一年生を三回やりました
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Ⅰ
〇〇には苦手なものがたくさんある。
勉強なら動物言語学、運動なら縄跳び、食べ物ならチーズ、ゲームなら経営ゲーム、そして……
「お困りなら、ぜひ僕に相談に乗らせてください!」
人の善意の断ることがものすごく苦手である。
そのときの〇〇は非常に困っていた。
〇〇の大切な人たちが争いをしていたのである。
原因は〇〇にもよくわからないが、言い争いの内容的に、主義主張の違いからであった。
争いは加速し、ついには手が出るほどにまで発展したので、その場にいた〇〇が仲裁に入りことなきを得た。だが争いの中心人物たちはまだ納得していないので、まだ解決には程遠かった。
そのことを、当人たちの個人情報保護のために名前を伏せてクラスメイトたちに悩んでいると話していたところを聞きつけたのか、隣の隣のクラスから眼鏡をかけたものすごく頭の良さそうな生徒が〇〇の元へやってきたのである。
「失礼、何やらお困りの様子でしたので、声をかけてしまいました。僕はアズール・アーシェングロット。クラスは二年D組でオクタヴィネルの寮長をしています。〇〇・〇〇さん、よろしければお話を聞かせてくれませんか?」
Ⅱ
アズールは最近少し気になる生徒がいた。
二年B組の〇〇・〇〇という生徒。
去年は姿を一切見かけることなく、アズールははじめ二年生からの編入生かと思っていたがそうでもないらしい。
どうやら休学をしていて、今年から二年生として復帰したようである。
成績はまだ未知数だが、勉学には真面目に取り組み、偶然見かけた飛行術の授業ではなかなか成績は良さそうである。
しかしアズールの興味はそこではない。
どうやら〇〇・〇〇は教師陣に可愛がられているらしい。
それは学園長であるクロウリーも例に漏れず、アズールはこれは使えると考えた。
彼と親しくなれば、学校内で更に融通を利かせられるとアズールは考えたのである。
丁度〇〇が知人の喧嘩に困っているという話を聞きつけたので、アズールは早速お得意の「お困りですね?お任せください!」戦法を繰り出した。
「困ってること……そうだな…なかなか体重が増えなくて困ってる…かな」
「あ゛ぁ?」
Ⅲ
ジェイドは腹を抱えて笑いたかった。
アズールが山を愛する会の部員候補(ジェイドの思い込み)である〇〇・〇〇に声をかけると聞いたとき、
あわよくば自分も彼と親しくなって、うまくいけば山を愛する会に入部、無理でも一度は入部を考えた彼となら、共に山(キノコ)トークができるかもしれないと考えていた。
〇〇に声をかけると行ったアズールの後をこっそり着いていき、様子を伺っていたがなかなかに面白い展開になった。
体重や体型の話はアズールには地雷だ。しかも太りたいだなんてアズールの地雷中の地雷である。
確かに〇〇の体型はだいぶ痩せ型で、彼の言う通り体重を増やした方が健康的に見えそうなのだが、痩せるのに苦労していたアズールには理解したくない考えだろう。
「ち、ちなみに今の身長と体重をお聞きしても?」
アズールは全くできていないが動揺を隠して質問をする。
–––やめておきなさいアズール。ダメージを受けるのは貴方ですよ(笑)
「うん、身長は一七六センチで体重は朝測ったら四九キロに減っちゃったんだ……」
ここでアズールのプロフィールを振り返ってほしい。
名前:アズール・アーシェングロット
年齢:十七歳
身長:一七六センチ
体重:未公開(全キャラ共通)
好きな食べ物:唐揚げ
嫌いな食べ物:完全栄養食品
特技:暗算
なんとアズールと〇〇、身長が同じである。
そして悲しいことにこのアズール、暗算が得意な上に体型維持のために毎日欠かさずBⅯIの計算をしているので、〇〇の体型がいかに痩せ型かが数値でわかってしまう。しかも身長が同じなため嫌でも自分と比較できる。
「そ、そ、それはだいぶお痩せていらっしゃる……!ちなみに食生活をお聞きしても?」
無駄に眼鏡をガチャガチャと鳴らすアズールの姿にジェイドはにやにやが止まらない。
「いつも違うもの食べてるからな……。昨日から今日にかけてだったら、昨日の朝にカレー、昼に大盛り唐揚げランチ、夜はなんか面倒だったからカロ◯ーメイト、あ、でも食後にスナック菓子食べた。今日の朝は……」
