火鱗佐々木
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この部屋に足を踏み入れるのは何年振りだろうか。
久々に入った幼馴染の部屋は子どもの頃と随分変わっていて、小物から家具まで可愛らしいもので揃えられていた。自分の部屋とはまるで違う、女らしい部屋。微かに甘い芳香が漂っている。
昔は一緒に木に登ったり、虫を採ったりしてたのに。当時の面影はもう少しも残っていない。
「ん、かりん……」
「部屋着いたぞ。じゃあ俺帰るから」
「やだ、いかないで」
立ち上がろうとすれば、くんと彼女が服の裾を引っ張った。涙に濡れた顔はぐしゃぐしゃだ。
「一人にしないで」
家が近所の、歳上の幼馴染。先程路上で酔い潰れうずくまっているのを見かけて「大丈夫ですか」と声をかけたら、その相手が彼女だった。
数年ぶりの再会。大人になった彼女はすっかり見た目が変わっていて最初は気づかなかったが「火鱗?」と俺を呼ぶ声だけは昔と同じだった。姉御肌だった幼馴染、彼女はこの数年で安易に触れるのが躊躇われるほど弱々しくなっていた。
「あはは、カッコ悪いとこ見られちゃった」
聞けば、彼女は恋人にフラれたらしい。好きな男ができて、振り向いてもらうために必死で努力して、告白して。念願叶って好きな男と付き合うことになったが、しかし彼女はそいつの一番ではなかったらしい。男には本命が別にいたのだ。
「最低だよね。しかも処女とか重いって言われちゃってさ」
抱えた膝に顔を埋めながら幼馴染が弱々しく言う。
「そんなの、どうしろっていうのよ。あ、火鱗、貰ってくれる?」
「別にいいけど」
俺がそう言うのと、彼女が「なんちゃって」と付け足したのはほぼ同時だった。
「え」
涙に濡れたままの瞳が一瞬きょとんとする。俺の言葉を頭の中で噛み砕いているらしいが、理解できなかったらしい。不思議そうに首を傾げている。
「くれるんなら遠慮なく貰うって言ってんの」
言葉より行動で示した方が早そうだ。ぐっと身を乗り出すと、幼馴染が慌てて俺の胸を押し返してくる。
「ちょっ待って火鱗、さっきのは冗談だから!」
「けど早く捨てたいんだろ、処女。何躊躇ってんの? おばさんたちもいないし、ちょうどいいじゃん」
そう言ってするりと指を絡ませてやると、幼馴染は顔を真っ赤にして黙り込んだ。頬の赤みは今や酒のせいだけではないだろう。
「俺のこと、そういう風に見れない?」
一人っ子だった彼女は俺のことを本当の弟のように可愛がった。この部屋でも昔は何度も遊んだものだ。でも俺たちは血の繋がった姉弟でもないし、もう子どもでもない。
「でも、」
まだ何か言いたげな幼馴染の口を無理やり塞いでやる。文句は言葉になる前に全て飲み込んだ。彼女は最初こそ抵抗する素振りを見せていたが、唇が離れる頃にはとろんとした瞳を俺に向けていた。
「か、りん……」
その目は期待に染まっている。躊躇いはする癖に断らないのがタチが悪い。
「なあ」
元彼が処女が重いっつったから捨てるの? そうじゃなかったらアンタはーー。
「火鱗?」
「何でもない」
クソ野郎にフラれて傷ついてんじゃねーよ。こっちからフってやればよかったんだ。
言いたいことは山程あったが、何一つ言えなかった。彼女からフラなかったと言うことは、彼女がまだ元彼のクソ野郎のことを好いているということだ。
ーーそれでも、いい。
彼女の初めてを見知らぬ誰かに奪われるより、ずっといい。
俺は彼女の全てを奪うように口づけし、ゆっくりとその身体を押し倒した。
