佐藤×高井
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かち、かち、かち、かち。
規則正しく動き続ける時計の針の音が、部屋に嫌という程に響く。空っぽの箱に落ちてはそのまますり抜けていくみたいな感覚に抵抗しようと寝返りをしたところで届く音は変わらない。
「まだひるまえ、」
カーテンの隙間から差し込む日差しが眩しいのに、それを閉じるまでにも至らずに、またベッドに潜る。
気を紛らわせるためにつけたテレビも、つまらない。あ、高井が好きって言ってたキャラクターってこんな声だったよな。なんて、再放送されているアニメに気が取られる。
ここ数日、連絡をとっていない。とっていないというか、私がスマホを開かないから、連絡が来てるかすら分からなくて。液晶に触れても起動しないスマホは電源なんて切れていて、充電ケーブルを探しにベッドから這い出る。
「あ、通知、すごい」
何百件ととめどなく鳴る通知が嫌で、速攻マナーモード。
アプリを開いて一番上。ピン留めしているアイコンを開く。
『美味しそうなケーキ買ったんだけど食べる?』
『ご飯食べいこー?』
『いまなにしてる?』
『みて、はーふついんした』
そんな些細な連絡も途中からだんだん感覚が空いて、何も来なくなった。
「だいじょうぶ、いきてる、、」
送信を押そうとして少し躊躇う。
んー、
あっ、
「もしもし、」
『んぁ?ゆーさん?ねてた?』
「ううん、おきてた」
『よし、お家入れて』
「え?」
『いま、お家の前です』
「、わかった」
鍵を捻って、ドアを開けたら、目の前にはにっこにこの高井。
「生きてた?」
「生きてる」
「お腹すいてない?」
「すいてる」
「お寿司食べれる?」
「食べる」
「みて」
かさっ。っと、手提げで持ち帰ってきたお寿司が目の前に。
「今日はね連絡つかなくても突撃しようと思ってたんだー」
「そか」
「最近えらいえらいしてなかったから」
くしゃっと頭を撫でられる。私より少し大きな手のひらがあったかくて。その手を握りしめてしまう。
「ゆうさんの制服、埃被っちゃうんじゃない?」
「別にいいよ」
「動けそうな日教えてね、学校休むから」
「なんで」
「どっかさ、遠くに行かない?海とか、水族館とか、、博物館とか?」
高井はいつもそう。私のことを優先してくれるけど、高井の気持ちはどこに置いていってしまっているの?って。
「あの、さ。」
「ん?」
「たかいはどうして私のこと、そんなにかんがえてくれるの?」
こんなに動揺している高井を初めて見たような気がする。目が合わなくなって、いつもはよく動く口がぴたりと止まって。
「たかい、どうして?」
「どうしてって、、ゆうさんはきっと覚えてないだろうけど」
「天使になって欲しくないから」
「天使、って」
「ゆうさん、天使になれたらどれだけ自由になるかなって、苦しまなくていいかなって、」
瞳に徐々に溜まっていく涙はひとつまばたきをしたらこぼれ落ちてしまいそうな程に大きくて。
泣かないでなんて言えない。
「お節介なのは分かってる、嫌なら突き飛ばしてくれたっていい、もう二度と会わないから」
「でもね、ゆうさんが少しでも楽しいって思ってくれることをしたくて」
「その隣にりかがいれたらいいなって、それだけ」
「ごめんね、」
振り返って帰ろうとする高井が小さく見えて。
「まっ、て」
「なぁに?」
「ちがうの」
「ちがう?」
「ずっとたかいのことばっか考えちゃって、でもそれを伝えたら嫌われちゃうかなって思って、」
「でも、天使になったらたかいはゆうのこと見てくれるかなって、ゆうのことだけ考えてくれるかなって、」
「たかいのことすきだから」
「ばかだね、ゆうさん」
「ばかだよ」
「まだやりたいことあるでしょ?」
「ある、たかいとやりたいこと、いっぱいある」
「なら、全部しよう」
「うん」
「まだ、天使にはならないでね」
「、うん」
「よし、おすしたべよ」
「たべる」
