狗巻棘
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「すじこ?」
「ああ、これ?」
ころりと口の中で飴を転がしていると、棘くんが不思議そうに顔を覗き込んできた。
「何味だと思う?」
「こんぶ? 明太子? 高菜?」
突然始まった飴の味当てゲーム。
りんご味、ぶどう味、ミルク味でもない。その後も色んな味を挙げてくれたけど、残念ながら全部外れだ。
「ふふ、ごめん。これ実家から送られてきた珍しい飴なんだ」
何味か当てようと難しい顔をする彼が可愛くて、つい意地悪してしまった。
私が舐めていたのは遠い故郷の、地元民しか知らないようなマイナーな飴だ。棘くんが当てられるはずがない。なのに正解を教えようとしたら、「おかか!」と断られてしまった。
「でも、当てるのは無理だと思うよ」
「おかか。いくら高菜ツナ」
「条件?」
「しゃけしゃけ」
意外と負けず嫌いな棘くんは何としても飴の味を当てたいらしい。そしてゲームをより楽しくするために、と棘くんが提示してきたある条件。それは負けた方が勝った方の言うことを何でも一つ聞く、というものだった。
「私は別にいいけど、棘くんはいいの?」
「しゃけ!」
「わかった。じゃあそれで」
約束ね、と棘くんが小指を立てるので、私も彼に従って自分の小指を絡ませた。この勝負、棘くんには悪いけど圧倒的に私が有利だ。さて、彼にはどんなお願いを聞いてもらおうか。新しくできたカフェに付き合ってもらうのもいいし、期間限定のドーナツ全制覇なんてのもーー。
「っ⁈」
ふっ、と顔に影がかかり、視線を上げた時にはすぐ目の前に棘くんがいた。僅かに開いた唇の隙間から呪印が見えて、「あ」と声を出すより先に飲み込まれる。咄嗟に押し返すも彼はそれを物ともせず、逃がさないとでもいうようにきつく私を抱きすくめた。
舌を捻じ込まれ、奥へ、奥へ。容赦なく咥内を荒らされて次第に力が抜けていく。滲む視界に映る彼は薄い紫の瞳を微かに細め、まだ終わらないと目で語っていた。
隅々まで味わい尽くすような深くて長い口づけから解放されたのは、それから随分と後のこと。口の中にあった飴はすっかり溶けてしまい、棘くんのせいでもはや味すら残っていない。
「いくら?」
力尽きて地べたにへたり込む私を棘くんが覗き込む。
「……当たり、だけど。あれはずるいと思う」
「おかか! 明太子、こんぶ!」
「なっ、確かにキスしちゃダメとは言ってないけど、なしでしょあんなの! だから約束もなし!」
「おかか」
忘れたとは言わせない、と棘くんがピンと小指を立ててくる。まさか約束破ったりしないよね、とおにぎりの具で告げられて、うぐっと何も言い返せない。
「しゃけ。すじこ、明太子」
さて、何をしてもらおうか。
そう言って耳元で囁く彼は、今までで一番、悪い顔をしていた。
「ああ、これ?」
ころりと口の中で飴を転がしていると、棘くんが不思議そうに顔を覗き込んできた。
「何味だと思う?」
「こんぶ? 明太子? 高菜?」
突然始まった飴の味当てゲーム。
りんご味、ぶどう味、ミルク味でもない。その後も色んな味を挙げてくれたけど、残念ながら全部外れだ。
「ふふ、ごめん。これ実家から送られてきた珍しい飴なんだ」
何味か当てようと難しい顔をする彼が可愛くて、つい意地悪してしまった。
私が舐めていたのは遠い故郷の、地元民しか知らないようなマイナーな飴だ。棘くんが当てられるはずがない。なのに正解を教えようとしたら、「おかか!」と断られてしまった。
「でも、当てるのは無理だと思うよ」
「おかか。いくら高菜ツナ」
「条件?」
「しゃけしゃけ」
意外と負けず嫌いな棘くんは何としても飴の味を当てたいらしい。そしてゲームをより楽しくするために、と棘くんが提示してきたある条件。それは負けた方が勝った方の言うことを何でも一つ聞く、というものだった。
「私は別にいいけど、棘くんはいいの?」
「しゃけ!」
「わかった。じゃあそれで」
約束ね、と棘くんが小指を立てるので、私も彼に従って自分の小指を絡ませた。この勝負、棘くんには悪いけど圧倒的に私が有利だ。さて、彼にはどんなお願いを聞いてもらおうか。新しくできたカフェに付き合ってもらうのもいいし、期間限定のドーナツ全制覇なんてのもーー。
「っ⁈」
ふっ、と顔に影がかかり、視線を上げた時にはすぐ目の前に棘くんがいた。僅かに開いた唇の隙間から呪印が見えて、「あ」と声を出すより先に飲み込まれる。咄嗟に押し返すも彼はそれを物ともせず、逃がさないとでもいうようにきつく私を抱きすくめた。
舌を捻じ込まれ、奥へ、奥へ。容赦なく咥内を荒らされて次第に力が抜けていく。滲む視界に映る彼は薄い紫の瞳を微かに細め、まだ終わらないと目で語っていた。
隅々まで味わい尽くすような深くて長い口づけから解放されたのは、それから随分と後のこと。口の中にあった飴はすっかり溶けてしまい、棘くんのせいでもはや味すら残っていない。
「いくら?」
力尽きて地べたにへたり込む私を棘くんが覗き込む。
「……当たり、だけど。あれはずるいと思う」
「おかか! 明太子、こんぶ!」
「なっ、確かにキスしちゃダメとは言ってないけど、なしでしょあんなの! だから約束もなし!」
「おかか」
忘れたとは言わせない、と棘くんがピンと小指を立ててくる。まさか約束破ったりしないよね、とおにぎりの具で告げられて、うぐっと何も言い返せない。
「しゃけ。すじこ、明太子」
さて、何をしてもらおうか。
そう言って耳元で囁く彼は、今までで一番、悪い顔をしていた。
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