狗巻棘
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ズキリと痛む足首を摩ると、棘くんが不安そうに覗き込んできた。
「高菜?」
「大丈夫だよ。ちょっと捻っただけだから」
追っていた呪霊の、最後の悪あがきの一撃。それを何とか躱したものの、無理な体勢に足がもつれた。地面に倒れ込む私の代わりにすかさず棘くんが呪霊を払ってくれて、任務はひとまず完了したのだが……。
私は足首を負傷。タイツの上からでもわかるくらいには腫れていて、多分折れてはいないと思うけど、自力で歩くのは難しそうだ。
「パンダくんたちと合流して、新田さんの車まで運んでもらうよ。それまで待たせちゃうけどごめんね」
別行動をしているパンダくんたちもきっともう呪霊を払い終えている頃だろう。連絡を取ろうとスマホを取り出すと、それを棘くんが「おかか」と止めた。
「どうしたの?」
「明太子」
「いや、いいよいいよ」
「おかか! っ、す〜じ〜こ〜」
「別に棘くんが嫌って訳じゃないけど、パンダくんのが力持ちだし」
口元が隠れているのに、棘くんがむぅっと頬を膨らませているのがわかった。
俺が運ぶよ、という棘くんの提案。それ自体はとてもありがたいけれど、じゃあ素直にお願いしますとは言えなかった。ここから車までは結構距離があって棘くんに運べるとは思えなかったし、何より重いと思われたらどうしようというなけなしの乙女心からくる気持ちが強かった。
「しゃけ」「よくない」「しゃーけ」「嫌だって」
平行線の会話に終止符を打ったのは棘くんだった。イヤイヤと首を振る私に何も返さなくなってやっと諦めてくれたのかと思いきや、
「ぎゃあ⁈」
突然ふわりと身体が浮いた。安定を求めて咄嗟にしがみつくと、棘くんの顔が目の前にあって、彼が強硬手段に出たのだと気づく。
「や、やだ、下ろして」
少しでも距離を取ろうと彼の胸を押すも、押せば押すほど強く抱きかかえられてしまい、いつまで経ってもお姫様抱っこから抜け出せない。
「と、棘くん……」
「おかかー」
下ろして、という私の懇願は言うより先に却下された。薄紫の瞳が「絶対に下ろしませーん」と悪戯っ子みたいに笑っている。
「でも、私重いし」
「? おかか。こんぶ」
「嘘。絶対重い」
「おかかおかか」
「うう、無理そうだったらすぐ下ろしてね」
「しゃけ」
しっかり掴まって、と言われ、私は大人しく棘くんの首に腕を回した。再び距離が近づく。どこを見ていればいいのかわからなくて、じっと目を閉じていると、「高菜?」と声が降ってきた。
「大丈夫、痛くないよ」
「いくら」
「こ、これは本当に何でもないから、気にしないで!」
「明太子?」
顔が赤い、熱があるのでは、とおでこを近づけようとする棘くんを私は必死に両手で押し返した。「おかかぁ」と情けない声が聞こえたけれど、これ以上近づいたら、きっと怪我した足首よりも心臓のほうが大変なことになる、そんな気がした。
「高菜?」
「大丈夫だよ。ちょっと捻っただけだから」
追っていた呪霊の、最後の悪あがきの一撃。それを何とか躱したものの、無理な体勢に足がもつれた。地面に倒れ込む私の代わりにすかさず棘くんが呪霊を払ってくれて、任務はひとまず完了したのだが……。
私は足首を負傷。タイツの上からでもわかるくらいには腫れていて、多分折れてはいないと思うけど、自力で歩くのは難しそうだ。
「パンダくんたちと合流して、新田さんの車まで運んでもらうよ。それまで待たせちゃうけどごめんね」
別行動をしているパンダくんたちもきっともう呪霊を払い終えている頃だろう。連絡を取ろうとスマホを取り出すと、それを棘くんが「おかか」と止めた。
「どうしたの?」
「明太子」
「いや、いいよいいよ」
「おかか! っ、す〜じ〜こ〜」
「別に棘くんが嫌って訳じゃないけど、パンダくんのが力持ちだし」
口元が隠れているのに、棘くんがむぅっと頬を膨らませているのがわかった。
俺が運ぶよ、という棘くんの提案。それ自体はとてもありがたいけれど、じゃあ素直にお願いしますとは言えなかった。ここから車までは結構距離があって棘くんに運べるとは思えなかったし、何より重いと思われたらどうしようというなけなしの乙女心からくる気持ちが強かった。
「しゃけ」「よくない」「しゃーけ」「嫌だって」
平行線の会話に終止符を打ったのは棘くんだった。イヤイヤと首を振る私に何も返さなくなってやっと諦めてくれたのかと思いきや、
「ぎゃあ⁈」
突然ふわりと身体が浮いた。安定を求めて咄嗟にしがみつくと、棘くんの顔が目の前にあって、彼が強硬手段に出たのだと気づく。
「や、やだ、下ろして」
少しでも距離を取ろうと彼の胸を押すも、押せば押すほど強く抱きかかえられてしまい、いつまで経ってもお姫様抱っこから抜け出せない。
「と、棘くん……」
「おかかー」
下ろして、という私の懇願は言うより先に却下された。薄紫の瞳が「絶対に下ろしませーん」と悪戯っ子みたいに笑っている。
「でも、私重いし」
「? おかか。こんぶ」
「嘘。絶対重い」
「おかかおかか」
「うう、無理そうだったらすぐ下ろしてね」
「しゃけ」
しっかり掴まって、と言われ、私は大人しく棘くんの首に腕を回した。再び距離が近づく。どこを見ていればいいのかわからなくて、じっと目を閉じていると、「高菜?」と声が降ってきた。
「大丈夫、痛くないよ」
「いくら」
「こ、これは本当に何でもないから、気にしないで!」
「明太子?」
顔が赤い、熱があるのでは、とおでこを近づけようとする棘くんを私は必死に両手で押し返した。「おかかぁ」と情けない声が聞こえたけれど、これ以上近づいたら、きっと怪我した足首よりも心臓のほうが大変なことになる、そんな気がした。