「あああああああああああああっっっ!! もうやだああああああああ!!」
アズールは噴火した。
〇〇はドン引きした。
ジェイドは爆笑した。
Ⅲ
〇〇は困っていた。
自分の食生活を話したら優等生にキレられた。
優等生が何か困っていることはないかと聞いてきたから、正直なことを言っただけなのに。
体重の減少は〇〇にとっては由々しき事態なのだ。
油断するとすぐに痩せるというアズールどころか世の全ての女性を敵に回す悩みを持つ〇〇は、いつか自分が骨と皮のみになるのではと怯えている。
そんな〇〇の悩みを一ミリも理解できない優等生、アズールは泣きそうになりながらも話題を無理やり軌道修正し始めた。
「貴方が困っているのを見かけたんですよ僕は! 大事な人たちが仲違いをしてしまうと心配している貴方を! それを何とかしてあげたいと思った僕に対してこの仕打ち!!」
「あ、そういうことか」
〇〇はこの学校の生徒は皆自己中で打算的だと思い込んでいた過去の自分を恥じた。
思えばクラスメイトは皆心配になるくらい自分に親切だし、自寮の寮長は話が面白い。他の寮の友人も勤勉で芯をしっかりと持っていたし部活の先輩はとても面倒見がいい。
そして目の前の見知らぬ優等生は、困っている相手に手を差し伸べられる優しい人なのだと。
クロウリーや他の教師陣が聞いたら卒倒しそうな評価である。
「確かにそれもどうしようか悩んでいたんだ。俺にはどうしようもないことだったから……」
「そうですかそうですか! 僕に話してみてください! 解決して見せましょう!」
アズールも、少し遠くから見守っていたジェイドも簡単に人を信じそうなこの〇〇という生徒に若干の不安を抱きながらも、詳細を待つ。
「駄菓子屋のハンナ婆さんとその娘のカテリーナおばさんがね、プリンは硬めか柔らかめかでずっと喧嘩しているんだ」
「は?」
アズールは固まった。
ついでに遠くにいたジェイドはおやおやと笑っていた。
「ハンナ婆さんは硬めプリンの方がしっとりしてて食べ応えもあって良いって言ってて、カテリーナおばさんは柔らかくて甘いプリンのほうが口の中でとろけて美味しいって言ってるんだ。俺は正直どっちも好きだからね。どっちの味方もできないし、でもこの件で1週間近く喧嘩してるしで。普段すごく仲がいい2人だから心配なんだ」
アズールは思った。すごくどうでもいい。
食べ物の主義主張など当人が好きならそれでいいじゃないかと思う。あと食べ過ぎなければ。
「それはどちらかが優れているのではなく、それぞれに別のいいところがあるということでいいのでは?」
「そうなんだよね。でも俺の故郷でもきのことたけのこがずっと長いこと戦争するくらいだし「そのお話、詳しくお聞かせいただいても?」なんか知らない人きた」
アズールたちとは少し離れて見守っていたジェイドは、きのこというワードを聞いて光の速さで近寄ってきた。何なら泳ぐより早かった。
「失礼。僕はジェイド。ジェイド・リーチと申します。山を愛する会の部長をしています。〇〇・〇〇さん」
「ジェイド、彼は今僕と話をしているんですよ!?」
「黙ってくださいアズール!! きのこが戦争をしていると聞いて黙っていられますか!! 〇〇さん、そのきのことタケノコとやらの戦争は収束しているのですか!?」
「きのこの語気が強いんだよお前は!!」
アズールはもう泣き喚きたかった。一回すでに喚いているが。
〇〇と繋がりを持つことで学園長に融通を効かせる策も、何だったら〇〇の悩みを聞いてあわよくば彼の魔法を貰い受ける策も、〇〇本人のの無神経な地雷のタップダンスと立ち聞きしてたきのこ野郎のせいで全部パーだ。
「戦争はまだ終わっていない……でもずっとたけのこが優勢でね。俺もきのこ派だからすごく応援してるんだけど、やっぱりたけのこは強いんだ……」
「なんと…! きのこが劣勢だなんて……!! どこを仕留めればきのこに軍配があがるのです!?」
「ちょっと黙りなさいジェイド! このきのこ魔神がー!!」
しばらくジェイドの一方的過ぎるきのこ愛が炸裂したが、大体アズールがツッコミを入れていたので〇〇の出る幕はなくなった。
そして偶然通りがかったラギーに引き取られ、寮でイデアとピザを食べた。
