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一年生を三回やりました

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その日のクルーウェルは様子がおかしかった。
執拗に時計を確認し、教室に生徒が入ってくるたびに、力強く視線をそちらに向ける。
そして生徒を確認すると、小さく溜息をついて視線を元に戻す。
普段の無駄なんじゃないかと思うくらいの余裕たっぷりなクルーウェルの見る影もない。
イデア・シュラウドでもその違いはすぐにわかった。

そもそもこの日は新学期に入って初めての錬金術の授業だというのに、何故か三年B組と二年B組が合同の授業となっていた。
新学期の初回授業は毎回オリエンテーションで、実験どころか授業らしいこともしないというのが毎度のことだったのに何故?
おかげでただでさえ人と会うのが嫌なイデアは、面識のない二年生たちとも同じ空間にいなければならない。
しかもこの授業の一週間前、まだあの問題の入学式が始まる前に連絡がきたのだ。
学園長から直々にだ。

「新学期最初の錬金術の授業には絶対出るように。良いですね? 絶対にですよ!! 絶対です!!」

更に新学期が始まって初めてクルーウェルと鉢合わせしたときに、こんなことも言われた。

「シュラウド、学園長から通達も行っているはずだが、次の錬金術の授業は絶対に教室に来るように。来なかったら今年の単位は無いと思え」

イデアはあまりのクルーウェルの迫力に、録音をすることを忘れたことを後悔している。絶対にしかるべき機関に提出したら色々勝てそうだったのに。
先ほどまで受けていた魔法史の授業でも、少し早めに終わってラッキーと思いながら、トレインにプリントを提出しに行ったら……

「シュラウド、何のために授業を早めに終わらせたと思っている? 早く次の教室に向かいなさい」

何だったら教室に向かっているというのに、途中ですれ違ったバルガスにでさえ

「シュラウド! 何を愚図愚図している!? 早く教室に向かうんだ!!」

―――なんなんだ!? 何があるんだ!!?

―――助けてオルト。お兄ちゃん心当たり全く無いよ

冷や冷やしっぱなしでまだ人の少ない教室にたどり着いてみれば、いるのは挙動不審気味のクルーウェルで。
自分に用事があったのかと思えば、イデアを視界に入れてもクルーウェルは特に声をかけることもない……
イデアはますます訳がわからない。
これだから陽キャどもの考えることはわからないと思いながら、イデアは普段から座っている絶妙に人の視界に入りづらい席に着いた。
授業は毎年通りのオリエンテーションで終わった。
三年と二年分のオリエンテーションをやったので途中から暇だったくらいだ。なんのために二年と合同にしたのかは授業が終わっても謎だった。

いつもと違うことといえば、珍しくイデアの隣に人が座ったことくらいだろうか。
恐らく二年生。薄い金髪で、制服をきちんと着て、はかない雰囲気を持った、イデアの見たことがない生徒だった。
どうしても目立ってしまう髪を持つイデアの方を全く気にせず、いつの間にか普段通りに戻っていたクルーウェルの方ばかり見ていた。
滞りなく授業が終わりかけたとき、イデアは逃げるようにそそくさと教室から出ようと考えていた矢先のことだった。

「シュラウドは話があるから教室に残るように」

―――今年の自分、よくないっすわー





普通に授業を受けるようになるということは、過ごす場所も寮になることになる。
これまでは空いている教師の部屋を使っていたものの、寮に所属する以上それはもうできない。そもそも今年はその部屋は空いていないのである。クルーウェルの物置になるのだ。
〇〇は幸いにして闇の鏡にイグニハイドと言われているので、イグニハイド寮で今後過ごすことになる。

詳しいことを〇〇は知らされていないが、今年はどの寮にも選ばれなかった生徒もいるのだ。
クロウリーのことをとても優しいと信じている〇〇は、自分のときのようにどうにかしてくれていると思っている。
そして〇〇はナイトレイブンカレッジ入学四年目にして、ようやく教室で授業を受けた。
初めての授業は錬金術で、これはだいぶ一悶着あった。
主に教師たちが。

「彼も慣れている魔法史の授業が、彼の初めての授業に最適だろう」
「他学年との合同授業にして違和感を無くすのだろう? 飛行術がちょうど良いではないか!!」
「はじめは教室からの方がいいだろう。錬金術は今後ペアを組まなければならないことも多い。出遅れないためにも錬金術だ!」

さぁどうする?

