佐藤×高井
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「学祭、歌うから見に来てよ!」
と、パンフレットを渡されたのが五分前。帰りのホームルームで同じパンフレットを渡されたのが十分前。
そんなこと言われなくたって、俐香が立つステージは見に行くつもりだったし。でも、それを伝えたら俐香は調子乗るから言わない。
教科書とノート、筆箱をリュックに詰め込んで帰る準備万全。自転車で数分の防波堤に座ってギターを弾く俐香を見つける。
「りぃ、おまたせ」
「そんなに急がなくてよかったのに」
「いいの、私が早く会いたかったから」
小学校から同じクラスだったのに、今年は別のクラス。ずっと一緒には居られなくなったけれど、こうやって放課後は毎日会ってくれるから。
「一ヶ月後だね、学祭」
「もう緊張してきた」
「でも、あっという間だよ」
「そうだね」
そう言って、ギターを片付ける俐香。
「もう弾かないの?」
「今日はゆしゃんが迎え来たから終わり」
「りぃが歌うの好きなのに」
「学祭までとっておきたいの!」
きっと、アニメだったら「ぷんぷん」なんて効果音がつくんだろうななんて怒り方で。ギターケースを背負って、「ほら、行くよ」って、手を伸ばして。ずっと変わらないこの笑顔が好きで。
手を繋いで歩くけど、半歩後ろ。ポニーテールを揺らして歩く俐香を動画に収める。
「ゆしゃん、また動画?」
「うん」
「そんなにりかのことが好きなの〜?」
「さぁ、どうだろうね〜」
なんて言うけど。大好きだから。写真じゃなくて、動画なのは、俐香の笑顔をありのまま撮れるから。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
学祭当日。
「おーた、どうしよー」
「どうしたの?」
「見に来てと言われたのはいいんだけど、どこら辺で見るのがいいと思う?」
「うーん、前の方?どこにいてもたかいはゆうのことみつけそうだけど」
「今年は一緒に回れん!ごめんねゆしゃん!」と、一緒に登校してからというもの、俐香の姿を見ていない。
「おーの、りかどこにいるか知らない?」
「実はホームルームの後から高井の姿を見てなくて」
「そっか、ありがと」
探すことに時間を費やすのも…、と大田に言われ、学祭を楽しむことに。出し物をいくつか回って、当番して。
あと、一時間。
体育館は既に、ステージの出し物で賑わっていて、転換したとき、二列目の端っこ、ちょうど二つ空いた席に座る。
俐香が出るまでに出てきた歌ってる人も踊ってる人も話してた人も何も覚えていない。
何故か私が緊張して。
いつもは、私の隣で弾き語って、観客は私ひとりで。
真剣な表情だったり、柔らかく微笑んだり、私に向かって大きく笑顔を見せてくれたり。
今でも瞳を閉じれば、何度だってその情景が思い出せて。
あぁ、そっか。独り占めしたかったんだ。
ステージが明るくなって、指を弦にかける俐香。ふたりきりのときとは違って、緊張しているのが分かる。
いつも隣にいる俐香が、手の届かない遠い所に行ってしまったように感じるほど、皆がステージ上の俐香に視線を送って、聴き入って。
"君に見せたい景色があるよ"と。そんな言葉が俐香から紡がれて。その瞬間目が合って。
俐香の想いは音に乗せられて。だから、絶対来て欲しいって言ってたんだ。きっと、言わなくたって来ることは分かっているはずだけど、絶対に伝えたかったから。
最後の音が消えて、ステージが暗くなる。すぐにでも俐香に会いたくて。
「おーたごめん、」
「いってらっしゃーい」
大田にはごめんだけど、私は一緒に教室に戻れる状態じゃない。
体育館のステージ裏に繋がる廊下に出る。既に数人に捕まってる俐香の腕を引いて廊下を走る。
「ゆしゃん、ゆ、ゆう!」
「っ、なに?」
「一旦止まってよ、どうしたの?」
「どうしたも何も、」
ここまで来たはいいけど、何を伝えたらいいんだろう。
「あのね、私は優羽のこと大切で大好きで、離れたくないんだ」
「、うん」
「面と向かって言うのが少し恥ずかしくって、ああなっちゃった」
「……」
「ゆしゃん?」
「ひとりじめしたかった」
「え?」
「りぃの歌声も、歌ってる時の顔も全部、何もかも」
「う、うん」
「でもね、だからこそ決心ついた」
「私はりかのことだいっすき、ずっと一緒」
「それって、」
「彼女になってよ」
「…うん!」
