椿野佑
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「はい、ハッピーバレンタイン」
そう言って椿ちゃんから手渡されたのは、可愛らしいカップケーキだった。チョコレート味のカップケーキに、クリームやチョコペンでデコレーションされた猫の顔。友チョコとは思えないクオリティで、何より可愛すぎて食べられそうにない。
パシャパシャと満足いくまでスマホで写真を撮ってから、ありがとうとお礼を伝える。椿ちゃんも「キャー! かわいい!」と私のあげたチョコを写真に収めていた。
バレンタインに二人で友チョコを交換しよう、となって、けれど普段料理をしない私に凝ったものは作れるはずもなく。レシピとにらめっこしながら作ったのは、チョコレートを溶かして型に入れて固めるだけのシンプルなものだった。カラースプレーやアラザンでデコレーションだけは盛り盛りにして頑張ったつもりだけど。来年はもう少し凝ったものを作れるようになりたい。
「ねえ、せっかくだし今食べない?」
椿ちゃんの提案に同意する。自販機で飲み物も買って、ちょっとしたお茶会だ。
「ん、美味しいわ! 見た目も素敵だったけど、味もアタシ好み」
「へへ、ありがと。でもチョコ溶かして固めただけだよ」
「それでも! アタシが美味しいって言ったら美味しいの」
へにゃりと口元が緩んでしまうのは、椿ちゃんが本心で言ってくれてるのがわかるからだ。
「アタシのはどう? 結構自信作なんだけど……って、全然食べてないじゃない!」
「うっ、だって……可愛すぎて食べられないんだもん」
私はじぃっと猫のカップケーキを見つめた。やっぱだめだ、この子のつぶらな瞳を見ていると食べられない。今にもにゃーんと可愛い声で鳴き出しそうで、
「持ち帰って家宝にする」
「やめなさい」
持ち帰って大事に飾ろうと思ったのに、椿ちゃんに即却下された。それどころか、ひょいと手からカップケーキを取り上げられてしまう。
「あっ」
私のカップケーキが……。しょんぼりしながら椿ちゃんを見つめると、しょうがないわねとばかりに肩を落とすのが見えた。椿ちゃんはやさしいからすぐにカップケーキを返してくれてーー。
「あ、あの、椿ちゃん」
「何かしら」
「ちょっと近くない?」
口元にカップケーキを持ってこられ、気のせいかなと半歩身体を引けば、追いかけるようにカップケーキが近づいてくる。うん、勘違いじゃなさそうだ。
ちらりと様子を窺うと、椿ちゃんはにこにこと笑っている。
「だってこうでもしないと食べないでしょ。アンタ持ち帰って冷凍保存とか考えてそうだし。そんなこと絶対させないから。ほら早く口開けなさい。はい、あーん」
……何でバレたんだろう。にこやかながらも有無を言わせない圧に、私は諦めて言われるがまま口を開けた。すぐにふわりとチョコレートの香りがして、柔らかな食感と程良い甘さが口に広がる。
「どうかしら?」
「おいひい」
「よかったぁ!」
ぱぁっと一層眩しく笑う椿ちゃんにつられてこっちまで笑顔になってしまう。
可愛すぎて食べられそうになかった猫のカップケーキはその後も私が持ち帰って冷凍しないか心配だという椿ちゃんが食べさせてくれて(見届けられたともいう)、最後まで美味しくいただいた。
そう言って椿ちゃんから手渡されたのは、可愛らしいカップケーキだった。チョコレート味のカップケーキに、クリームやチョコペンでデコレーションされた猫の顔。友チョコとは思えないクオリティで、何より可愛すぎて食べられそうにない。
パシャパシャと満足いくまでスマホで写真を撮ってから、ありがとうとお礼を伝える。椿ちゃんも「キャー! かわいい!」と私のあげたチョコを写真に収めていた。
バレンタインに二人で友チョコを交換しよう、となって、けれど普段料理をしない私に凝ったものは作れるはずもなく。レシピとにらめっこしながら作ったのは、チョコレートを溶かして型に入れて固めるだけのシンプルなものだった。カラースプレーやアラザンでデコレーションだけは盛り盛りにして頑張ったつもりだけど。来年はもう少し凝ったものを作れるようになりたい。
「ねえ、せっかくだし今食べない?」
椿ちゃんの提案に同意する。自販機で飲み物も買って、ちょっとしたお茶会だ。
「ん、美味しいわ! 見た目も素敵だったけど、味もアタシ好み」
「へへ、ありがと。でもチョコ溶かして固めただけだよ」
「それでも! アタシが美味しいって言ったら美味しいの」
へにゃりと口元が緩んでしまうのは、椿ちゃんが本心で言ってくれてるのがわかるからだ。
「アタシのはどう? 結構自信作なんだけど……って、全然食べてないじゃない!」
「うっ、だって……可愛すぎて食べられないんだもん」
私はじぃっと猫のカップケーキを見つめた。やっぱだめだ、この子のつぶらな瞳を見ていると食べられない。今にもにゃーんと可愛い声で鳴き出しそうで、
「持ち帰って家宝にする」
「やめなさい」
持ち帰って大事に飾ろうと思ったのに、椿ちゃんに即却下された。それどころか、ひょいと手からカップケーキを取り上げられてしまう。
「あっ」
私のカップケーキが……。しょんぼりしながら椿ちゃんを見つめると、しょうがないわねとばかりに肩を落とすのが見えた。椿ちゃんはやさしいからすぐにカップケーキを返してくれてーー。
「あ、あの、椿ちゃん」
「何かしら」
「ちょっと近くない?」
口元にカップケーキを持ってこられ、気のせいかなと半歩身体を引けば、追いかけるようにカップケーキが近づいてくる。うん、勘違いじゃなさそうだ。
ちらりと様子を窺うと、椿ちゃんはにこにこと笑っている。
「だってこうでもしないと食べないでしょ。アンタ持ち帰って冷凍保存とか考えてそうだし。そんなこと絶対させないから。ほら早く口開けなさい。はい、あーん」
……何でバレたんだろう。にこやかながらも有無を言わせない圧に、私は諦めて言われるがまま口を開けた。すぐにふわりとチョコレートの香りがして、柔らかな食感と程良い甘さが口に広がる。
「どうかしら?」
「おいひい」
「よかったぁ!」
ぱぁっと一層眩しく笑う椿ちゃんにつられてこっちまで笑顔になってしまう。
可愛すぎて食べられそうになかった猫のカップケーキはその後も私が持ち帰って冷凍しないか心配だという椿ちゃんが食べさせてくれて(見届けられたともいう)、最後まで美味しくいただいた。
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