一年生を三回やりました
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Ⅰ
クロウリーはめちゃくちゃ悩んでいた。
入学式が終わり、シャンデリア、オーバーブロット、マジフト大会、オーバーブロットと短期間にしてはいささか多すぎる気がするイベントを終えて、次のテストまで特に大きなイベントはないだろうと息をついたとき、思い出したのである。
–––もしかしてあの子、無遅刻無欠席無問題児では?
あの子、〇〇・〇〇は今年から教室に通い始めた2年生だが、毎日授業に出席し、部活に励み、トラブルもない。なんなら人望まである。
元不登校生徒とは思えないくらいの快挙である。
思い立ったクロウリーはすぐに行動を起こそうとした。
超頑張ったあの子にご褒美をあげなければと。
だが立ち上がり財布を手に取ろうとしたクロウリーはピタリと固まる。
–––あの子って何が好きでしたっけ?
〇〇の行動を思い返してみれば、いつも勉強したり、アルバイトをしたり、職員の雑務を手伝ったり、図書館に行ったり、学園長室を掃除してくれたり、箒を磨いたり……一体いつ遊んでいるんだ……!?
–––思い出しなさいディア・クロウリー!去年の忘年会とかカラオケに一緒に行ったでしょう!!
そこでクロウリーはすごいことを思い出す。
昨年の忘年会の職員たちによるカラオケ大会。
異世界からきた〇〇、ツイステッドワンダーランドの歌を知らなかったので教師陣が歌っているのをタンバリンを叩いてめっちゃ盛りげてくれてた。
このままではいけない。
Ⅱ
「ほしいものは、特にないかな」
「うっわ〇〇氏無欲にもほどが……!」
イデアは自室で〇〇とゲームをしていた。
本日のツイステッドワンダーランドで子供から大人にまではやっているレースゲームである。
「うーん、そうだなぁ。物というか、ちょっと旅行とか行ってみたいとは思った。ネットで通販で取り寄せるのもいいけど、実物を見て選んでみたいね」
「あー、確かにネットにある公式が出してるフィギュアの画像だけじゃ完全に出来は把握できないですしなぁ」
〇〇も元の世界で甲羅や弾丸が飛び交うレースゲームをよく遊んでいたため、操作にも早めに慣れることができた。はじめはゆっくり走って後ろから妨害アイテムを投げ、段々追い上げていくのが〇〇のプレイスタイルである。
「ネットの評判も大事だけど、実物見たり食べ物なら試食するほうが納得することも多いしね」
「ネットの評判は悪意あるものもありますからなぁ」
まったりと世間話をしながらも、テレビ画面は最終レースに入り、イデアと〇〇のデッドヒートが繰り広げられている。
「ちなみに〇〇氏、行くならどこの国がいいとかある?」
「うーん、まずはあったかい所がいいかも。あ、サ〇ダー」
「ちょぉっ!? ゴール手前で何故そのアイテムって踏んでいくなし!!」
Ⅲ
監督生ユーリは悪夢を見た。
オンボロ寮にいれば悪夢の1つや2つ普通に見るもんだと思ってはいたが、やけにリアルで、そしてあってはならない内容であった。
誰かがオーバーブロットする夢である。
過去にオーバーブロットをしたリドルでもレオナでもなく、違う誰か。だがその姿に監督生は心当たりがあった。
そしてその結末は……絶対に現実にしてはいけない。
朝になり、ユーリはグリムに先に向かうという書置きをして早くに学校へ向かった。
足早に向かう先は教室ではなく、職員室である。
「失礼します!! 学園長は今どこにいますでしょうか!!」
Ⅳ
〇〇は困惑していた。
朝早くからクロウリーに学園長室へ呼び出され、行ったら行ったで学園長と何故かそこにいた監督生にマジカルペンを出すように詰め寄られた。
しぶしぶと〇〇は自分のマジカルペンを差し出すと、それを見た2人は悲鳴をあげてマジカルペン受け取った。
「うううわああぁぁあぁぁ先輩いぃぃ!!これはダメなやつうぅうぅぅぅ!!!」
「〇〇君んんんん!!!いつからマジカルペンこんな真っ黒なんですかあああぁぁぁ!?」
〇〇のマジカルペンは。端的に言うとオーバーブロット寸前であった。
むしろよく今までオーバーブロットしなかったものである。
