サカモトデイズ
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「ふぅ、疲れた〜」
なら、ベッドで寝ればいいのに。南雲はソファに横になって、座る私の膝上に頭を置いた。その重みと伝わってくる体温を懐かしく感じるくらいには、久々の再会だったと思う。なのにこいつときたら、昨日も会ってましたみたいな顔をして、平然と私の前に現れて。合鍵が使えないよう部屋の鍵まで替えたのに、まるで意味がなかった。
本当に、自由気ままで雲みたいな男だと思う。もう忘れようと決意したタイミングでふわりと現れ、離れ難くなって手を伸ばすと、初めからいなかったみたいに私の前からかき消えてしまう。その繰り返し。そうして恋人とも、そういう友人とも言えない関係になって、もうどれくらい経つだろう。いい加減終わらせたいと思うのに、またできなかった。
私は遠慮なく膝上を占領する男に、これ見よがしに溜め息をついて言った。
「ねえ、私いま本読んでるんだけど」
邪魔、と告げると「え〜」と子どもっぽい声が返ってくる。けれど退く気はないようで、南雲はごろりと寝返りを打っただけだった。ソファに収まり切らない長い足を窮屈そうに曲げて、見るからに寝にくそうだ。
「……ベッド行ったら?」
「やだ。ここがいい」
「何でよ。こんなとこで寝ても疲れ取れないでしょ」
「んー、そうでもないよ。君がこうやって膝枕してくれてるしね」
にこにこと嬉しそうに笑う南雲に、小言を言う気が削がれていく。何が膝枕してくれてる、よ。ソファに座って本を読んでいた私を、あんたが勝手に枕代わりにしただけでしょうに。
私はふわりと浮上しかける心を引き止めるように自身に言い聞かせた。
南雲の言動に振り回されちゃだめ。きっとこいつは私以外の女にも、同じことを言ってるからと。
「なら、私以外の子にやってもらいなさい。こっちは忙しいの」
突き放すように言ってから、つきりと胸が痛んだ。それを南雲に気づかれたくなくて、平静を装うように手にしていた小説のページを捲る。文字を目で追うも、内容はひとつも入ってこなかった。
「僕が嫌なんだけど」
「……え」
「今まで色んな子に膝枕してもらったけど、君のが一番しっくりくるんだよね〜」
「何よそれ」
暗に複数の女と会っていることを示唆されて怒りが込み上げてくるかと思いきや、私の口から出たのは呆れた笑い声だった。そして認めたくはないけれど、そこには微かな喜びも含まれている。
私は「はあ」と一際大きな溜め息をついた。南雲に「幸せが逃げるよ〜」と言われたけれど、私の膝上に寝そべる男がどこかに行く気配はないので無視しておく。
チョロすぎる、と自分でも思う。でもふらふらと自由気ままな彼が最後に帰ってくる場所はここなのだと思ったら、心が浮き立つのを止められなかった。
南雲のことだから本心を隠しているかもしれないけれど。それを見抜ける自信もないけれど。
それでも、今の南雲は嘘をついていないと信じたい。
「これ読み終わるまでの間だけだからね」
小説を数ページ戻して、私は再び文字を目で追い始めた。すぐに「やった〜」と間延びした声が聞こえてきて、けれど手持ち無沙汰な南雲がちょっかいばかりかけてくるものだから、小説を読み終わる頃には私の足はすっかり痺れてしまっていた。
なら、ベッドで寝ればいいのに。南雲はソファに横になって、座る私の膝上に頭を置いた。その重みと伝わってくる体温を懐かしく感じるくらいには、久々の再会だったと思う。なのにこいつときたら、昨日も会ってましたみたいな顔をして、平然と私の前に現れて。合鍵が使えないよう部屋の鍵まで替えたのに、まるで意味がなかった。
本当に、自由気ままで雲みたいな男だと思う。もう忘れようと決意したタイミングでふわりと現れ、離れ難くなって手を伸ばすと、初めからいなかったみたいに私の前からかき消えてしまう。その繰り返し。そうして恋人とも、そういう友人とも言えない関係になって、もうどれくらい経つだろう。いい加減終わらせたいと思うのに、またできなかった。
私は遠慮なく膝上を占領する男に、これ見よがしに溜め息をついて言った。
「ねえ、私いま本読んでるんだけど」
邪魔、と告げると「え〜」と子どもっぽい声が返ってくる。けれど退く気はないようで、南雲はごろりと寝返りを打っただけだった。ソファに収まり切らない長い足を窮屈そうに曲げて、見るからに寝にくそうだ。
「……ベッド行ったら?」
「やだ。ここがいい」
「何でよ。こんなとこで寝ても疲れ取れないでしょ」
「んー、そうでもないよ。君がこうやって膝枕してくれてるしね」
にこにこと嬉しそうに笑う南雲に、小言を言う気が削がれていく。何が膝枕してくれてる、よ。ソファに座って本を読んでいた私を、あんたが勝手に枕代わりにしただけでしょうに。
私はふわりと浮上しかける心を引き止めるように自身に言い聞かせた。
南雲の言動に振り回されちゃだめ。きっとこいつは私以外の女にも、同じことを言ってるからと。
「なら、私以外の子にやってもらいなさい。こっちは忙しいの」
突き放すように言ってから、つきりと胸が痛んだ。それを南雲に気づかれたくなくて、平静を装うように手にしていた小説のページを捲る。文字を目で追うも、内容はひとつも入ってこなかった。
「僕が嫌なんだけど」
「……え」
「今まで色んな子に膝枕してもらったけど、君のが一番しっくりくるんだよね〜」
「何よそれ」
暗に複数の女と会っていることを示唆されて怒りが込み上げてくるかと思いきや、私の口から出たのは呆れた笑い声だった。そして認めたくはないけれど、そこには微かな喜びも含まれている。
私は「はあ」と一際大きな溜め息をついた。南雲に「幸せが逃げるよ〜」と言われたけれど、私の膝上に寝そべる男がどこかに行く気配はないので無視しておく。
チョロすぎる、と自分でも思う。でもふらふらと自由気ままな彼が最後に帰ってくる場所はここなのだと思ったら、心が浮き立つのを止められなかった。
南雲のことだから本心を隠しているかもしれないけれど。それを見抜ける自信もないけれど。
それでも、今の南雲は嘘をついていないと信じたい。
「これ読み終わるまでの間だけだからね」
小説を数ページ戻して、私は再び文字を目で追い始めた。すぐに「やった〜」と間延びした声が聞こえてきて、けれど手持ち無沙汰な南雲がちょっかいばかりかけてくるものだから、小説を読み終わる頃には私の足はすっかり痺れてしまっていた。
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