火鱗佐々木
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働いて働いて、疲れ果てて。今すぐにでもソファに倒れ込みたい。ベッドのが楽? そんなのわかってるけどそうじゃない。私は今すぐにでもソファにダイブしたいんだ! そう思って帰宅したのに。
リビングへと続く扉を開けて、私はぽかんと口を開けた。脱力しすぎてぼとりと肩からリュックが床へとずり落ちる。
「なんで……」
「おー、おかえり」
「ただいまー。じゃなくて、なんで今日に限ってソファに座ってるのよぅ!」
飛び込む予定のソファを陣取っていたのは火鱗だった。いつもは床に座るくせに! 床のが落ち着くって言ってたくせに!
「退いてよー!」
どうしてもソファに倒れ込みたくて、ぐいぐいと火鱗を押す。けれど彼は微動だにせず「俺が先にいた」の一点張り。私が疲れているのを知ってるはずなのに、退く気は全くないようだ。
むう、とむくれることしばらく。疲れていたこともあって、私は仕方なしによろよろと立ち上がった。もう倒れ込めるならなんでもいいや。大人しくベッドに行こうとして、けれどそれは叶わなかった。火鱗が私の手首をくっと掴んできたせいで。
「もー、なに?」
「ん」
見ると火鱗がぽんぽんと自身の膝を叩いていた。それが何を意味するのか、疲れ切った私の頭でも理解できる。膝ぽんぽんはそれくらいわかりやすいジェスチャーだ。けど、
「なんで⁈」
「なんでって。寝たいんだろ? 膝貸してやるっつってんだから大人しく寝とけ」
困惑する私を火鱗があまりにもぐいぐいと引っ張るものだから、渋々ながらも従うことにした。「本当なんなの? 酔ってる?」「はぁ? 酔ってねーよ」お酒の臭いはしないから、酔ってないのは本当らしい。怖々とソファに乗り上げて横になる。頭は当然、火鱗の膝の上だ。
「……固い」
「うるせー」
膝枕といえば柔らかいイメージだが、普段から鍛えている火鱗の膝は想像していたよりずっと固かった。お世辞にも寝心地がいいとは言い難い。けれど、横になる私の頬に髪にと触れる指先はあたたかくて、やさしくて、何度も欠伸が出てきてしまう。落ち着く彼の匂いがすぐ傍にあるのも一因だろう。
「ほんと、どういう風の吹き回しよ」
声に出した言葉は思いの外ゆったりと自分の耳に届いた。限界がすぐそこまで来ているらしい。重たい瞼をどうにか持ち上げて見た火鱗の顔は、それはそれは、ひどくやさしいもので。そういえば、久しぶりに火鱗とゆっくり顔を合わせた気がする。ここ最近はずっと仕事で忙しくて……いつ振りだろうと思い返してみたけれど、今の私には記憶を遡るのも困難だった。
まとまらない思考をさらに掻き消すように火鱗の声が降ってくる。
「そんなん、俺がしたかっただけ」
悪いかよ、って。全然悪くない。悪いわけがない。夢とうつつの狭間で揺れる意識の中、せめて首だけでも横に振りたかったけれど、果たしてできていたかどうか。ただ、火鱗がふっと笑みを零したような気配と、頬を撫でる指先が一層やさしくなったのは、夢じゃないと思いたい。
リビングへと続く扉を開けて、私はぽかんと口を開けた。脱力しすぎてぼとりと肩からリュックが床へとずり落ちる。
「なんで……」
「おー、おかえり」
「ただいまー。じゃなくて、なんで今日に限ってソファに座ってるのよぅ!」
飛び込む予定のソファを陣取っていたのは火鱗だった。いつもは床に座るくせに! 床のが落ち着くって言ってたくせに!
「退いてよー!」
どうしてもソファに倒れ込みたくて、ぐいぐいと火鱗を押す。けれど彼は微動だにせず「俺が先にいた」の一点張り。私が疲れているのを知ってるはずなのに、退く気は全くないようだ。
むう、とむくれることしばらく。疲れていたこともあって、私は仕方なしによろよろと立ち上がった。もう倒れ込めるならなんでもいいや。大人しくベッドに行こうとして、けれどそれは叶わなかった。火鱗が私の手首をくっと掴んできたせいで。
「もー、なに?」
「ん」
見ると火鱗がぽんぽんと自身の膝を叩いていた。それが何を意味するのか、疲れ切った私の頭でも理解できる。膝ぽんぽんはそれくらいわかりやすいジェスチャーだ。けど、
「なんで⁈」
「なんでって。寝たいんだろ? 膝貸してやるっつってんだから大人しく寝とけ」
困惑する私を火鱗があまりにもぐいぐいと引っ張るものだから、渋々ながらも従うことにした。「本当なんなの? 酔ってる?」「はぁ? 酔ってねーよ」お酒の臭いはしないから、酔ってないのは本当らしい。怖々とソファに乗り上げて横になる。頭は当然、火鱗の膝の上だ。
「……固い」
「うるせー」
膝枕といえば柔らかいイメージだが、普段から鍛えている火鱗の膝は想像していたよりずっと固かった。お世辞にも寝心地がいいとは言い難い。けれど、横になる私の頬に髪にと触れる指先はあたたかくて、やさしくて、何度も欠伸が出てきてしまう。落ち着く彼の匂いがすぐ傍にあるのも一因だろう。
「ほんと、どういう風の吹き回しよ」
声に出した言葉は思いの外ゆったりと自分の耳に届いた。限界がすぐそこまで来ているらしい。重たい瞼をどうにか持ち上げて見た火鱗の顔は、それはそれは、ひどくやさしいもので。そういえば、久しぶりに火鱗とゆっくり顔を合わせた気がする。ここ最近はずっと仕事で忙しくて……いつ振りだろうと思い返してみたけれど、今の私には記憶を遡るのも困難だった。
まとまらない思考をさらに掻き消すように火鱗の声が降ってくる。
「そんなん、俺がしたかっただけ」
悪いかよ、って。全然悪くない。悪いわけがない。夢とうつつの狭間で揺れる意識の中、せめて首だけでも横に振りたかったけれど、果たしてできていたかどうか。ただ、火鱗がふっと笑みを零したような気配と、頬を撫でる指先が一層やさしくなったのは、夢じゃないと思いたい。