Brown Rat.
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この国は、大きな戦争を終え、大戦景気によって産業革命が起き、大きく力を付けていた。
その影響で貴族は力を増し、代償として路地裏にはスラム街が広がっていった。今まで手動だったものが自動になり、下っ端として働いていた国民は解雇された。私の親もその例に漏れない。
生きている意味などわからず、泥水を啜ってなんとか生き長らえる。そんな生活。
街のはずれにある小さな畑で採れた野菜を売って金にして、生きていく最低限の生活を送っていた。
スラム街を抜けた先のとある館。珍しく出かけようと言われた時は嬉しかった。明らかにいつもとは荷物も服装も違うから。ドブネズミみたいな生活から抜け出せるのかと。
館に近づくにつれて、薄々気付かざるを得なかった。嬉々として館に私を預けた父の顔は忘れられない。
売られてしまったのだと。呆然として、涙も出てこなかった。
時代が悪かった。人が要らない、機械で効率化できてしまうようになったこの時代が。そう思いたかった。
金欲しさに実の娘を売ってしまうほどに醜くなった父の背中を見送ってそう思った。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
館の生活は、スラム街にいた頃よりは快適だと思う。外に出られず、陽の光を浴びることは無くなってしまったけれど。
屋根があって、毎日絶対にご飯が出る。泥水を啜る心配もない。
この時はまだ知らなかった。
この館で夜な夜な行われていることが。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
館に来てからどのくらい経ったのだろうか。
部屋にある小さな窓から覗く葉が徐々に色が変わり始め、黄色く色づき始めた頃。
部屋に篭りっきりだった私の元に、高そうなスーツに身を包んだ男が訪れた。
身なりを綺麗にされ、狭い地下室へと連れてこられる。
何をされるのかと身構えていると、用意されていたのは熱々に熱された鉄の塊。首の付け根の辺りと、左手人差し指。
押し当てられた鉄の塊は皮膚を焼き焦がし、溶かし、二度と消えることの無い傷を遺す。
人間としての価値が無くなってしまったと、そこで初めて気付いた。
こんな奴らの前で泣くものかと、歯を食いしばる。
火傷したところがじくじくと全身へと痛みを拡げる。まるで全身が心臓になってしまったかのように。
いっその事、ここで死んでしまった方が、この先の未来、楽なのではないかと思ってしまうほどに、痛みが蝕んで正常に物事を考えられない。
少しでもこの痛みから気を紛らわそうとすれば、直ぐに意識が途切れてしまうのは明確で。
「耐えたって意味は無いからな」
そんなこと分かってる。
ここで言い返したって、この先に少なからず待っている平穏な生活はやってこない。
「泣き顔もそそられる」と意味わからないことをほざく男を横目に、徐々に遠くなる意識は何も受付けなかった。
be continued_
その影響で貴族は力を増し、代償として路地裏にはスラム街が広がっていった。今まで手動だったものが自動になり、下っ端として働いていた国民は解雇された。私の親もその例に漏れない。
生きている意味などわからず、泥水を啜ってなんとか生き長らえる。そんな生活。
街のはずれにある小さな畑で採れた野菜を売って金にして、生きていく最低限の生活を送っていた。
スラム街を抜けた先のとある館。珍しく出かけようと言われた時は嬉しかった。明らかにいつもとは荷物も服装も違うから。ドブネズミみたいな生活から抜け出せるのかと。
館に近づくにつれて、薄々気付かざるを得なかった。嬉々として館に私を預けた父の顔は忘れられない。
売られてしまったのだと。呆然として、涙も出てこなかった。
時代が悪かった。人が要らない、機械で効率化できてしまうようになったこの時代が。そう思いたかった。
金欲しさに実の娘を売ってしまうほどに醜くなった父の背中を見送ってそう思った。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
館の生活は、スラム街にいた頃よりは快適だと思う。外に出られず、陽の光を浴びることは無くなってしまったけれど。
屋根があって、毎日絶対にご飯が出る。泥水を啜る心配もない。
この時はまだ知らなかった。
この館で夜な夜な行われていることが。
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館に来てからどのくらい経ったのだろうか。
部屋にある小さな窓から覗く葉が徐々に色が変わり始め、黄色く色づき始めた頃。
部屋に篭りっきりだった私の元に、高そうなスーツに身を包んだ男が訪れた。
身なりを綺麗にされ、狭い地下室へと連れてこられる。
何をされるのかと身構えていると、用意されていたのは熱々に熱された鉄の塊。首の付け根の辺りと、左手人差し指。
押し当てられた鉄の塊は皮膚を焼き焦がし、溶かし、二度と消えることの無い傷を遺す。
人間としての価値が無くなってしまったと、そこで初めて気付いた。
こんな奴らの前で泣くものかと、歯を食いしばる。
火傷したところがじくじくと全身へと痛みを拡げる。まるで全身が心臓になってしまったかのように。
いっその事、ここで死んでしまった方が、この先の未来、楽なのではないかと思ってしまうほどに、痛みが蝕んで正常に物事を考えられない。
少しでもこの痛みから気を紛らわそうとすれば、直ぐに意識が途切れてしまうのは明確で。
「耐えたって意味は無いからな」
そんなこと分かってる。
ここで言い返したって、この先に少なからず待っている平穏な生活はやってこない。
「泣き顔もそそられる」と意味わからないことをほざく男を横目に、徐々に遠くなる意識は何も受付けなかった。
be continued_
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