空っぽの箱がツギハギされて、あとは感情を詰め込むだけ。
きっとだいじょうぶ。
規則正しく動き続ける時計の針の音が、部屋に嫌という程に響く。空っぽの箱に落ちてはそのまますり抜けていくみたいな感覚に抵抗しようと寝返りをしたところで届く音は変わらない。
「まだひるまえ、」
カーテンの隙間から差し込む日差しが眩しいのに、それを閉じるまでにも至らずに、またベッドに潜る。
気を紛らわせるためにつけたテレビも、つまらない。あ、高井が好きって言ってたキャラクターってこんな声だったよな。なんて、再放送されているアニメに気が取られる。
ここ数日、連絡をとっていない。とっていないというか、私がスマホを開かないから、連絡が来てるかすら分からなくて。液晶に触れても起動しないスマホは電源なんて切れていて、充電ケーブルを探しにベッドから這い出る。
「あ、通知、すごい」
何百件ととめどなく鳴る通知が嫌で、速攻マナーモード。
アプリを開いて一番上。ピン留めしているアイコンを開く。
『美味しそうなケーキ買ったんだけど食べる?』
『ご飯食べいこー?』
『いまなにしてる?』
『みて、はーふついんした』
そんな些細な連絡も途中からだんだん感覚が空いて、何も来なくなった。
「だいじょうぶ、いきてる、、」
送信を押そうとして少し躊躇う。
んー、
あっ、
「もしもし、」
『んぁ?ゆーさん?ねてた?』
「ううん、おきてた」
『よし、お家入れて』
「え?」
『いま、お家の前です』
「、わかった」
鍵を捻って、ドアを開けたら、目の前にはにっこにこの高井。
「生きてた?」
「生きてる」
「お腹すいてない?」
「すいてる」
「お寿司食べれる?」
「食べる」
「みて」
かさっ。っと、手提げで持ち帰ってきたお寿司が目の前に。
「今日はね連絡つかなくても突撃しようと思ってたんだー」
「そか」
「最近えらいえらいしてなかったから」
くしゃっと頭を撫でられる。私より少し大きな手のひらがあったかくて。その手を握りしめてしまう。
「ゆうさんの制服、埃被っちゃうんじゃない?」
「別にいいよ」
「動けそうな日教えてね、学校休むから」
「なんで」
「どっかさ、遠くに行かない?海とか、水族館とか、、博物館とか?」
高井はいつもそう。私のことを優先してくれるけど、高井の気持ちはどこに置いていってしまっているの?って。
「あの、さ。」
「ん?」
「たかいはどうして私のこと、そんなにかんがえてくれるの?」
こんなに動揺している高井を初めて見たような気がする。目が合わなくなって、いつもはよく動く口がぴたりと止まって。
「たかい、どうして?」
「どうしてって、、ゆうさんはきっと覚えてないだろうけど」
「天使になって欲しくないから」
「天使、って」
「ゆうさん、天使になれたらどれだけ自由になるかなって、苦しまなくていいかなって、」
瞳に徐々に溜まっていく涙はひとつまばたきをしたらこぼれ落ちてしまいそうな程に大きくて。
泣かないでなんて言えない。
「お節介なのは分かってる、嫌なら突き飛ばしてくれたっていい、もう二度と会わないから」
「でもね、ゆうさんが少しでも楽しいって思ってくれることをしたくて」
「その隣にりかがいれたらいいなって、それだけ」
「ごめんね、」
振り返って帰ろうとする高井が小さく見えて。
「まっ、て」
「なぁに?」
「ちがうの」
「ちがう?」
「ずっとたかいのことばっか考えちゃって、でもそれを伝えたら嫌われちゃうかなって思って、」
「でも、天使になったらたかいはゆうのこと見てくれるかなって、ゆうのことだけ考えてくれるかなって、」
「たかいのことすきだから」
「ばかだね、ゆうさん」
「ばかだよ」
「まだやりたいことあるでしょ?」
「ある、たかいとやりたいこと、いっぱいある」
「なら、全部しよう」
「うん」
「まだ、天使にはならないでね」
「、うん」
「よし、おすしたべよ」
「たべる」
空っぽの箱がツギハギされて、あとは感情を詰め込むだけ。
きっとだいじょうぶ。