翌日、食堂で山盛りの唐揚げランチを持って席に向かう〇〇の姿を見てアズールは発狂した。
〇〇には苦手なものがたくさんある。
勉強なら動物言語学、運動なら縄跳び、食べ物ならチーズ、ゲームなら経営ゲーム、そして……
「お困りなら、ぜひ僕に相談に乗らせてください!」
人の善意の断ることがものすごく苦手である。
そのときの〇〇は非常に困っていた。
〇〇の大切な人たちが争いをしていたのである。
原因は〇〇にもよくわからないが、言い争いの内容的に、主義主張の違いからであった。
争いは加速し、ついには手が出るほどにまで発展したので、その場にいた〇〇が仲裁に入りことなきを得た。だが争いの中心人物たちはまだ納得していないので、まだ解決には程遠かった。
そのことを、当人たちの個人情報保護のために名前を伏せてクラスメイトたちに悩んでいると話していたところを聞きつけたのか、隣の隣のクラスから眼鏡をかけたものすごく頭の良さそうな生徒が〇〇の元へやってきたのである。
「失礼、何やらお困りの様子でしたので、声をかけてしまいました。僕はアズール・アーシェングロット。クラスは二年D組でオクタヴィネルの寮長をしています。〇〇・〇〇さん、よろしければお話を聞かせてくれませんか?」
Ⅱ
アズールは最近少し気になる生徒がいた。
二年B組の〇〇・〇〇という生徒。
去年は姿を一切見かけることなく、アズールははじめ二年生からの編入生かと思っていたがそうでもないらしい。
どうやら休学をしていて、今年から二年生として復帰したようである。
成績はまだ未知数だが、勉学には真面目に取り組み、偶然見かけた飛行術の授業ではなかなか成績は良さそうである。
しかしアズールの興味はそこではない。
どうやら〇〇・〇〇は教師陣に可愛がられているらしい。
それは学園長であるクロウリーも例に漏れず、アズールはこれは使えると考えた。
彼と親しくなれば、学校内で更に融通を利かせられるとアズールは考えたのである。
丁度〇〇が知人の喧嘩に困っているという話を聞きつけたので、アズールは早速お得意の「お困りですね?お任せください!」戦法を繰り出した。
「困ってること……そうだな…なかなか体重が増えなくて困ってる…かな」
「あ゛ぁ?」
Ⅲ
ジェイドは腹を抱えて笑いたかった。
アズールが山を愛する会の部員候補(ジェイドの思い込み)である〇〇・〇〇に声をかけると聞いたとき、
あわよくば自分も彼と親しくなって、うまくいけば山を愛する会に入部、無理でも一度は入部を考えた彼となら、共に山(キノコ)トークができるかもしれないと考えていた。
〇〇に声をかけると行ったアズールの後をこっそり着いていき、様子を伺っていたがなかなかに面白い展開になった。
体重や体型の話はアズールには地雷だ。しかも太りたいだなんてアズールの地雷中の地雷である。
確かに〇〇の体型はだいぶ痩せ型で、彼の言う通り体重を増やした方が健康的に見えそうなのだが、痩せるのに苦労していたアズールには理解したくない考えだろう。
「ち、ちなみに今の身長と体重をお聞きしても?」
アズールは全くできていないが動揺を隠して質問をする。
–––やめておきなさいアズール。ダメージを受けるのは貴方ですよ(笑)
「うん、身長は一七六センチで体重は朝測ったら四九キロに減っちゃったんだ……」
ここでアズールのプロフィールを振り返ってほしい。
名前:アズール・アーシェングロット
年齢:十七歳
身長:一七六センチ
体重:未公開(全キャラ共通)
好きな食べ物:唐揚げ
嫌いな食べ物:完全栄養食品
特技:暗算
なんとアズールと〇〇、身長が同じである。
そして悲しいことにこのアズール、暗算が得意な上に体型維持のために毎日欠かさずBⅯIの計算をしているので、〇〇の体型がいかに痩せ型かが数値でわかってしまう。しかも身長が同じなため嫌でも自分と比較できる。
「そ、そ、それはだいぶお痩せていらっしゃる……!ちなみに食生活をお聞きしても?」
無駄に眼鏡をガチャガチャと鳴らすアズールの姿にジェイドはにやにやが止まらない。
「いつも違うもの食べてるからな……。昨日から今日にかけてだったら、昨日の朝にカレー、昼に大盛り唐揚げランチ、夜はなんか面倒だったからカロ◯ーメイト、あ、でも食後にスナック菓子食べた。今日の朝は……」
