柊登馬
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「あ、柊くん!」
「おう、お前か。久しぶりだな」
「ね。柊くんも今帰り?」
「まぁな」
風鈴高校に通う柊くんと私は小学校からの幼馴染だ。家が近所ということもあり、昔ほどではないけれど高校生になった今でも会えば近況を話す仲。
いつもは風鈴の子たちと一緒だけど今日は見回りがないとかで夕方のこの時間に帰ることになったらしい。
「珍しいね。てっきり梅宮くんたちとポトスにでもいるのかと」
「ああ、今日はちょっと親に用事頼まれててな」
「そっか。そういえばこの前もらったみかんすごくおいしかったよ! おばさんにもまたお礼言っといてくれる?」
「おう」
二人分の影が伸びる道をのんびりと歩く。私と彼は随分と身長差があるけれど、どうやら歩幅を合わせてくれているらしい。柊くんってお兄ちゃん気質というか、面倒見がいいというか、昔からさりげなく周りを気遣ってくれるんだよね。
中学の時も歳下の子たちに慕われていて、きっと高校でもそうなんだろうなと容易に想像できた。彼は高校に入ってから胃薬を手放せないようだけど、楽しく過ごしていることは話を聞いていればわかる。
別の高校に通うようになってからはそんな姿を目にすることもぐっと減って、それが少し寂しいなと思うことも。まぁ機会があったところで、今日も柊くん慕われてるなって遠くからにこにこ見守るだけだろうけど。
「何ニヤニヤしてんだよ」
「えー、別に何でもないよ」
「嘘つけ。ぜってぇ失礼なこと考えてただろ」
そんなこと……あるけども。堪えきれずふふっと声を漏らす私に、柊くんが呆れたように溜息をついた。その時だ。
「っ、ぶねぇ!」
「きゃっ!?」
突然強い力で柊くんに腕を引かれ、そのまま彼の胸に閉じ込められる。同時にすぐ目の前を自転車が勢いよく走って行き、柊くんが引っ張ってくれなかったらと思うとゾッとする。
「チッ、あの野郎。おい、大丈夫か?」
走り去る自転車を睨め付けてから、柊くんが心配そうに私に声を掛ける。私はぎゅっと彼の制服を掴みふるふると首を横に振った。
「どっか怪我でもしたのか!?」
「ちが……びっくりして腰抜けちゃって」
「はぁ!?」
かくんと力の抜けた身体を柊くんが慌てて抱き止めてくれる。私はそんな彼にしがみつくのに必死だ。心臓がまだバクバクしている。
「っ、」
一人で立つこともままならなくて柊くんに軽く体重を預けると、彼が苦しそうに胸の辺りを握りしめた。もしかして私が胃痛の原因!?
「ご、ごめん柊くん! 少ししたら立てると思うから置いてってくれても……」
「んなことできるわけねぇだろ」
絶対に置いていかないと主張するように、身体を支えてくれている腕の力がぐっと強くなる。相変わらず面倒見がいいけれど、痛いのを我慢させるわけにはいかない。
「じゃあせめて胃薬を……」
「いい。……多分効かねぇし」
「えっ!? あ、顔も赤いし、もしかして風邪?」
「違ぇよ! 頼むから動けるようになるまで大人しくしててくれ」
ふい、と私から目を逸らした柊くんの顔はやっぱりいつもより赤い。柊くんは否定してたけど、季節の変わり目は風邪をひきやすいというし、万が一ということもある。
早く帰って休ませなきゃ、そう思い早く元に戻れ私の腰〜! と念じたけれど。
(あれ? この体勢、結構やばいのでは)
異性とこんなに距離が近いのは初めてだと、今さらになって気づく。落ち着きかけていた心臓がさっきとは違う意味で跳ねるのを感じた。
彼氏がいたことのない私にはこの距離は刺激が強すぎる。相手は幼馴染の柊くんだというのに、腰より先に心臓がどうにかなってしまいそうだった。
