Brown Rat.
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痛みで目が覚める。
気を失う前よりは痛みは小さくなったものの、火傷させられた場所はいまだに熱を帯びて、ただれた肌が正常に戻ろうと必死で上手く体が動かせない。
首の付け根に押し当てられた熱のせいで、息をするのも一苦労。
「起きたか」
「……」
「売られたんだから、もう助けに来てくれる人なんかいないからな」
「わかってる」
「なんだその口の聞き方」
掠れた声でかろうじて返事はできたものの、何か癇に障ったのか、蹴飛ばされ、部屋の隅に転がる。
「出す前に傷物にすんなよ」
「わりぃ」
蹴られた場所が痛むおかげで、さっきまでの痛みが分散されて、呼吸がしやすくなった。
「そんなに睨んでも何も変わらねぇよ。恨むんだったら、お前の親を恨むんだな」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
焼けた肌が元に戻って、はっきりと刻印が浮かび、文字が認識できるようになった頃。
夜になれば、小さなひとり部屋から引っ張り出され、大勢の大人が待つ大きな部屋へと行くことが多くなった。
明らかに売られている実感がする。
檻の向こうから見える目は、さまざまな感情を含んでいて。
周りに並ぶ檻の中にも、歳が近い子が多く見える。皆、多種多様に怯えている。
怯えたところで何も変わらない。そんなこと、とうにわかっている。
「キミ、いい目してるね。僕のモノになるかい?」
そうか。歳が近い子しかいないのはそういうことか。
こんな大人たちに性的に消費されて、最終的に捨てられてしまうのか。
スラム街に住んでる時に誰かに聞いたことがある。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
人前に晒されて数十回が経った時、突如としてあなたは現れた。
今まで来た人とは違って、綺麗なシンプルですっきりとしたドレスに身を包んで颯爽と歩く姿は、誰も寄せ付けない強さがあって。
「この子買います」
と。
「貴女のこと気に入った。是非うちに来て」
「私…?」
「そう。この地獄から救ってあげる」
ひとことで言えば、聖母のようだった。
ここを地獄と言ってしまうほどに、ここを分かりきっていたあなたに、このとき既に心惹かれていたのだと思う。
恋なのか愛なのかは分からない。ただ、惹かれていたのは確かだと思う。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
檻から出された時、周りの檻に入っている子たちの目線と、他の客の目線が痛い。
棘のように飛ばされる目線と言葉は、刺さり抜けることなく、深くまで刺さって、傷を広げる。
「気にしなくていいよ。貴女とは違うところで出会いたかったな」
不思議な人だと思った。徐々に明るいところに近付くと、真紅のドレスが微かにキラキラと輝いていて、この光に手を伸ばしたくなる。
「キラキラ気になる?」
「……はい」
こんなにキラキラしたものを近くで見るのは初めてで。こんなキラキラが眩しくて。生きてる世界が全く違うことを嫌でも思い知らされる。
「そんな顔しないで。貴女には沢山綺麗なものを見てほしいの…。買うという選択肢しかなかっことを許して…」
今まで見たことのある人間の中で、一番綺麗な涙だった。キラキラしてて、手を伸ばしたらパッと消えちゃいそうで。
気づいたら触れていた。
「……!?」
「ごっ、ごめんなさい」
「どうして謝るの?」
「勝手に触っちゃった、から…」
「それは貴女が優しい証拠だよ」
いつの間にか溢れ出していた涙はあなたの親指で拭われていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「お名前教えて?」
「りこ」
「りこちゃん。よろしくね」
「っ、はい」
これまでに見たことない大きな車に乗せられて走り出す。
「眠たくなってきた?」
「ねむたくない…」
「ここはもう安心していいからね」
「…うん」
緊張の糸が切れ、その糸で持ち上がっていた瞼が下がってくる。
車の心地良い揺れに触発された睡魔は、頭角を表して消えることがない。
