四ノ宮キコル
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「キコルちゃんもどうぞ」
そう言って、私に小さな袋を差し出してきたのは東雲小隊長の同期の先輩だった。
「ありがとうございます」
お礼とともに受け取った袋は可愛らしくラッピングされていて、中には黄色みを帯びたクッキーが入っていた。この形は……とまじまじ見ていると、先輩が「ハッピーハロウィン」と笑顔で付け足す。
「ハロウィンだから、かぼちゃクッキーを作ってみたの。たくさん出来たからお裾分け」
それを聞いてなるほどと納得する。言われてみれば今日は十月三十一日、ハロウィンだ。だからクッキーがオバケやジャックオランタンの形をしていたのかと、袋の中でかさりと動く小さなモンスターたちを改めて見つめる。
「かわいくて食べられないですね」
「ふふ、ありがとう。それりんちゃんにも言ってやってよ」
先輩が肩を竦めて見つめた先には東雲小隊長の姿があった。私と先輩の視線に気づいて「何よ」と怪訝な顔をした小隊長が手にしていたのは、私と同じく可愛くラッピングされた小袋。しかし中身はすでに空っぽだった。
振り向いて見てよあれ、と目で語ってくる先輩に私は苦笑するしかない。
「ねー、クッキーもうないの?」
空になった袋を振りながら、東雲小隊長がこちらにやって来る。先輩は呆れたように笑ってから、クッキーの小袋の入った手提げバッグを広げた。
「まだまだあるよー。りんちゃんもキコルちゃんみたいに見た目も褒めてくれていいんだからね」
「あー、はいはい。かわいいかわいい」
「うわ、適当すぎる」
クッキーの詰まった袋が先輩から東雲小隊長の手に渡る。そしてすぐにかわいいオバケが小隊長の口の中に消えていった。サクサクと良い音が聞こえてくる。辛党の東雲小隊長がクッキーをおかわりするのは意外だったけど、もしかしたら甘さ控えめに作られているのかもしれない。
「あれ、きこるんは食べないの?」
「もしかして甘いもの苦手だった?」
不安そうな顔をする先輩に、私はぶんぶんと首を横に振った。
「これから午後の訓練があるので、終わった後に食べようかなと思って」
「訓練って、もしかして鳴海隊長と?」
「? はい」
私の返事を聞いた先輩と東雲小隊長が互いに顔を見合わせる。そして二人同時に頷いたかと思えば、先輩が「これ持っていって」とクッキーの入った手提げバッグを私に預けてきた。
「え、そんな貰えません!」
「いいのいいの。きっと必要になるから」
「黙って受け取っておきなさい、きこるん。余ったら私が食べるわ」
結局二人に押し切られる形で、私は大量のクッキーを持ったまま鳴海隊長と待ち合わせている訓練場に向かうことになった。まだ自分の分も食べていないのに、こんなにたくさんどうしよう。そう、頭を悩ませていたのだけど。
「トリックオアトリート! ……って、何でお菓子を持ってるんだ!」
珍しく先に来ていた鳴海隊長がギャンギャンと騒ぐ。どうやらイタズラを画策していたようののだけど、私が持っていたクッキーを渡したことで破綻したらしい。イタズラさせろよ! ハロウィンだぞ! と本気で悔しがる姿を眺めながら、この人が最強、目指すべき相手かとつい遠い目をしてしまう。
ーー先輩と東雲小隊長はこうなるってわかってたのね。
どうしてあの時強引にクッキーを渡されたのか、今やっと理解した。
イタズラを諦めきれない鳴海隊長はその後も事あるごとに「トリックオアトリート!!」と叫んでいたけれど、後輩思いの先輩たちが持たせてくれたクッキーのお陰で、私は難を逃れることができたのだった。
そう言って、私に小さな袋を差し出してきたのは東雲小隊長の同期の先輩だった。
「ありがとうございます」
お礼とともに受け取った袋は可愛らしくラッピングされていて、中には黄色みを帯びたクッキーが入っていた。この形は……とまじまじ見ていると、先輩が「ハッピーハロウィン」と笑顔で付け足す。
「ハロウィンだから、かぼちゃクッキーを作ってみたの。たくさん出来たからお裾分け」
それを聞いてなるほどと納得する。言われてみれば今日は十月三十一日、ハロウィンだ。だからクッキーがオバケやジャックオランタンの形をしていたのかと、袋の中でかさりと動く小さなモンスターたちを改めて見つめる。
「かわいくて食べられないですね」
「ふふ、ありがとう。それりんちゃんにも言ってやってよ」
先輩が肩を竦めて見つめた先には東雲小隊長の姿があった。私と先輩の視線に気づいて「何よ」と怪訝な顔をした小隊長が手にしていたのは、私と同じく可愛くラッピングされた小袋。しかし中身はすでに空っぽだった。
振り向いて見てよあれ、と目で語ってくる先輩に私は苦笑するしかない。
「ねー、クッキーもうないの?」
空になった袋を振りながら、東雲小隊長がこちらにやって来る。先輩は呆れたように笑ってから、クッキーの小袋の入った手提げバッグを広げた。
「まだまだあるよー。りんちゃんもキコルちゃんみたいに見た目も褒めてくれていいんだからね」
「あー、はいはい。かわいいかわいい」
「うわ、適当すぎる」
クッキーの詰まった袋が先輩から東雲小隊長の手に渡る。そしてすぐにかわいいオバケが小隊長の口の中に消えていった。サクサクと良い音が聞こえてくる。辛党の東雲小隊長がクッキーをおかわりするのは意外だったけど、もしかしたら甘さ控えめに作られているのかもしれない。
「あれ、きこるんは食べないの?」
「もしかして甘いもの苦手だった?」
不安そうな顔をする先輩に、私はぶんぶんと首を横に振った。
「これから午後の訓練があるので、終わった後に食べようかなと思って」
「訓練って、もしかして鳴海隊長と?」
「? はい」
私の返事を聞いた先輩と東雲小隊長が互いに顔を見合わせる。そして二人同時に頷いたかと思えば、先輩が「これ持っていって」とクッキーの入った手提げバッグを私に預けてきた。
「え、そんな貰えません!」
「いいのいいの。きっと必要になるから」
「黙って受け取っておきなさい、きこるん。余ったら私が食べるわ」
結局二人に押し切られる形で、私は大量のクッキーを持ったまま鳴海隊長と待ち合わせている訓練場に向かうことになった。まだ自分の分も食べていないのに、こんなにたくさんどうしよう。そう、頭を悩ませていたのだけど。
「トリックオアトリート! ……って、何でお菓子を持ってるんだ!」
珍しく先に来ていた鳴海隊長がギャンギャンと騒ぐ。どうやらイタズラを画策していたようののだけど、私が持っていたクッキーを渡したことで破綻したらしい。イタズラさせろよ! ハロウィンだぞ! と本気で悔しがる姿を眺めながら、この人が最強、目指すべき相手かとつい遠い目をしてしまう。
ーー先輩と東雲小隊長はこうなるってわかってたのね。
どうしてあの時強引にクッキーを渡されたのか、今やっと理解した。
イタズラを諦めきれない鳴海隊長はその後も事あるごとに「トリックオアトリート!!」と叫んでいたけれど、後輩思いの先輩たちが持たせてくれたクッキーのお陰で、私は難を逃れることができたのだった。
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