火鱗佐々木
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人はもふもふの誘惑には抗えないと昔誰かが言っていた。え、言ってない? じゃあ私が言ったのかもしれない。
でも実際に私の同居人は抗えていないのだから、真実と言って差し支えないだろう。今日も彼は、火鱗佐々木は、私を抱きしめて離さない。
「ねえ火鱗」
「んー?」
「そろそろ出かけたいんだけど」
「まだいいだろ」
よくない! と言い返すつもりだったのに、ぎゅうと一層力強く抱きしめられて、何も言えなくなってしまった。こんな風に彼がべったりなのは珍しいから、私も嬉しいのだ。それがもふもふの着る毛布越しだとしても。
毎年のことだけど、寒い寒いと言っていたら、火鱗が突然「ほらよ」と着る毛布を買ってきてくれた。手触りがよくあったかいそれは、すぐに私のお気に入りに。家にいる時は大抵それに包まっている。火鱗ももふもふの手触りとあたたかさを気に入ったようで、毛布お化けになった私を見つけると、ちょいちょいと手招きしては後ろから抱きしめるようになった。嬉しい誤算とはこういうことを言うのかもしれない。
ただちょっと、最近はそれだけでは満足できない私もいて。
わがままは百も承知。だけど、女の子は着る毛布がなくても抱きしめられたい時があるのだ。それをそのまま伝えるのは恥ずかしくて、今日までずるずると言えずにいるのだけど。今日は、今日こそは言う。そろそろ火鱗の肌が恋しいって。
「あのさ、火鱗」
「何だよ」
「もうだいぶあったまったから、毛布脱ごうと思うんだけどっ‼︎」
気合を入れすぎて声が裏返った。きっと顔も真っ赤だろう。後ろからハグされてるから火鱗からは顔が見えないのが救いだ。
「ふーん」
返ってきた火鱗の声は興味がないのか平坦だった。毛布があれば中身の私はいらないのか、そう思うと少し悲しい。これじゃあもう何も言えないな、と思っていると、突然ぐるりと向きを変えられた。
「え、何」
「うわ、本当顔真っ赤じゃん」
火鱗のカサついた指先が私の頬をなぞる。つつ、と耳まで親指で触れられて、そこまで赤くなっているのだと言わずともわからせられてしまった。
「寒いんだったらもっとあっためてやろうと思ってたんだけど」
それって、どういうこと? とは聞くまでもない。私を見つめる火鱗の目は、そういう色が滲んでいた。
「で、暑いんだっけ?」
「さ、寒い! すごく寒い」
「俺にどうしてほしいわけ?」
こういう時の火鱗はすごく意地悪だ。でも私が思いのままを伝えたら、恐ろしく甘くなるのも知っている。
「寒いから、あたためてほしい、です」
「ん、了解」
そう言うと、火鱗は満足げに唇の端を上げ、着る毛布ごと私を抱き上げて、リビングを後にした。
でも実際に私の同居人は抗えていないのだから、真実と言って差し支えないだろう。今日も彼は、火鱗佐々木は、私を抱きしめて離さない。
「ねえ火鱗」
「んー?」
「そろそろ出かけたいんだけど」
「まだいいだろ」
よくない! と言い返すつもりだったのに、ぎゅうと一層力強く抱きしめられて、何も言えなくなってしまった。こんな風に彼がべったりなのは珍しいから、私も嬉しいのだ。それがもふもふの着る毛布越しだとしても。
毎年のことだけど、寒い寒いと言っていたら、火鱗が突然「ほらよ」と着る毛布を買ってきてくれた。手触りがよくあったかいそれは、すぐに私のお気に入りに。家にいる時は大抵それに包まっている。火鱗ももふもふの手触りとあたたかさを気に入ったようで、毛布お化けになった私を見つけると、ちょいちょいと手招きしては後ろから抱きしめるようになった。嬉しい誤算とはこういうことを言うのかもしれない。
ただちょっと、最近はそれだけでは満足できない私もいて。
わがままは百も承知。だけど、女の子は着る毛布がなくても抱きしめられたい時があるのだ。それをそのまま伝えるのは恥ずかしくて、今日までずるずると言えずにいるのだけど。今日は、今日こそは言う。そろそろ火鱗の肌が恋しいって。
「あのさ、火鱗」
「何だよ」
「もうだいぶあったまったから、毛布脱ごうと思うんだけどっ‼︎」
気合を入れすぎて声が裏返った。きっと顔も真っ赤だろう。後ろからハグされてるから火鱗からは顔が見えないのが救いだ。
「ふーん」
返ってきた火鱗の声は興味がないのか平坦だった。毛布があれば中身の私はいらないのか、そう思うと少し悲しい。これじゃあもう何も言えないな、と思っていると、突然ぐるりと向きを変えられた。
「え、何」
「うわ、本当顔真っ赤じゃん」
火鱗のカサついた指先が私の頬をなぞる。つつ、と耳まで親指で触れられて、そこまで赤くなっているのだと言わずともわからせられてしまった。
「寒いんだったらもっとあっためてやろうと思ってたんだけど」
それって、どういうこと? とは聞くまでもない。私を見つめる火鱗の目は、そういう色が滲んでいた。
「で、暑いんだっけ?」
「さ、寒い! すごく寒い」
「俺にどうしてほしいわけ?」
こういう時の火鱗はすごく意地悪だ。でも私が思いのままを伝えたら、恐ろしく甘くなるのも知っている。
「寒いから、あたためてほしい、です」
「ん、了解」
そう言うと、火鱗は満足げに唇の端を上げ、着る毛布ごと私を抱き上げて、リビングを後にした。