大型犬みたいに勢いよく抱きつく俐香の背中に腕を回す。
ずっと一緒、か。悪くないな。
と、パンフレットを渡されたのが五分前。帰りのホームルームで同じパンフレットを渡されたのが十分前。
そんなこと言われなくたって、俐香が立つステージは見に行くつもりだったし。でも、それを伝えたら俐香は調子乗るから言わない。
教科書とノート、筆箱をリュックに詰め込んで帰る準備万全。自転車で数分の防波堤に座ってギターを弾く俐香を見つける。
「りぃ、おまたせ」
「そんなに急がなくてよかったのに」
「いいの、私が早く会いたかったから」
小学校から同じクラスだったのに、今年は別のクラス。ずっと一緒には居られなくなったけれど、こうやって放課後は毎日会ってくれるから。
「一ヶ月後だね、学祭」
「もう緊張してきた」
「でも、あっという間だよ」
「そうだね」
そう言って、ギターを片付ける俐香。
「もう弾かないの?」
「今日はゆしゃんが迎え来たから終わり」
「りぃが歌うの好きなのに」
「学祭までとっておきたいの!」
きっと、アニメだったら「ぷんぷん」なんて効果音がつくんだろうななんて怒り方で。ギターケースを背負って、「ほら、行くよ」って、手を伸ばして。ずっと変わらないこの笑顔が好きで。
手を繋いで歩くけど、半歩後ろ。ポニーテールを揺らして歩く俐香を動画に収める。
「ゆしゃん、また動画?」
「うん」
「そんなにりかのことが好きなの〜?」
「さぁ、どうだろうね〜」
なんて言うけど。大好きだから。写真じゃなくて、動画なのは、俐香の笑顔をありのまま撮れるから。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
学祭当日。
「おーた、どうしよー」
「どうしたの?」
「見に来てと言われたのはいいんだけど、どこら辺で見るのがいいと思う?」
「うーん、前の方?どこにいてもたかいはゆうのことみつけそうだけど」
「今年は一緒に回れん!ごめんねゆしゃん!」と、一緒に登校してからというもの、俐香の姿を見ていない。
「おーの、りかどこにいるか知らない?」
「実はホームルームの後から高井の姿を見てなくて」
「そっか、ありがと」
探すことに時間を費やすのも…、と大田に言われ、学祭を楽しむことに。出し物をいくつか回って、当番して。
あと、一時間。
体育館は既に、ステージの出し物で賑わっていて、転換したとき、二列目の端っこ、ちょうど二つ空いた席に座る。
俐香が出るまでに出てきた歌ってる人も踊ってる人も話してた人も何も覚えていない。
何故か私が緊張して。
いつもは、私の隣で弾き語って、観客は私ひとりで。
真剣な表情だったり、柔らかく微笑んだり、私に向かって大きく笑顔を見せてくれたり。
今でも瞳を閉じれば、何度だってその情景が思い出せて。
あぁ、そっか。独り占めしたかったんだ。
ステージが明るくなって、指を弦にかける俐香。ふたりきりのときとは違って、緊張しているのが分かる。
いつも隣にいる俐香が、手の届かない遠い所に行ってしまったように感じるほど、皆がステージ上の俐香に視線を送って、聴き入って。
"君に見せたい景色があるよ"と。そんな言葉が俐香から紡がれて。その瞬間目が合って。
俐香の想いは音に乗せられて。だから、絶対来て欲しいって言ってたんだ。きっと、言わなくたって来ることは分かっているはずだけど、絶対に伝えたかったから。
最後の音が消えて、ステージが暗くなる。すぐにでも俐香に会いたくて。
「おーたごめん、」
「いってらっしゃーい」
大田にはごめんだけど、私は一緒に教室に戻れる状態じゃない。
体育館のステージ裏に繋がる廊下に出る。既に数人に捕まってる俐香の腕を引いて廊下を走る。
「ゆしゃん、ゆ、ゆう!」
「っ、なに?」
「一旦止まってよ、どうしたの?」
「どうしたも何も、」
ここまで来たはいいけど、何を伝えたらいいんだろう。
「あのね、私は優羽のこと大切で大好きで、離れたくないんだ」
「、うん」
「面と向かって言うのが少し恥ずかしくって、ああなっちゃった」
「……」
「ゆしゃん?」
「ひとりじめしたかった」
「え?」
「りぃの歌声も、歌ってる時の顔も全部、何もかも」
「う、うん」
「でもね、だからこそ決心ついた」
「私はりかのことだいっすき、ずっと一緒」
「それって、」
「彼女になってよ」
「…うん!」
大型犬みたいに勢いよく抱きつく俐香の背中に腕を回す。
ずっと一緒、か。悪くないな。
