的野×向井
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八月十五日。
「夏は嫌いかな」
と眩しすぎて目を開けられない程に照らされた太陽を背に、そう呟くキミを横目に猫を撫でる。目を細め気持ちよさそうに喉を鳴らしていた猫は、ふわぁっと欠伸をひとつして自分の膝からおりる。刹那、走り出す猫と追いかける君。信号機ひとつないこの田舎でこんなにも大きなトラックが走ることはそうそうないのに、なんでこの時に限って。
砂利道をそこそこのスピードで走り抜けるトラックが身体に当たる。身に危険が及ぶ時は全てがスローモーションに見えるって言われるが、これが本当のことなのだと、このとき頭にふと過ぎった。
ひしゃげる身体。巻き込まれ血飛沫を撒きながら、徐々に人間としての形を保てなくなる身体。急ブレーキを掛けたことによって、四肢は捥がれ、血の海で辺り一面を赤く染まる。呆然として焦点が定まらない瞳を必死に人間ではなくなった"それ"に合わせる。見たくない光景ではある。だけど、遠くを見ても陽炎がゆらゆら嗤うから。蝉がケラケラと嗤うから。呼吸の仕方も忘れ、赤く染まった君を抱いて意識を手放した。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
鳴り響くアラーム。昨日のことがヤケに鮮明に思い出せる。目に入った画面が映し出しているのは"八月十四日"。昨日というか、一昨日に戻っているではないか。昨日見たのも夢であって欲しいと願いながらキミと待ち合わせる。家から少し遠くの商店街。ひとしきり楽しんで、日が沈みかけ、空が橙と紫が混ざり合う時間。「そろそろ帰ろうか」と踏み出した途端、耳の横で劈くような高い音。地面が割れ、落ちてきた鉄骨はキミをぺしゃっと潰す。脳天からひしゃげた身体はもう形すらない。
これじゃあ昨日と一緒じゃないか。
自分の白いスニーカーを染める赤。商店街を歩いていた人達がしきりに助けを呼ぶが、雑音にしか聞こえない。ただ、耳には蝉の声が嫌という程聞こえる。また、嗤うように。どこかの店先に吊るされた風鈴も、所狭しと植えられた樹々も全て自分のことを嗤っているように聞こえる。遠くに見える陽炎を眺めて、コレが嘘であればいいのにと、また意識を手放した。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
何度起きても、何度同じ日々を送っても結末は同じ。そこに至る順序が違ったり、失い方は違えども、最後に赤を遺していなくなるキミ。全てが脳裏に残っている。未だに夏から逃げられない。蝉も風鈴も陽炎も夏から逃がしてくれない。
今日もまたトラックにぶち当たってひしゃげるキミを見る。君の瞳には何が映っているのだろうか。自分か猫かそれ以外か。遠くで揺れる陽炎はまた嗤う。慣れたけど慣れたくない。血の匂いが充満するここは意識を手放すのに十分で。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
八月十四日。
また同じ日々を繰り返す。ひとつでも行動を変えようかと思っても、行動しても結末が変わることはない。
またどこかで待ち合わせ。
またキミがいなくなるのには耐えられない。
だけど、結末は変わらないから。
ひしゃげるキミを、純葉を見るのはもう懲り懲りだと、脚元に擦り寄る猫にそう呟いた。
「夏は嫌いかな」
と眩しすぎて目を開けられない程に照らされた太陽を背に、そう呟くキミを横目に猫を撫でる。目を細め気持ちよさそうに喉を鳴らしていた猫は、ふわぁっと欠伸をひとつして自分の膝からおりる。刹那、走り出す猫と追いかける君。信号機ひとつないこの田舎でこんなにも大きなトラックが走ることはそうそうないのに、なんでこの時に限って。
砂利道をそこそこのスピードで走り抜けるトラックが身体に当たる。身に危険が及ぶ時は全てがスローモーションに見えるって言われるが、これが本当のことなのだと、このとき頭にふと過ぎった。
ひしゃげる身体。巻き込まれ血飛沫を撒きながら、徐々に人間としての形を保てなくなる身体。急ブレーキを掛けたことによって、四肢は捥がれ、血の海で辺り一面を赤く染まる。呆然として焦点が定まらない瞳を必死に人間ではなくなった"それ"に合わせる。見たくない光景ではある。だけど、遠くを見ても陽炎がゆらゆら嗤うから。蝉がケラケラと嗤うから。呼吸の仕方も忘れ、赤く染まった君を抱いて意識を手放した。
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鳴り響くアラーム。昨日のことがヤケに鮮明に思い出せる。目に入った画面が映し出しているのは"八月十四日"。昨日というか、一昨日に戻っているではないか。昨日見たのも夢であって欲しいと願いながらキミと待ち合わせる。家から少し遠くの商店街。ひとしきり楽しんで、日が沈みかけ、空が橙と紫が混ざり合う時間。「そろそろ帰ろうか」と踏み出した途端、耳の横で劈くような高い音。地面が割れ、落ちてきた鉄骨はキミをぺしゃっと潰す。脳天からひしゃげた身体はもう形すらない。
これじゃあ昨日と一緒じゃないか。
自分の白いスニーカーを染める赤。商店街を歩いていた人達がしきりに助けを呼ぶが、雑音にしか聞こえない。ただ、耳には蝉の声が嫌という程聞こえる。また、嗤うように。どこかの店先に吊るされた風鈴も、所狭しと植えられた樹々も全て自分のことを嗤っているように聞こえる。遠くに見える陽炎を眺めて、コレが嘘であればいいのにと、また意識を手放した。
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何度起きても、何度同じ日々を送っても結末は同じ。そこに至る順序が違ったり、失い方は違えども、最後に赤を遺していなくなるキミ。全てが脳裏に残っている。未だに夏から逃げられない。蝉も風鈴も陽炎も夏から逃がしてくれない。
今日もまたトラックにぶち当たってひしゃげるキミを見る。君の瞳には何が映っているのだろうか。自分か猫かそれ以外か。遠くで揺れる陽炎はまた嗤う。慣れたけど慣れたくない。血の匂いが充満するここは意識を手放すのに十分で。
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八月十四日。
また同じ日々を繰り返す。ひとつでも行動を変えようかと思っても、行動しても結末が変わることはない。
またどこかで待ち合わせ。
またキミがいなくなるのには耐えられない。
だけど、結末は変わらないから。
ひしゃげるキミを、純葉を見るのはもう懲り懲りだと、脚元に擦り寄る猫にそう呟いた。