枯れた葉っぱを踏んで進む車は、カサカサと音を奏で、冬の訪れを響かせていた。
be continued_
気を失う前よりは痛みは小さくなったものの、火傷させられた場所はいまだに熱を帯びて、ただれた肌が正常に戻ろうと必死で上手く体が動かせない。
首の付け根に押し当てられた熱のせいで、息をするのも一苦労。
「起きたか」
「……」
「売られたんだから、もう助けに来てくれる人なんかいないからな」
「わかってる」
「なんだその口の聞き方」
掠れた声でかろうじて返事はできたものの、何か癇に障ったのか、蹴飛ばされ、部屋の隅に転がる。
「出す前に傷物にすんなよ」
「わりぃ」
蹴られた場所が痛むおかげで、さっきまでの痛みが分散されて、呼吸がしやすくなった。
「そんなに睨んでも何も変わらねぇよ。恨むんだったら、お前の親を恨むんだな」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
焼けた肌が元に戻って、はっきりと刻印が浮かび、文字が認識できるようになった頃。
夜になれば、小さなひとり部屋から引っ張り出され、大勢の大人が待つ大きな部屋へと行くことが多くなった。
明らかに売られている実感がする。
檻の向こうから見える目は、さまざまな感情を含んでいて。
周りに並ぶ檻の中にも、歳が近い子が多く見える。皆、多種多様に怯えている。
怯えたところで何も変わらない。そんなこと、とうにわかっている。
「キミ、いい目してるね。僕のモノになるかい?」
そうか。歳が近い子しかいないのはそういうことか。
こんな大人たちに性的に消費されて、最終的に捨てられてしまうのか。
スラム街に住んでる時に誰かに聞いたことがある。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
人前に晒されて数十回が経った時、突如としてあなたは現れた。
今まで来た人とは違って、綺麗なシンプルですっきりとしたドレスに身を包んで颯爽と歩く姿は、誰も寄せ付けない強さがあって。
「この子買います」
と。
「貴女のこと気に入った。是非うちに来て」
「私…?」
「そう。この地獄から救ってあげる」
ひとことで言えば、聖母のようだった。
ここを地獄と言ってしまうほどに、ここを分かりきっていたあなたに、このとき既に心惹かれていたのだと思う。
恋なのか愛なのかは分からない。ただ、惹かれていたのは確かだと思う。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
檻から出された時、周りの檻に入っている子たちの目線と、他の客の目線が痛い。
棘のように飛ばされる目線と言葉は、刺さり抜けることなく、深くまで刺さって、傷を広げる。
「気にしなくていいよ。貴女とは違うところで出会いたかったな」
不思議な人だと思った。徐々に明るいところに近付くと、真紅のドレスが微かにキラキラと輝いていて、この光に手を伸ばしたくなる。
「キラキラ気になる?」
「……はい」
こんなにキラキラしたものを近くで見るのは初めてで。こんなキラキラが眩しくて。生きてる世界が全く違うことを嫌でも思い知らされる。
「そんな顔しないで。貴女には沢山綺麗なものを見てほしいの…。買うという選択肢しかなかっことを許して…」
今まで見たことのある人間の中で、一番綺麗な涙だった。キラキラしてて、手を伸ばしたらパッと消えちゃいそうで。
気づいたら触れていた。
「……!?」
「ごっ、ごめんなさい」
「どうして謝るの?」
「勝手に触っちゃった、から…」
「それは貴女が優しい証拠だよ」
いつの間にか溢れ出していた涙はあなたの親指で拭われていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「お名前教えて?」
「りこ」
「りこちゃん。よろしくね」
「っ、はい」
これまでに見たことない大きな車に乗せられて走り出す。
「眠たくなってきた?」
「ねむたくない…」
「ここはもう安心していいからね」
「…うん」
緊張の糸が切れ、その糸で持ち上がっていた瞼が下がってくる。
車の心地良い揺れに触発された睡魔は、頭角を表して消えることがない。
枯れた葉っぱを踏んで進む車は、カサカサと音を奏で、冬の訪れを響かせていた。
be continued_