村井×山下
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「ぁたし、むらいゆぅ!よろしく!」
と、隣のきみは言う。たどたどしい言葉に似合わず表情だけは太陽みたいに明るくて。
親の都合で引越しを余儀なくされ、踏み入れた地で、新しく通うことになった学校。新しい環境が怖くて。本当は逃げ出したかった。だけど、そこで出会ったのは耳が聞こえないきみ。
話しかけられたあと、他の女子は「村井には関わんない方がいいよ、あいつ変だから」って、すごく近くで言われてるのに何ひとつ嫌な顔せずニコニコして。最初の印象は気味が悪かった。聞こえないのか、はたまた聞かないふりしてるのか、聞こえているはずなのに自分の事だと思っていないのかと思ったけど。ある日、下ろされた髪の隙間から覗く耳に付いているものを見て気が付いた。
聞こえないふりしてるんじゃなくて、本当に聞こえないんだって。
後々聞いてみれば、話しかけた日は偶然にも補聴器を忘れた日らしく、あの女子の会話は聞こえてなかったみたいだけど。
毎日、教室に入って最初に声を交わすのはきみで、「しづきちゃん」から「しー」へと呼び名が変わったのも、仲良くなれた証拠かなって。
耳が聞こえないハンデを持ちながら、ダンスしてる姿を見た時、何かわからない感情を抱いたけど。憧れとも、恋とも、嫉妬なのかもしれなかったけど。
けれど、日に日に悪くなっていくきみの耳は音を拾うのが難しくなって。会話をするのも前より難しくなって。踊っているきみも見れなくなって。文字で会話するようになって。その時間がもどかしくて、きみが優が変わっていくのが怖くて。聞こえない優に悪口を言ってる女子は絶えずずっといる。なのに、優には聞こえる訳なくて。自分に言われてる訳じゃないのに、ずっと投げられる悪口は、私の心を抉るから。だから、逃げた。
放課後教室で、いつも悪口を言ってる女子が優を囲んでいじめていたのを見た。逃げてしまいたかった。この場からすぐにいなくなってしまいたかった。だけど、ふとあった視線に奪われてしまって。
「っ、、、なっ、何してん、!」
「あぁ、瞳月ちゃん」
「何してるも何もわかんない?」
「ウチらはちゃんとさ、忠告したじゃん」
「忠告って優と関わんない方がいいってやつ…?」
「そうそうそう!覚えてんじゃん!」
「関わる関わんないは私が決めることや、あんたらにとやかく言われる筋合いはない」
「あぁっそ」
いじめていた女子がいなくなったふたりきりの教室できょとんとしてる優。多分一連の流れは聞こえてなかったんだろうなって思って。しゃがんで優と同じ目線になればちょっとの違和感。
「優、補聴器は?」
「ぁ、ん!」
手に握られていたのは、残骸と化したそれ。「壊れちゃった」って言う優には、あの女子たちの悪意が全く届いていないんだなって思って。
まだ優にこの気持ちを伝えるのはやめておこう。まだ、好きは聞こえなくてもいいかな。
と、隣のきみは言う。たどたどしい言葉に似合わず表情だけは太陽みたいに明るくて。
親の都合で引越しを余儀なくされ、踏み入れた地で、新しく通うことになった学校。新しい環境が怖くて。本当は逃げ出したかった。だけど、そこで出会ったのは耳が聞こえないきみ。
話しかけられたあと、他の女子は「村井には関わんない方がいいよ、あいつ変だから」って、すごく近くで言われてるのに何ひとつ嫌な顔せずニコニコして。最初の印象は気味が悪かった。聞こえないのか、はたまた聞かないふりしてるのか、聞こえているはずなのに自分の事だと思っていないのかと思ったけど。ある日、下ろされた髪の隙間から覗く耳に付いているものを見て気が付いた。
聞こえないふりしてるんじゃなくて、本当に聞こえないんだって。
後々聞いてみれば、話しかけた日は偶然にも補聴器を忘れた日らしく、あの女子の会話は聞こえてなかったみたいだけど。
毎日、教室に入って最初に声を交わすのはきみで、「しづきちゃん」から「しー」へと呼び名が変わったのも、仲良くなれた証拠かなって。
耳が聞こえないハンデを持ちながら、ダンスしてる姿を見た時、何かわからない感情を抱いたけど。憧れとも、恋とも、嫉妬なのかもしれなかったけど。
けれど、日に日に悪くなっていくきみの耳は音を拾うのが難しくなって。会話をするのも前より難しくなって。踊っているきみも見れなくなって。文字で会話するようになって。その時間がもどかしくて、きみが優が変わっていくのが怖くて。聞こえない優に悪口を言ってる女子は絶えずずっといる。なのに、優には聞こえる訳なくて。自分に言われてる訳じゃないのに、ずっと投げられる悪口は、私の心を抉るから。だから、逃げた。
放課後教室で、いつも悪口を言ってる女子が優を囲んでいじめていたのを見た。逃げてしまいたかった。この場からすぐにいなくなってしまいたかった。だけど、ふとあった視線に奪われてしまって。
「っ、、、なっ、何してん、!」
「あぁ、瞳月ちゃん」
「何してるも何もわかんない?」
「ウチらはちゃんとさ、忠告したじゃん」
「忠告って優と関わんない方がいいってやつ…?」
「そうそうそう!覚えてんじゃん!」
「関わる関わんないは私が決めることや、あんたらにとやかく言われる筋合いはない」
「あぁっそ」
いじめていた女子がいなくなったふたりきりの教室できょとんとしてる優。多分一連の流れは聞こえてなかったんだろうなって思って。しゃがんで優と同じ目線になればちょっとの違和感。
「優、補聴器は?」
「ぁ、ん!」
手に握られていたのは、残骸と化したそれ。「壊れちゃった」って言う優には、あの女子たちの悪意が全く届いていないんだなって思って。
まだ優にこの気持ちを伝えるのはやめておこう。まだ、好きは聞こえなくてもいいかな。