「おう、お前か。久しぶりだな」
「ね。柊くんも今帰り?」
「まぁな」
風鈴高校に通う柊くんと私は小学校からの幼馴染だ。家が近所ということもあり、昔ほどではないけれど高校生になった今でも会えば近況を話す仲。
いつもは風鈴の子たちと一緒だけど今日は見回りがないとかで夕方のこの時間に帰ることになったらしい。
「珍しいね。てっきり梅宮くんたちとポトスにでもいるのかと」
「ああ、今日はちょっと親に用事頼まれててな」
「そっか。そういえばこの前もらったみかんすごくおいしかったよ! おばさんにもまたお礼言っといてくれる?」
「おう」
二人分の影が伸びる道をのんびりと歩く。私と彼は随分と身長差があるけれど、どうやら歩幅を合わせてくれているらしい。柊くんってお兄ちゃん気質というか、面倒見がいいというか、昔からさりげなく周りを気遣ってくれるんだよね。
中学の時も歳下の子たちに慕われていて、きっと高校でもそうなんだろうなと容易に想像できた。彼は高校に入ってから胃薬を手放せないようだけど、楽しく過ごしていることは話を聞いていればわかる。
別の高校に通うようになってからはそんな姿を目にすることもぐっと減って、それが少し寂しいなと思うことも。まぁ機会があったところで、今日も柊くん慕われてるなって遠くからにこにこ見守るだけだろうけど。
「何ニヤニヤしてんだよ」
「えー、別に何でもないよ」
「嘘つけ。ぜってぇ失礼なこと考えてただろ」
そんなこと……あるけども。堪えきれずふふっと声を漏らす私に、柊くんが呆れたように溜息をついた。その時だ。
「っ、ぶねぇ!」
「きゃっ!?」
突然強い力で柊くんに腕を引かれ、そのまま彼の胸に閉じ込められる。同時にすぐ目の前を自転車が勢いよく走って行き、柊くんが引っ張ってくれなかったらと思うとゾッとする。
「チッ、あの野郎。おい、大丈夫か?」
走り去る自転車を睨め付けてから、柊くんが心配そうに私に声を掛ける。私はぎゅっと彼の制服を掴みふるふると首を横に振った。
「どっか怪我でもしたのか!?」
「ちが……びっくりして腰抜けちゃって」
「はぁ!?」
かくんと力の抜けた身体を柊くんが慌てて抱き止めてくれる。私はそんな彼にしがみつくのに必死だ。心臓がまだバクバクしている。
「っ、」
一人で立つこともままならなくて柊くんに軽く体重を預けると、彼が苦しそうに胸の辺りを握りしめた。もしかして私が胃痛の原因!?
「ご、ごめん柊くん! 少ししたら立てると思うから置いてってくれても……」
「んなことできるわけねぇだろ」
絶対に置いていかないと主張するように、身体を支えてくれている腕の力がぐっと強くなる。相変わらず面倒見がいいけれど、痛いのを我慢させるわけにはいかない。
「じゃあせめて胃薬を……」
「いい。……多分効かねぇし」
「えっ!? あ、顔も赤いし、もしかして風邪?」
「違ぇよ! 頼むから動けるようになるまで大人しくしててくれ」
ふい、と私から目を逸らした柊くんの顔はやっぱりいつもより赤い。柊くんは否定してたけど、季節の変わり目は風邪をひきやすいというし、万が一ということもある。
早く帰って休ませなきゃ、そう思い早く元に戻れ私の腰〜! と念じたけれど。
(あれ? この体勢、結構やばいのでは)
異性とこんなに距離が近いのは初めてだと、今さらになって気づく。落ち着きかけていた心臓がさっきとは違う意味で跳ねるのを感じた。
彼氏がいたことのない私にはこの距離は刺激が強すぎる。相手は幼馴染の柊くんだというのに、腰より先に心臓がどうにかなってしまいそうだった。
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