火鱗佐々木
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始まりはいつもの、他愛ない会話から。
「今日の晩ご飯、何にしよっか?」
「んー、そうだな。昨日はアジフライ、一昨日はカレーだったよな」
「だねぇ。ね。お互いの食べたいもの言い合ってどっちにするか決めようよ」
「おー、いいぜ」
私の提案にソファでごろ寝していた火鱗が身を乗り出す。火鱗はこういう時、意外とノリがいい。
「「せーの!」」
「天ぷら!」
「ホイコーロー!」
同時に食べたいものを言い放ち、顔を見合わせた。互いが互いに信じられないという顔をしている。
「天ぷらってお前、昨日も揚げ物だったじゃねーか! 太るぞ!」
「なっ、テレビで特集されてるの見たら食べたくなっちゃったんだからしょうがないでしょ! 火鱗だってホイコーロー、二週連続じゃない」
「好きなもんは何回でも食いてえの!」
口論は熾烈を極めた。いつもならどちらかの食べたいものを次の日に、となるのだけれど、たまにこういうことがある。ふたりとも食べることが好きだからこそ、譲れない時が。
「クソ、キリがねえ。こうなりゃ実力行使だ」
「そうだね。できれば穏便に済ませたかったけど」
火鱗が拳を握ったのを見て、私も構える。話し合いで解決できないのなら、これしか方法はない。勝負は一瞬。戦いの末、勝利を掴み取るのは果たしてーー。
「「最初はグー、じゃんけん……」」
***
キッチンから聞こえてくるパチパチという音に目を覚ました。身体にはブランケットが掛けられていて、ジャンケンに負けた私はそのままソファでふて寝したのだと思い出す。
キッチンを見れば火鱗がお揃いで買ったエプロンを着けていて私を見るなり「寝すぎ」と小言を言った。
「なんで……」
火鱗が作っているものは明らかにホイコーローじゃない。あれはどう見たって私が食べたいと言った天ぷらだ。勝負に勝ったのは火鱗なのに、どうして?
「何ボケっとしてんだよ」
キッチンにいる火鱗に近寄れば、ぺちっとデコピンを食らった。
「だって、今日はホイコーローでしょ?」
じぃんと鈍く痛む額を手で押さえながら火鱗に訊ねる。すると彼は「それは……」と何かを言いかけて、気まずそうに頬を掻いた。
「スーパー行ったら、エビが安かったんだよ」
「エビ……」
「他にも野菜とか鶏肉とか色々安くて。俺もホイコーローより天ぷら食いたくなっただけ!」
パチパチと美味しそうな音のする鍋の近くに置かれた油切りバットには、綺麗に揚がった天ぷらがいくつも並べられていて、食べてと言わんばかりにこちらを見ていた。かき揚げに、海老、かしわに、なす、レンコン、かぼちゃ。随分と色んなものが安かったんだなぁと、思わず笑ってしまった。
「火鱗」
彼の大きな背中にとんと頭を預ける。きっと怒るだろうなと思ったらやっぱり「油飛んだら危ねぇから下がってろ」と怒られた。でもあと少しだけ。
「明日の晩ご飯はホイコーローにしよっか」
「二週連続は嫌なんじゃねえの?」
「なんだか食べたくなっちゃって。それに明日、キャベツとか豚バラが安い気がするんだよね」
「なんだよそれ」
ふはっ、と火鱗が笑って、背中から振動が伝わってくる。美味しいの作るね、と伝えると「楽しみにしとくわ」と火鱗が振り向いて、「味見して」と差し出された出来たてのかしわ天に、私は口を大きく開けた。
「今日の晩ご飯、何にしよっか?」
「んー、そうだな。昨日はアジフライ、一昨日はカレーだったよな」
「だねぇ。ね。お互いの食べたいもの言い合ってどっちにするか決めようよ」
「おー、いいぜ」
私の提案にソファでごろ寝していた火鱗が身を乗り出す。火鱗はこういう時、意外とノリがいい。
「「せーの!」」
「天ぷら!」
「ホイコーロー!」
同時に食べたいものを言い放ち、顔を見合わせた。互いが互いに信じられないという顔をしている。
「天ぷらってお前、昨日も揚げ物だったじゃねーか! 太るぞ!」
「なっ、テレビで特集されてるの見たら食べたくなっちゃったんだからしょうがないでしょ! 火鱗だってホイコーロー、二週連続じゃない」
「好きなもんは何回でも食いてえの!」
口論は熾烈を極めた。いつもならどちらかの食べたいものを次の日に、となるのだけれど、たまにこういうことがある。ふたりとも食べることが好きだからこそ、譲れない時が。
「クソ、キリがねえ。こうなりゃ実力行使だ」
「そうだね。できれば穏便に済ませたかったけど」
火鱗が拳を握ったのを見て、私も構える。話し合いで解決できないのなら、これしか方法はない。勝負は一瞬。戦いの末、勝利を掴み取るのは果たしてーー。
「「最初はグー、じゃんけん……」」
***
キッチンから聞こえてくるパチパチという音に目を覚ました。身体にはブランケットが掛けられていて、ジャンケンに負けた私はそのままソファでふて寝したのだと思い出す。
キッチンを見れば火鱗がお揃いで買ったエプロンを着けていて私を見るなり「寝すぎ」と小言を言った。
「なんで……」
火鱗が作っているものは明らかにホイコーローじゃない。あれはどう見たって私が食べたいと言った天ぷらだ。勝負に勝ったのは火鱗なのに、どうして?
「何ボケっとしてんだよ」
キッチンにいる火鱗に近寄れば、ぺちっとデコピンを食らった。
「だって、今日はホイコーローでしょ?」
じぃんと鈍く痛む額を手で押さえながら火鱗に訊ねる。すると彼は「それは……」と何かを言いかけて、気まずそうに頬を掻いた。
「スーパー行ったら、エビが安かったんだよ」
「エビ……」
「他にも野菜とか鶏肉とか色々安くて。俺もホイコーローより天ぷら食いたくなっただけ!」
パチパチと美味しそうな音のする鍋の近くに置かれた油切りバットには、綺麗に揚がった天ぷらがいくつも並べられていて、食べてと言わんばかりにこちらを見ていた。かき揚げに、海老、かしわに、なす、レンコン、かぼちゃ。随分と色んなものが安かったんだなぁと、思わず笑ってしまった。
「火鱗」
彼の大きな背中にとんと頭を預ける。きっと怒るだろうなと思ったらやっぱり「油飛んだら危ねぇから下がってろ」と怒られた。でもあと少しだけ。
「明日の晩ご飯はホイコーローにしよっか」
「二週連続は嫌なんじゃねえの?」
「なんだか食べたくなっちゃって。それに明日、キャベツとか豚バラが安い気がするんだよね」
「なんだよそれ」
ふはっ、と火鱗が笑って、背中から振動が伝わってくる。美味しいの作るね、と伝えると「楽しみにしとくわ」と火鱗が振り向いて、「味見して」と差し出された出来たてのかしわ天に、私は口を大きく開けた。