「あああああああああああああっっっ!! もうやだああああああああ!!」
アズールは噴火した。
〇〇はドン引きした。
ジェイドは爆笑した。
Ⅲ
〇〇は困っていた。
自分の食生活を話したら優等生にキレられた。
優等生が何か困っていることはないかと聞いてきたから、正直なことを言っただけなのに。
体重の減少は〇〇にとっては由々しき事態なのだ。
油断するとすぐに痩せるというアズールどころか世の全ての女性を敵に回す悩みを持つ〇〇は、いつか自分が骨と皮のみになるのではと怯えている。
そんな〇〇の悩みを一ミリも理解できない優等生、アズールは泣きそうになりながらも話題を無理やり軌道修正し始めた。
「貴方が困っているのを見かけたんですよ僕は! 大事な人たちが仲違いをしてしまうと心配している貴方を! それを何とかしてあげたいと思った僕に対してこの仕打ち!!」
「あ、そういうことか」
〇〇はこの学校の生徒は皆自己中で打算的だと思い込んでいた過去の自分を恥じた。
思えばクラスメイトは皆心配になるくらい自分に親切だし、自寮の寮長は話が面白い。他の寮の友人も勤勉で芯をしっかりと持っていたし部活の先輩はとても面倒見がいい。
そして目の前の見知らぬ優等生は、困っている相手に手を差し伸べられる優しい人なのだと。
クロウリーや他の教師陣が聞いたら卒倒しそうな評価である。
「確かにそれもどうしようか悩んでいたんだ。俺にはどうしようもないことだったから……」
「そうですかそうですか! 僕に話してみてください! 解決して見せましょう!」
アズールも、少し遠くから見守っていたジェイドも簡単に人を信じそうなこの〇〇という生徒に若干の不安を抱きながらも、詳細を待つ。
「駄菓子屋のハンナ婆さんとその娘のカテリーナおばさんがね、プリンは硬めか柔らかめかでずっと喧嘩しているんだ」
「は?」
アズールは固まった。
ついでに遠くにいたジェイドはおやおやと笑っていた。
「ハンナ婆さんは硬めプリンの方がしっとりしてて食べ応えもあって良いって言ってて、カテリーナおばさんは柔らかくて甘いプリンのほうが口の中でとろけて美味しいって言ってるんだ。俺は正直どっちも好きだからね。どっちの味方もできないし、でもこの件で1週間近く喧嘩してるしで。普段すごく仲がいい2人だから心配なんだ」
アズールは思った。すごくどうでもいい。
食べ物の主義主張など当人が好きならそれでいいじゃないかと思う。あと食べ過ぎなければ。
「それはどちらかが優れているのではなく、それぞれに別のいいところがあるということでいいのでは?」
「そうなんだよね。でも俺の故郷でもきのことたけのこがずっと長いこと戦争するくらいだし「そのお話、詳しくお聞かせいただいても?」なんか知らない人きた」
アズールたちとは少し離れて見守っていたジェイドは、きのこというワードを聞いて光の速さで近寄ってきた。何なら泳ぐより早かった。
「失礼。僕はジェイド。ジェイド・リーチと申します。山を愛する会の部長をしています。〇〇・〇〇さん」
「ジェイド、彼は今僕と話をしているんですよ!?」
「黙ってくださいアズール!! きのこが戦争をしていると聞いて黙っていられますか!! 〇〇さん、そのきのことタケノコとやらの戦争は収束しているのですか!?」
「きのこの語気が強いんだよお前は!!」
アズールはもう泣き喚きたかった。一回すでに喚いているが。
〇〇と繋がりを持つことで学園長に融通を効かせる策も、何だったら〇〇の悩みを聞いてあわよくば彼の魔法を貰い受ける策も、〇〇本人のの無神経な地雷のタップダンスと立ち聞きしてたきのこ野郎のせいで全部パーだ。
「戦争はまだ終わっていない……でもずっとたけのこが優勢でね。俺もきのこ派だからすごく応援してるんだけど、やっぱりたけのこは強いんだ……」
「なんと…! きのこが劣勢だなんて……!! どこを仕留めればきのこに軍配があがるのです!?」
「ちょっと黙りなさいジェイド! このきのこ魔神がー!!」
しばらくジェイドの一方的過ぎるきのこ愛が炸裂したが、大体アズールがツッコミを入れていたので〇〇の出る幕はなくなった。
そして偶然通りがかったラギーに引き取られ、寮でイデアとピザを食べた。
翌日、食堂で山盛りの唐揚げランチを持って席に向かう〇〇の姿を見てアズールは発狂した。