「? 2週間くらい前からこうかな。なんか中のインクこぼれたみたいで」
「違うんですうぅぅ!!これは放置しちゃダメなやつなんですよおぉぉ!!!」
クロウリーと監督生はだいぶ必死に、〇〇にオーバーブロットについて教えた。
〇〇は自分が危険だったことを何とか理解したようだが、それでも疑問は残っていた。
「俺ユニーク魔法持ってないのに何でブロットたまったのかな」
ちなみに改めてオーバーブロットとは
強いストレスや内外的な負荷によって、魔法のコントロールができなくなる状態になることであり、負の感情からくるエネルギーを抱えていると、ブロットが非常に溜まりやすく、オーバーブロットを引き起こしやすくなってしまうことである。
「つまり先輩はここ最近で強いストレスや不安を抱えてる可能性が高いです!! 学園長! どういうことですか!?」
「……それについてですがね。私つい最近やっと気づいたんですよね。彼、休息をとってないことに……!!」
「? 俺はちゃんと休んでるよ?」
「普通の休日の話ではありません。貴方、3年間不登校してて最近初登校したではないですか」
「うん」
「学校は楽しいですか?」
「うん」
「ありがとうございます。では休みたいと思ったことはありませんか?」
「えー、休みたいは、無いかな。ただでさえ遅れてるし、せっかく授業受けるんだし、部活も入ったし、みんなに心配させたくないし「せんぱ–––ーーい!!!!」? 監督生さんどうしたの?」
「先輩! 自覚ないまま疲れとストレス溜めてますよ!! この世界では私はどうなのかはわからないですけど、少なくとも私たちがいた世界では不登校からの復帰でそんなに詰め込むのはかなり無茶です!!!」
監督生も実は不登校を経験したことがあった。
小学生のときに色々あったのだが、不登校から保健室登校、そしてなんとか教室登校をすることができた。しかしその一つ一つのステップを踏むことは、大きな不安に襲われ、とんでもないエネルギーを消費したことを彼女は忘れられない。
不登校の理由はなんであれ、3年間も同世代との交流が
なかったのに、いきなり初対面のクラスメイトとの授業と交流。さらには部活まで。
しかも先ほど学園長から問いただしたら無遅刻無欠席で、休みたくない理由が遅れを取り戻したいや、心配をさせたくないというストレスに繋がりやすい理由。
監督生はカウンセラーではない。心理学を学んだわけでもない。
だが自分の経験と直感が、〇〇を休ませないと、本音を自覚させないとまずいと告げているのだ。
でなければ本当に、あの悪夢のようになってしまうのではないかという焦燥感があった。
「〇〇君、たとえ貴方に自覚がなかったとしても、このマジカルペンのブロット量はあまりに危険です。お願いします。貴方は全く休まずに、十分頑張ってきました。私たちが心配になってしまうので、どうかここらでしばらく休憩をしませんか?」
「……でも授業遅れるし、ただでさえ留年で浮いてるのに、しばらく休むなんて「〇〇君!!!!!!」」
学園長室のドアが大きな音をたてて開いた。
ラギーを筆頭とした、2年B組のクラスメイトたちであった。
「〇〇!授業の遅れなら俺たちが教えるから任せろ!」
「自分たちの復習にもなるので、是非頼ってください」
「俺たちはお前が頑張りすぎて倒れちまう方が悲しいよ!」
「オレたちはずっと待ってるッスよ! 一緒に卒業するッスからね!」
その日から3日間、〇〇は通院と休息のために学校を休んだ。
短すぎないかと皆心配したが、〇〇の「みんなとも遊びたいから」という言葉に、2年B組は湧き、泣いた。
ナイトレイヴンカレッジの生徒にないと思っていた優しさと絆を見れたことに、クロウリーは鼻を啜った。
その日の夜、表情には出ずとも友人たちと楽しそうに過ごす〇〇の夢を見た監督生は、尊さで溶けた。
クロウリーはめちゃくちゃ悩んでいた。
入学式が終わり、シャンデリア、オーバーブロット、マジフト大会、オーバーブロットと短期間にしてはいささか多すぎる気がするイベントを終えて、次のテストまで特に大きなイベントはないだろうと息をついたとき、思い出したのである。
–––もしかしてあの子、無遅刻無欠席無問題児では?