元の世界で昔見た◯イフカードのコマーシャルを思わせるノリだった。
正直〇〇はどれでもよかったので〇クセルでルーレットを作ってランダムで決めた。
選ばれたのは、錬金術であった。
クルーウェルは雄叫びをあげていた。
どう見てもコ◯ンビアだった。
教室で授業を受けることはナイトレイヴンカレッジでは初めてだったため、どこに座れば良いのか〇〇にはわからなかった。
目立たない席がいいが、そんな席はすぐにとられる。
そのことを相談したところ、教師たちは何も悩まずに言った。

―――そうだ!

―――イデア・シュラウドを目印かつ人避けにしよう!

「シュラウドなら目立つからすぐに見つけられるだろう。あの駄犬は教師からも生徒からも見つけづらい席にいつも座るしな!」
「魔法史はシュラウドのクラスは錬金術の前だ。早めに切り上げて急いで向かわせよう」
「俺も廊下に立って急かすとするか!!」
「シュラウド君には寮のことも話さなければなりませんでしたしねぇ」
なんだか横暴なことが行われそうな気がしたが、まぁなんとかなるだろう。





―――オルト助けてクレメンス

その日の最後の授業であった錬金術を乗り切り、さっさと寮へ帰ってソシャゲの周回をしよう考えていた矢先、イデアはクルーウェルによって学園長室に連行された。

―――学園長室なんぞ寮長をやっていても全く入らないのに、今年の自分にはどんな災厄が待っているのだろうか……

学園長室で待っていたのは、当然いる部屋の主のクロウリーと、トレインとバルガスである。

―――え、拙者新学期から学園長室で教師に囲まれて説教されるのん?

引きこもってはいるが、イデアは基本的に問題をそこまで起こす方でも無い。今年は知らないが。
つまり、学園長室に連行されてまで叱られることをしていないので、何かとんでもない面倒ごとを押し付けられるのだなと、イデアは察した。

「シュラウド君、わざわざ学園長室までご足労いただき、ありがとうございます」

クロウリーがなにやら畏まっている。
イデアは確信した。絶対これマジで面倒押し付けられる。それにしては学園長は何かをこらえているような、嚙み締めているような、何故だかイデアを目の敵のように見ている雰囲気があったが。

「本当はもっと早くに伝えるべきだったのですがね、いやはや急に決まったことなので……」
「クロウリー、御託も遠慮も必要ないだろう」

何かに気を使っているのかごちゃごちゃ言っているクロウリーを押し退けて、クルーウェルが話を進める。

「実は新入生以外にイグニハイド生が一人増える」
「いやめんど……え?」

クルーウェルから言われた言葉は、イデアを混乱させた。
今なんて言われたのだろうか。

―――イグニハイド生が一人増える? 新入生以外で?

新入生ではないということは、二年生以上の生徒だ。
増えるということは編入か転寮になるのではないか?

―――編入だったら嫌だな……問題を起こした生徒が退学になってやってきたんじゃないだろうな……

―――転寮だったらもっと嫌だな……イグニハイド以外の寮なんて陽キャしかいないじゃないか…!!

「その生徒は事情が事情でな……在籍はしていたんだが、教室に行けなかったのだ」

―――はぁーん?

―――つまり引き篭もりを引き取れっつーことですかね?

―――引き篭もりならイグニハイドはスペシャリストだって決めつけやめてくれませんかねー?

―――いや事実ですが。

「闇の鏡もイグニハイドと言っているからな!!」

―――あっ、生粋のイグニハイド生でしたか。

―――早とちりしちゃってめんごめんご。

―――まぁ折角入学したのにクラスにヤンキー多すぎて入れなかった気持ちはよくわかる。心折れるよね。

―――一年経ってクラス替えした今なら行きやすいかもね。

「彼の性格については問題ありませんよ! 物静かなタイプで、とても勤勉で、真面目で、穏やかで………」

―――お?なかなかいい感じじゃね?

―――とりあえずチャラチャラとかギラギラみたいな感じじゃなければなんとかなる気がする!

「なかなかに社交的ないたって普通の十八歳の男の子です!」

………………あれ?
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