気付いた時には、車は舗装された道を抜け、木々に囲まれたでこぼこ道を進んでいた。


「おはよう、りこちゃん。よく寝れた？」

「んぅ、おはよう…」

「もうすぐで着くからね」


着いたのは、大きく構えられた玄関に、玄関先には迎えに来た人間がずらりと並んでいる。


「人がいっぱいいる」

「あの人たちはね、メイドさんたちだよ。今日からりこちゃんもお世話になるからね」


車を降りれば、冬が来たことを報せるように、ひゅうと吹いて、肌がぎゅっと縮こまる。


「寒いね。中に入っちゃうか」


屋敷は、ホールは煌びやかなガラスが大きく窓にはめられている。


廊下を進めば、これまでに見たことがない数の部屋。


「れいな様お帰りなさいませ」と、メイドさんたちは口々に伝えていく。


この時にやっと、名前が「れいな」だと知った。


「さ、ここがりこちゃんの部屋だよ」


通された部屋はいままでに過ごしたことがないほどに広く、自分の部屋と言われ絶句せざるを得ない。


｢私はこれから仕事があるから。あとは頼むね｣

｢｢はぁい｣｣


れいなさんがいなくなった部屋に残された2人の女の人と私。


｢そんなに緊張しなくても大丈夫だよ〜｣

｢ほぼ丸投げなのも、麗奈ｻﾏって感じだけど｣

｢れいなちゃんも暇じゃないもの｣

｢お姉さんたちは…？｣

｢そうだよね。私は璃花。こっちは優月｣

｢よろしくね、りこちゃん｣

｢よろしくお願いします…｣


璃花さんと優月さんはテキパキと私の身の回りを世話していく。


｢りこちゃんはなにか嫌いな食べ物とかある〜？｣

｢特にないです…｣

｢…！良かったぁ〜｣

｢璃花のご飯ね、美味しいから。楽しみにしてて｣


無表情で世話をしてくれていたお姉さんが顔を綻ばせてそう言うから、きっと凄く美味しいんだろう。


数時間後、部屋を出て、大きな食堂へと向かう。


食堂は、真ん中に大きなテーブル。壁には見たことない大きさの絵画や、大きな暖炉、動物の剥製が置かれていた。


｢りこちゃん！りこちゃんの席はここね〜｣

｢あ、あの｣

｢ここにあるもの、全部りこちゃんのだからね。ゆっくり食べてね｣


目の前にあるのは温かなご馳走ばかり。スラム街にいた時も、館にいた時も想像出来得なかった、昔に絵本で読んだ、絵に描いたようなものがそこに並んでいた。



be continued＿