数年ぶりに訪れた幼馴染の部屋。子どもの頃は広いと思っていた六畳一間は、今の俺たちには少し手狭だった。
久々に入った幼馴染の部屋は子どもの頃と随分変わっていて、小物から家具まで可愛らしいもので揃えられていた。自分の部屋とはまるで違う、女らしい部屋。微かに甘い芳香が漂っている。
昔は一緒に木に登ったり、虫を採ったりしてたのに。当時の面影はもう少しも残っていない。
「ん、かりん……」
「部屋着いたぞ。じゃあ俺帰るから」
「やだ、いかないで」
立ち上がろうとすれば、くんと彼女が服の裾を引っ張った。涙に濡れた顔はぐしゃぐしゃだ。
「一人にしないで」
家が近所の、歳上の幼馴染。先程路上で酔い潰れうずくまっているのを見かけて「大丈夫ですか」と声をかけたら、その相手が彼女だった。
数年ぶりの再会。大人になった彼女はすっかり見た目が変わっていて最初は気づかなかったが「火鱗?」と俺を呼ぶ声だけは昔と同じだった。姉御肌だった幼馴染、彼女はこの数年で安易に触れるのが躊躇われるほど弱々しくなっていた。
「あはは、カッコ悪いとこ見られちゃった」
聞けば、彼女は恋人にフラれたらしい。好きな男ができて、振り向いてもらうために必死で努力して、告白して。念願叶って好きな男と付き合うことになったが、しかし彼女はそいつの一番ではなかったらしい。男には本命が別にいたのだ。
「最低だよね。しかも処女とか重いって言われちゃってさ」
抱えた膝に顔を埋めながら幼馴染が弱々しく言う。
「そんなの、どうしろっていうのよ。あ、火鱗、貰ってくれる?」
「別にいいけど」
俺がそう言うのと、彼女が「なんちゃって」と付け足したのはほぼ同時だった。
「え」
涙に濡れたままの瞳が一瞬きょとんとする。俺の言葉を頭の中で噛み砕いているらしいが、理解できなかったらしい。不思議そうに首を傾げている。
「くれるんなら遠慮なく貰うって言ってんの」
言葉より行動で示した方が早そうだ。ぐっと身を乗り出すと、幼馴染が慌てて俺の胸を押し返してくる。
「ちょっ待って火鱗、さっきのは冗談だから!」
「けど早く捨てたいんだろ、処女。何躊躇ってんの? おばさんたちもいないし、ちょうどいいじゃん」
そう言ってするりと指を絡ませてやると、幼馴染は顔を真っ赤にして黙り込んだ。頬の赤みは今や酒のせいだけではないだろう。
「俺のこと、そういう風に見れない?」
一人っ子だった彼女は俺のことを本当の弟のように可愛がった。この部屋でも昔は何度も遊んだものだ。でも俺たちは血の繋がった姉弟でもないし、もう子どもでもない。
「でも、」
まだ何か言いたげな幼馴染の口を無理やり塞いでやる。文句は言葉になる前に全て飲み込んだ。彼女は最初こそ抵抗する素振りを見せていたが、唇が離れる頃にはとろんとした瞳を俺に向けていた。
「か、りん……」
その目は期待に染まっている。躊躇いはする癖に断らないのがタチが悪い。
「なあ」
元彼が処女が重いっつったから捨てるの? そうじゃなかったらアンタはーー。
「火鱗?」
「何でもない」
クソ野郎にフラれて傷ついてんじゃねーよ。こっちからフってやればよかったんだ。
言いたいことは山程あったが、何一つ言えなかった。彼女からフラなかったと言うことは、彼女がまだ元彼のクソ野郎のことを好いているということだ。
ーーそれでも、いい。
彼女の初めてを見知らぬ誰かに奪われるより、ずっといい。
俺は彼女の全てを奪うように口づけし、ゆっくりとその身体を押し倒した。
数年ぶりに訪れた幼馴染の部屋。子どもの頃は広いと思っていた六畳一間は、今の俺たちには少し手狭だった。