保科宗一郎
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じぃぃっと注がれる熱い視線に顔を上げる。
そこにいたのは信頼する部下の一人。彼女は難しい顔で眉間に皺を寄せ目を細めながら、何やら両手で四角を作っていた。そう、まるでカメラのアングルを決めるみたいに。
気になるのは使っているのが親指と人差し指ではなく手すべてという点だが……被写体に対して少しばかりフレームが太すぎやしないだろうか。
「なあ、それやと俺の顔ほとんど入ってへんのやない?」
「だめ、動かないでください!」
ぴしゃりと言われて大人しく口を噤む。俺、一応隊長なんやけど、という言葉はもちろん口に出さない。いや、動くなと命令されたから出せない、が正しいか。
きゅっと大人しく口を引き結ぶことしばらく、彼女は柔らかく表情を崩してから納得したようにうんうん頷いた。
「気ぃ済んだ?」
「はい。この角度から見る保科隊長が一番保科副隊長っぽいです」
何やねんそれ。
「ねぇ隊長。髪切って黒に染めませんか。あと一人称も僕に……」
「それやと俺のアイデンティティなくなるんやけど!?」
「なくなって困ることでも?」
「あるある、大アリや!」
至極真面目な顔で言ってくるものだから、ツッコミにも力が入る。
彼女は俺の弟、宗四郎に憧れてここ第6部隊に入隊したらしい。何でも昔怪獣に襲われていたところを宗四郎に助けられたとかなんとか。で、そこから努力に努力を重ねうちに入ったものの、タイミング悪く宗四郎は第3に異動が決まり……。
その当時の彼女は宗四郎に会えない悲しみ、絶望、鬱憤諸々の全てを訓練や討伐の糧とし、今や第6部隊の精鋭の一人にまで成長した。
同時に隊長である俺へのアタリも強くなったが。それを一人だけに許していることに、彼女は気づいていない。
「保科副隊長、第6に戻ってきたりしませんかね」
「無理やろな。俺が居る限りアイツは寄り付きもせんし」
「くっ、じゃあ私が第3に……」
「お前がおらんくなったら誰がその分の戦力の穴埋めすんねん」
彼女自身、自分の立場は理解しているのだろう。ぎゅっと顔を顰めたかと思えば諦めたように息を吐いた。
そんな姿を、もう何年も見てきた。
「なぁ、そない宗四郎が好き?」
「え?」
きょとんとする彼女の顔を上から覗き込む。いつもより顔を近づければ黒い瞳に、弟ではない男の姿が映り込む。
今、お前の目の前におる男は誰や。
そう言い聞かせるように逃げようとする彼女の顔を掴んで固定すれば、その頬がじわじわと朱色に染まっていった。
その反応に少しばかり驚いていると「離してください!」と部下が渾身の力で俺を突き飛ばした。
「隊長のバカ!」
そう言って彼女はこちらを睨め付けて走り去って言ったが、やはりその顔は赤い。
「……なんや、そんな顔もできんねや」
何年もここにいない弟ばかりを追いかけていた彼女。自分のことは眼中にないと思っていたが、どうやらそうでもないらしい。だとすれば、
「本気で行くしかないなあ」
静かに、彼女の走り去ったほうを見つめる。
彼女の口から弟の名前が出なくなるまで。彼女の瞳に自分しか映らなくなるまで。
きっと、そう時間はかからないだろう。
そこにいたのは信頼する部下の一人。彼女は難しい顔で眉間に皺を寄せ目を細めながら、何やら両手で四角を作っていた。そう、まるでカメラのアングルを決めるみたいに。
気になるのは使っているのが親指と人差し指ではなく手すべてという点だが……被写体に対して少しばかりフレームが太すぎやしないだろうか。
「なあ、それやと俺の顔ほとんど入ってへんのやない?」
「だめ、動かないでください!」
ぴしゃりと言われて大人しく口を噤む。俺、一応隊長なんやけど、という言葉はもちろん口に出さない。いや、動くなと命令されたから出せない、が正しいか。
きゅっと大人しく口を引き結ぶことしばらく、彼女は柔らかく表情を崩してから納得したようにうんうん頷いた。
「気ぃ済んだ?」
「はい。この角度から見る保科隊長が一番保科副隊長っぽいです」
何やねんそれ。
「ねぇ隊長。髪切って黒に染めませんか。あと一人称も僕に……」
「それやと俺のアイデンティティなくなるんやけど!?」
「なくなって困ることでも?」
「あるある、大アリや!」
至極真面目な顔で言ってくるものだから、ツッコミにも力が入る。
彼女は俺の弟、宗四郎に憧れてここ第6部隊に入隊したらしい。何でも昔怪獣に襲われていたところを宗四郎に助けられたとかなんとか。で、そこから努力に努力を重ねうちに入ったものの、タイミング悪く宗四郎は第3に異動が決まり……。
その当時の彼女は宗四郎に会えない悲しみ、絶望、鬱憤諸々の全てを訓練や討伐の糧とし、今や第6部隊の精鋭の一人にまで成長した。
同時に隊長である俺へのアタリも強くなったが。それを一人だけに許していることに、彼女は気づいていない。
「保科副隊長、第6に戻ってきたりしませんかね」
「無理やろな。俺が居る限りアイツは寄り付きもせんし」
「くっ、じゃあ私が第3に……」
「お前がおらんくなったら誰がその分の戦力の穴埋めすんねん」
彼女自身、自分の立場は理解しているのだろう。ぎゅっと顔を顰めたかと思えば諦めたように息を吐いた。
そんな姿を、もう何年も見てきた。
「なぁ、そない宗四郎が好き?」
「え?」
きょとんとする彼女の顔を上から覗き込む。いつもより顔を近づければ黒い瞳に、弟ではない男の姿が映り込む。
今、お前の目の前におる男は誰や。
そう言い聞かせるように逃げようとする彼女の顔を掴んで固定すれば、その頬がじわじわと朱色に染まっていった。
その反応に少しばかり驚いていると「離してください!」と部下が渾身の力で俺を突き飛ばした。
「隊長のバカ!」
そう言って彼女はこちらを睨め付けて走り去って言ったが、やはりその顔は赤い。
「……なんや、そんな顔もできんねや」
何年もここにいない弟ばかりを追いかけていた彼女。自分のことは眼中にないと思っていたが、どうやらそうでもないらしい。だとすれば、
「本気で行くしかないなあ」
静かに、彼女の走り去ったほうを見つめる。
彼女の口から弟の名前が出なくなるまで。彼女の瞳に自分しか映らなくなるまで。
きっと、そう時間はかからないだろう。
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