的野×向井
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全部ひとりじめしたいと思うこの気持ちはなんなんだろうか。笑った顔も、泣いてる顔も、なにかに真剣に取り組んでいる顔も、全て自分に向けてくれたらなんて思うのはなぜだろう。
学校内では特に絡むことはない。よく固まるグループが同じわけでもない。だけど、みんなより少し前に出会ったから。だから、純葉のことはみんなより少し知っているはずだし、純葉も少しは信頼を置いてくれている気がする。
だからかな。この曖昧な関係に名前を付けたくなったのは。友達以上恋人未満とはよく言うけど、この気持ちが純葉と恋人になりたいという気持ちなのかは分からない。会うだけで良かった。話すだけで良かった。なのに、もっと欲しくなって。
「友達でなきゃいけないのかな」
なんて、ボソッと呟いた。
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そんな感情になってから、一年が経った、高校二年生の夏。一番騒げるこの歳。誰と夏祭り行くだの、誰のことが好きだの、そういう話題で教室は盛り上がる。私はそんな空気から逃げたくて屋上へ駆け上がる。真っ青な空に一際目立って輝く太陽は純葉みたいで目を瞑りたくなる。私と純葉が釣り合うわけが無い。そもそもお互いオンナノコだし。これを恋と言うのだなと自覚して手放した。
なのに、どうして純葉はこうも人の気持ちに残るのか。
「みお、授業始まるよ」
「んー、ん?!まじ?!」
「まぁ、自習だからこのままサボってもいいけど」
「なら、サボる」
「いひひ、言うと思った」
この空気感が好き。もう、この関係のままでいい。そう思うのは野暮であろうか。
「なぁ、いとはな、みおに聞いて欲しいことがあって」
「…っ、うん」
「いとはに彼氏が出来たって言ったらどう?」
「…いいんじゃない?」
上手く笑えてただろうか。上手く返事出来てただろうか。今年誘われた海も花火も、『友達』として。純葉はそれ以外の感情はなかったんだ。と一人虚しくなる。
しーんとした空間を先に割いたのは純葉で。
「えぇ、みおなら反対してくれると思ったのに」
「え?」
「みお、いとはのこと好きじゃろ」
「好きって、まぁ好きだけど」
「それはさ、友達として?それとも…」
「もし、それに返事したとしてそれは叶う願い?」
「どうだろうね。それは、みお次第」
この曖昧な関係に名前を付けるには今しかない。波のように想いは溢れて、止まることを知らない。
「私は純葉をひとりじめしたい」
「うん」
「笑ってるのも、すぐ泣いちゃうのも、なにかに真剣な所も全部。全部私の隣がいい。何十年も友達として隣にいたけど、そうじゃなくて…」
「…みおの好きはこういうこと、じゃろ?」
自分の唇に触れたのが純葉の唇だと、気付くのにどのくらい経っただろう。目の前には顔を真っ赤に染めた純葉が俯いていて、ここまでウジウジしていた自分が情けなくて。目の前にいる純葉を思い切り抱きしめた。
「私は純葉のことが好き、キスだってしたいし、それ以上…んー、なんでもない、けど、」
「いひひっ、その前に言うことあるやろ?」
「うん。純葉さん、付き合ってください」
「お願いします」
ぱっと咲いた太陽はこれでもかと私を照らしてくる。この太陽を目を瞑らずに、釣り合うように。
