第二五六条:夜八時過ぎに蜂蜜入りのレモネードを飲んではならない』って法律あるでしょ。これ、虫歯にならないための法律だと思うんだよね。虫歯って昔からある病気だけど、なかなかに痛いし、本当に最悪の最悪なときは死ぬ。直すには歯医者に行くしかない。そう、今だったら歯医者に行けばいいんだよ。それに歯磨き粉を使ってしっかり歯を磨けば、そう簡単には虫歯にならないのが今の技術でしょ? でもこの頃はきっと違ったんだろうね。歯医者の技術も歯ブラシや歯磨き粉の品質も、まだ未熟なとき、もしくは治療にすごくお金をかけないと治せなかったんだ。だから虫歯になると大変だ。でも虫歯ってさ、予防できるんだよ。歯をしっかり磨くの他にも、甘い物を食べ過ぎないっていうね。だから定められたんじゃないかな。国民に歯の痛みと財布の打撃を与えないためにね……っていうのが、法律だけ見た俺の想像。あ、変なことペラペラしゃべってごめん……」
素直にリドルは感心した。彼は法律から国民の生活を考察すると言っていた。
法律一つから当時の生活の技術だけでなく、女王の国民を守るという気高い意志まで読み取るとは。
「いや、なかなか参考になったよ。君はイグニハイド生なのにしっかりとハートの女王の法律について考えて学んでいるね。うちの寮生にも見習ってほしいよ」
「法律は国民の為にあるものだよ。その法律が自分に影響があるとわかれば守るんだけど、意味が分からないと守る意味もわからない。だから俺の解釈通りなら、第二五六条の法律は少し変えた方がいいだろうね」
「変える? 女王の法律を変えると言ったのかい!?」
「うん? だって今は歯をしっかり磨けば虫歯にはなりにくいし、最悪歯医者にいけばいい。それに甘いものは蜂蜜入りのレモネード以外にもたくさんある。だからレモネードに限定しないで『夜に甘いものを食べたら歯を磨かなければならない』って感じに変えた方が、守ってくれそうな気がする」
「それでも! 女王の法律を変えるのはダメだ!」
「でもこれはハートの女王の時代の法律だよ? その当時の生活、国民柄、文化に寄り添ったものだろうし……今の時代には多分合わないものが多いよ」
「……ハーツラビュルは女王の厳格な精神に基づいた寮だ! その女王が定めた法律は守るべきなんだ…! 守らないのも駄目だが、変えるなんて以ての外だ!」
そう言い捨てるとリドルは生徒に背を向けて図書館から立ち去って行った。
立ち去るリドルの後ろ姿を、生徒は不安げな目で見ていた。
「……怒らせてしまった……差し出がましいことをしてしまった……」
リドルを怒らせてしまったと落ち込む生徒の耳に、図書館扉が再び開く音が聞こえる。
忘れ物もして戻ってきたのか思ったが、図書館に入ってきたのは別の人物だった。
「あ、〇〇氏~。探したござるよ~。今日も布教したいゲームがあってですな~」
「イデア先輩」
「あれ? どしたの〇〇氏」
「ちょっと久しぶりに土下座の練習したいから手伝ってほしい」
「………………はい?」