あの子、〇〇・〇〇は今年から教室に通い始めた2年生だが、毎日授業に出席し、部活に励み、トラブルもない。なんなら人望まである。
元不登校生徒とは思えないくらいの快挙である。
思い立ったクロウリーはすぐに行動を起こそうとした。
超頑張ったあの子にご褒美をあげなければと。
だが立ち上がり財布を手に取ろうとしたクロウリーはピタリと固まる。
–––あの子って何が好きでしたっけ?
〇〇の行動を思い返してみれば、いつも勉強したり、アルバイトをしたり、職員の雑務を手伝ったり、図書館に行ったり、学園長室を掃除してくれたり、箒を磨いたり……一体いつ遊んでいるんだ……!?
–––思い出しなさいディア・クロウリー!去年の忘年会とかカラオケに一緒に行ったでしょう!!
そこでクロウリーはすごいことを思い出す。
昨年の忘年会の職員たちによるカラオケ大会。
異世界からきた〇〇、ツイステッドワンダーランドの歌を知らなかったので教師陣が歌っているのをタンバリンを叩いてめっちゃ盛りげてくれてた。
このままではいけない。
Ⅱ
「ほしいものは、特にないかな」
「うっわ〇〇氏無欲にもほどが……!」
イデアは自室で〇〇とゲームをしていた。
本日のツイステッドワンダーランドで子供から大人にまではやっているレースゲームである。
「うーん、そうだなぁ。物というか、ちょっと旅行とか行ってみたいとは思った。ネットで通販で取り寄せるのもいいけど、実物を見て選んでみたいね」
「あー、確かにネットにある公式が出してるフィギュアの画像だけじゃ完全に出来は把握できないですしなぁ」
〇〇も元の世界で甲羅や弾丸が飛び交うレースゲームをよく遊んでいたため、操作にも早めに慣れることができた。はじめはゆっくり走って後ろから妨害アイテムを投げ、段々追い上げていくのが〇〇のプレイスタイルである。
「ネットの評判も大事だけど、実物見たり食べ物なら試食するほうが納得することも多いしね」
「ネットの評判は悪意あるものもありますからなぁ」
まったりと世間話をしながらも、テレビ画面は最終レースに入り、イデアと〇〇のデッドヒートが繰り広げられている。
「ちなみに〇〇氏、行くならどこの国がいいとかある?」
「うーん、まずはあったかい所がいいかも。あ、サ〇ダー」
「ちょぉっ!? ゴール手前で何故そのアイテムって踏んでいくなし!!」
Ⅲ
監督生ユーリは悪夢を見た。
オンボロ寮にいれば悪夢の1つや2つ普通に見るもんだと思ってはいたが、やけにリアルで、そしてあってはならない内容であった。
誰かがオーバーブロットする夢である。
過去にオーバーブロットをしたリドルでもレオナでもなく、違う誰か。だがその姿に監督生は心当たりがあった。
そしてその結末は……絶対に現実にしてはいけない。
朝になり、ユーリはグリムに先に向かうという書置きをして早くに学校へ向かった。
足早に向かう先は教室ではなく、職員室である。
「失礼します!! 学園長は今どこにいますでしょうか!!」
Ⅳ
〇〇は困惑していた。
朝早くからクロウリーに学園長室へ呼び出され、行ったら行ったで学園長と何故かそこにいた監督生にマジカルペンを出すように詰め寄られた。
しぶしぶと〇〇は自分のマジカルペンを差し出すと、それを見た2人は悲鳴をあげてマジカルペン受け取った。
「うううわああぁぁあぁぁ先輩いぃぃ!!これはダメなやつうぅうぅぅぅ!!!」
「〇〇君んんんん!!!いつからマジカルペンこんな真っ黒なんですかあああぁぁぁ!?」
〇〇のマジカルペンは。端的に言うとオーバーブロット寸前であった。
むしろよく今までオーバーブロットしなかったものである。
「? 2週間くらい前からこうかな。なんか中のインクこぼれたみたいで」
「違うんですうぅぅ!!これは放置しちゃダメなやつなんですよおぉぉ!!!」
クロウリーと監督生はだいぶ必死に、〇〇にオーバーブロットについて教えた。
〇〇は自分が危険だったことを何とか理解したようだが、それでも疑問は残っていた。
「俺ユニーク魔法持ってないのに何でブロットたまったのかな」
ちなみに改めてオーバーブロットとは
強いストレスや内外的な負荷によって、魔法のコントロールができなくなる状態になることであり、負の感情からくるエネルギーを抱えていると、ブロットが非常に溜まりやすく、オーバーブロットを引き起こしやすくなってしまうことである。
「つまり先輩はここ最近で強いストレスや不安を抱えてる可能性が高いです!! 学園長! どういうことですか!?」
「……それについてですがね。私つい最近やっと気づいたんですよね。彼、休息をとってないことに……!!」
「? 俺はちゃんと休んでるよ?」
「普通の休日の話ではありません。貴方、3年間不登校してて最近初登校したではないですか」
「うん」
「学校は楽しいですか?」
「うん」
「ありがとうございます。では休みたいと思ったことはありませんか?」
「えー、休みたいは、無いかな。ただでさえ遅れてるし、せっかく授業受けるんだし、部活も入ったし、みんなに心配させたくないし「せんぱ–––ーーい!!!!」? 監督生さんどうしたの?」
「先輩! 自覚ないまま疲れとストレス溜めてますよ!! この世界では私はどうなのかはわからないですけど、少なくとも私たちがいた世界では不登校からの復帰でそんなに詰め込むのはかなり無茶です!!!」
監督生も実は不登校を経験したことがあった。
小学生のときに色々あったのだが、不登校から保健室登校、そしてなんとか教室登校をすることができた。しかしその一つ一つのステップを踏むことは、大きな不安に襲われ、とんでもないエネルギーを消費したことを彼女は忘れられない。
不登校の理由はなんであれ、3年間も同世代との交流が
なかったのに、いきなり初対面のクラスメイトとの授業と交流。さらには部活まで。
しかも先ほど学園長から問いただしたら無遅刻無欠席で、休みたくない理由が遅れを取り戻したいや、心配をさせたくないというストレスに繋がりやすい理由。
監督生はカウンセラーではない。心理学を学んだわけでもない。
だが自分の経験と直感が、〇〇を休ませないと、本音を自覚させないとまずいと告げているのだ。
でなければ本当に、あの悪夢のようになってしまうのではないかという焦燥感があった。
「〇〇君、たとえ貴方に自覚がなかったとしても、このマジカルペンのブロット量はあまりに危険です。お願いします。貴方は全く休まずに、十分頑張ってきました。私たちが心配になってしまうので、どうかここらでしばらく休憩をしませんか?」
「……でも授業遅れるし、ただでさえ留年で浮いてるのに、しばらく休むなんて「〇〇君!!!!!!」」
学園長室のドアが大きな音をたてて開いた。
ラギーを筆頭とした、2年B組のクラスメイトたちであった。
「〇〇!授業の遅れなら俺たちが教えるから任せろ!」
「自分たちの復習にもなるので、是非頼ってください」
「俺たちはお前が頑張りすぎて倒れちまう方が悲しいよ!」
「オレたちはずっと待ってるッスよ! 一緒に卒業するッスからね!」
その日から3日間、〇〇は通院と休息のために学校を休んだ。
短すぎないかと皆心配したが、〇〇の「みんなとも遊びたいから」という言葉に、2年B組は湧き、泣いた。
ナイトレイヴンカレッジの生徒にないと思っていた優しさと絆を見れたことに、クロウリーは鼻を啜った。
その日の夜、表情には出ずとも友人たちと楽しそうに過ごす〇〇の夢を見た監督生は、尊さで溶けた。
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